東アジア海洋会議2024、厦門で開催 ブルーシナジーで海と地球を守る
2024年11月、中国南東部・福建省厦門市で開催された「東アジア海洋会議2024(East Asian Seas Congress 2024)」は、東アジアの海洋保護と「ブルーエコノミー(海洋経済)」の将来を考える重要な国際ニュースとなりました。会議は厦門ワールド・オーシャン・ウィークと同時開催され、11月12日まで続きました。
開会式では、中国自然資源部がこの75年の生態保護を総括する報告書を公表し、さらに「平和の海・繁栄の海・美しい海」という三つのキーワードで海洋協力の方向性を示しました。
東アジア海洋会議とは何か
東アジア海洋会議(East Asian Seas Congress)は、東アジアの海に関わる国や地域、国際機関、研究者、企業などが集まり、海洋環境の保全や持続可能な利用について議論する地域会議です。事務局機能を担うのが、東アジア海域環境管理パートナーシップ(PEMSEA)です。
2024年は、この東アジア海洋会議が初めて厦門ワールド・オーシャン・ウィークと同時に開催されました。国際会議、特別セッション、展示会、海洋産業の投資紹介イベント、海洋文化フェスティバルなど、多層的なプログラムが一体となった「海の総合イベント」となりました。
開会式の焦点:75年の生態保護を振り返る報告書
開会式では、中国自然資源部が「2024年全国生態保護修復公報」を発表しました。この公報は、過去75年にわたる中国の生態ガバナンス(環境を守り、管理する取り組み)を整理したもので、次の5つの分野を中心にレビューしています。
- 生態保護・修復の取り組み
- 生態保護に関する政策・制度の枠組み
- 全国規模の生態評価
- 国土空間を踏まえた生態保全の具体的行動
- 「グリーンアース」への貢献
公報の狙いとして自然資源部が掲げたのは、次の3点です。
- 生態環境の保護に対する市民の意識を高めること
- 人と自然の調和ある共生への理解と行動を広げること
- 地球規模でのエコ文明(環境に配慮した文明)の構築に向けた国際的な共通認識を強めること
生態保護を「国内政策」の枠にとどめず、国際社会との共有課題として打ち出した点は、気候変動や海洋環境の悪化が進む中で象徴的なメッセージと言えます。
テーマは「ブルーシナジー」 一つの持続可能で強靱な海へ
2024年の東アジア海洋会議のテーマは、「Blue Synergy for a Shared Future: One Sustainable and Resilient Ocean(共通の未来のためのブルーシナジー:持続可能でレジリエントな一つの海)」でした。
ここでいう「ブルーシナジー」とは、単に海洋資源を利用するだけでなく、
- 環境保護
- 経済発展(ブルーエコノミー)
- 社会・地域のレジリエンス(災害などに対応する力)
といった要素を総合的に組み合わせ、相乗効果を生み出そうとする発想です。
会場では、青い地球と海を守るために、
- 国際会議や専門会合
- 海洋ビジネスの投資紹介イベント
- 一般市民向けの展示や文化イベント
などが並行して開催されました。ブルーエコノミーや持続可能な海洋利用をテーマとする30以上のパラレルセッション(並行分科会)が設置され、約300の出展者が参加しました。
東アジア海域のメンバー国をはじめ、国際機関、研究者、各種機関や企業など、十数か国から1000人を超える参加者が厦門に集い、海洋環境と経済の両立に向けた議論が交わされました。
「厦門プラクティス」が示す海洋生態修復のモデル
今回の会議では、厦門市が「海洋生態保護・修復ベストプラクティス賞」を受賞しました。ここで注目されたのが、海洋生態修復における「厦門プラクティス」と呼ばれる取り組みです。
詳細な内容は公表文からは限られますが、「ベストプラクティス」として評価されたこと自体が、沿岸都市が海洋生態の回復に主体的に取り組むことの重要性を示しています。埋め立てや港湾開発を進めながらも、生態系を回復させていくには、
- 長期的な視点に立った都市計画
- 科学的なモニタリングと評価
- 行政・企業・市民の連携
といった要素が欠かせません。厦門での経験は、東アジアの他の沿岸都市にとっても参考となるモデルケースになり得ます。
「平和の海・繁栄の海・美しい海」という三つの提案
開会式では、中国人民政治協商会議全国委員会副主席の沈躍躍氏が、中国を代表して三つの提案を示しました。それは、海を次のように位置づけるという考え方です。
- 人類が共通の未来を分かち合うための媒介としての「平和の海」
- 高品質な発展を支える戦略的空間としての「繁栄の海」
- 生態文明を築くプラットフォームとしての「美しい海」
この三つのフレーズは、海をめぐる課題が単に環境問題にとどまらないことを示しています。安全保障、貿易やエネルギーといった経済、そして生態保全が、海という一つの場で重なり合っているという発想です。
「平和の海」は、海上交通路や海洋資源をめぐる緊張をどう和らげるかという視点につながります。「繁栄の海」は、ブルーエコノミーを通じて地域の発展と雇用を生み出す方向性を指します。「美しい海」は、生態系を守り、次世代に健全な海を引き継ぐ責任を問いかけています。
なぜ今、「東アジアの海」から考えるのか
気候変動による海面上昇、異常気象、海洋プラスチックごみ、沿岸の生物多様性の減少など、海を取り巻くリスクは年々高まっています。東アジアは、世界の中でも経済活動と人口が沿岸部に集中する地域の一つであり、その影響も大きくなりがちです。
こうした中で、東アジア海洋会議のように、
- 科学的な知見
- 政策や制度
- 企業の技術や投資
- 市民の参加と意識
を一つの場に集めて「シナジー(相乗効果)」を生み出そうとする試みは、今後の海洋ガバナンスの方向を示すものといえます。
日本の私たちにとっての意味
日本も東アジアの海に面する国として、海洋保護やブルーエコノミーの議論から無縁ではいられません。東アジア海洋会議2024で示された、
- データと評価に基づく生態保護の取り組み
- 都市レベルでの生態修復のモデル(厦門プラクティス)
- 「平和・繁栄・美しさ」を同時に追求する海洋ビジョン
といった論点は、日本国内の政策や企業戦略、地方自治体のまちづくり、そして私たち一人ひとりのライフスタイルにもつながっていくテーマです。
2024年の厦門での議論を、2025年以降の東アジアと世界の海洋ガバナンスを考える「出発点」としてどう生かすのか。東アジア発の国際ニュースを、日本語で丁寧に追いかけることが、私たち自身の視野を広げるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








