中国発の新たな海洋気候予測システム「OCEANUS」とは 気候災害にどう備えるか video poster
地球温暖化が進み、台風や豪雨などの極端な気象・気候現象が増える中、海をどう正確に予測するかは、世界共通の課題になっています。2024年の国際会議で発表された中国の新システム「OCEANUS」は、その答えの一つとして注目されています。
海と気候変動:なぜ「予測力」がカギなのか
海は巨大な「熱の貯蔵庫」であり、その熱容量の大きさから、台風の勢力や地球規模の気候変動を左右する重要な存在です。海水温や海流のわずかな変化が、台風の発達スピードや強さ、降水パターンに影響を与えます。
こうした背景から、海と気候の極端現象をどこまで正確に予測し、どの程度の被害が起こりうるかを評価できるかは、世界的な関心事になっています。海洋災害の予測精度を高めることは、早めの避難判断やインフラ整備、産業への影響の最小化につながります。
中国が主導する海洋・気候早期警戒システム「OCEANUS」
2024年に開催されたグローバル・オーシャン・ディベロップメント・フォーラム(Global Ocean Development Forum)で披露されたのが、海洋と気候の早期警戒システム「OCEANUS(Ocean and Climate Early wArNing Universal System)」です。
OCEANUSは、Ocean to Climate Seamless Forecasting System(OSF)プログラムの中核的成果として位置づけられています。このOSFプログラムは、中国自然資源部のFirst Institute of Oceanography(第一海洋研究所、FIO)が主導しており、海から気候までを途切れなく予測することを目指す取り組みです。
OCEANUSの狙いは、海洋と気候の予測・評価能力を高めることで、海洋災害の予防と被害の軽減をより効果的に進めることにあります。2025年現在、このシステムはすでに複数の分野で運用・整備が進められています。
4つのサブシステムの役割
OCEANUSには、現時点で次の4つのサブシステムが組み込まれています。
- 全球海洋数値予報:コンピュータモデルを用いて、全球規模の海洋の状態を予測する仕組みです。海面水温や海流、海面高さなどを数値的に見通すことで、広域の海洋環境を把握します。
- サンゴ礁白化警戒:高水温などによりサンゴが白化し、死滅するリスクを事前に警告するシステムです。サンゴ礁は生物多様性の宝庫であり、観光や漁業とも密接に関わるため、早期の警戒が重要になります。
- 海上捜索・救助予報:遭難などが発生した際に、風や波、海流の影響を踏まえて漂流経路を予測し、捜索・救助活動を支援する機能です。捜索範囲を絞り込むことで、より迅速な人命救助に役立ちます。
- 海上油流出対応:海上での油流出事故が起きた場合に、油膜の拡散方向や速度を予測し、対策を支援するシステムです。環境への影響を最小限に抑えるため、初動の迅速さが求められる場面で力を発揮します。
これらのサブシステムは、いずれも「海で何が起こるか」を事前に把握し、被害を減らすという共通の目的を持っています。
今後追加される台風・気候予測
OCEANUSは今後、さらに二つのサブシステムを拡張していく計画です。
- 台風予報サブシステム
- 気候予測サブシステム
台風の進路や勢力、シーズンごとの発生傾向、そして年単位の気候(寒い年か、暖かい年か、洪水が多いのか、干ばつが増えるのか)を、海の情報と結びつけて高精度に見通すことが期待されています。
短期の「天気予報」と、季節から年単位の「気候予測」、さらに海洋災害のリスク評価をつなぐことで、より立体的な防災・減災が可能になります。
予測精度が約50%向上、その先にあるもの
第一海洋研究所(FIO)の副所長である喬方立(Qiao Fangli)氏は、研究の成果について次のように説明しています。
科学的な研究を通じて、気候の予測とシミュレーション能力を大きく高める手法を見いだし、従来よりも約50%予測能力を向上させることができたといいます。この精度向上によって、「今年が寒い年か暖かい年か」「洪水が多いのか干ばつが多いのか」を、従来よりも早い段階で人々に知らせることが可能になるとしています。
予測精度が高まることは、単に「当たる予報」が増えるという意味だけではありません。
- 農業では、作付け計画や用水の確保を前倒しで検討できる
- 都市では、洪水対策や排水インフラの準備を早めに行える
- エネルギー分野では、暖房・冷房需要の見通しが立てやすくなる
こうした分野ごとの判断を支える「ベース情報」として、海洋と気候の高精度予測が機能することになります。
中国発の取り組みが示す、海洋災害対策の新しいかたち
OCEANUSは、海洋・台風・気候の予測能力を大きく引き上げることで、世界全体の海洋災害の防止と被害軽減に貢献する取り組みとされています。特に、沿岸部に大都市や産業が集中し、台風や高潮の影響を受けやすい地域にとって、その意義は小さくありません。
日本もまた、台風や豪雨、高潮による被害リスクを抱える海洋国家です。近隣地域で海洋・気候の予測技術が進歩し、データや知見の共有が進めば、広い意味での地域の安全性向上につながる可能性があります。
今後、OCEANUSのようなシステムがどこまで発展し、どのように国際的な取り組みと結びついていくのかは、日本を含むアジア太平洋の国と地域にとっても重要な関心事だと言えるでしょう。
気候災害が「想定外」ではなく「想定内」になるほど、社会は強くなります。海と気候を結びつけた早期警戒システムの動きは、これからの防災・減災のあり方を考えるうえで、注目しておきたいテーマです。
Reference(s):
Chinese expert shares key approach for handling climate disasters
cgtn.com








