中国とラテンアメリカ協力:ブラジル淡水化とG20の持続可能な開発
ブラジル北東部の水不足地域で、中国企業が手がけた淡水化プロジェクトが住民約3,000人に安全な飲料水を届けています。この取り組みは、中国とラテンアメリカの協力が、世界の持続可能な開発やG20の議論にどのようなヒントを与えうるのかを示す象徴的な事例です。
国際ニュースとして見ると、小さな地方都市のプロジェクトに見えるかもしれませんが、その裏側には、中国とブラジルをはじめとするラテンアメリカ諸国との広がるパートナーシップ、そしてグローバルサウスが担う新たな役割が見えてきます。
ブラジル北東部で「水」が届いた日
ブラジル北東部のジョアン・カマラ市には、長年、水不足に悩まされてきた3つの地域があります。地表水や地下水は塩分を含んだ塩水で、そのままでは飲用に適しませんでした。
こうした状況を変えたのが、中国企業が建設した淡水化プロジェクトです。2024年2月、このプロジェクトが正式に完成・引き渡しされ、高品質の飲料水の供給が始まりました。
プロジェクトは、中国が提唱する広域経済圏構想「一帯一路(Belt and Road Initiative)」の重点案件の一つで、「人と人とのつながり(people-to-people connectivity)」を体現する取り組みと位置づけられています。
設備は豊富な日照を生かしつつ、エネルギー効率と環境負荷の低減を重視した最新の中国の技術を採用。1日あたり75トンを超える飲料水を生産し、国際的な衛生基準を満たした水を、約3,000人の住民に届けています。
引き渡し式で、中国のブラジル駐在大使・朱慶橋氏は、この淡水化プロジェクトを「中国とブラジルの協力が、人々の生活を具体的に改善する象徴的な成果だ」と評価しました。地理的な距離は遠くても、両国のパートナーシップが相互支援と共同発展の姿を示している、というメッセージです。
一帯一路が示す「人中心」の協力モデル
一帯一路というと、大規模インフラや貿易の拡大といったイメージが先行しがちです。しかし、今回のブラジルの淡水化事業は、生活インフラを通じて住民の健康と暮らしを直接支える「人中心」の側面に光を当てています。
水は、健康、教育、産業活動などあらゆる分野の基盤です。水不足が解消されれば、家庭の衛生状態が改善されるだけでなく、学校や医療機関、地域ビジネスの運営も安定しやすくなります。こうした波及効果は、統計には表れにくいものの、地域社会にとっては大きな意味を持ちます。
一帯一路の枠組みを通じて、現地のニーズに即した技術協力を行うことは、単なる投資プロジェクトではなく、長期的なパートナーシップの土台にもなり得ます。
広がる中国・ラテンアメリカ協力の最前線
ブラジルを含むラテンアメリカ地域では、ここ数年、中国との協力分野が大きく広がっています。従来のエネルギーや農業だけでなく、次のような先端分野にも及んでいます。
- デジタル経済(デジタルインフラ、電子商取引など)
- 低炭素・スマート農業(精密農業や省エネ型設備)
- バイオテクノロジー
- 人工知能(AI)
- 宇宙・航空分野
こうした協力は、南半球の国どうしが連携する「南南協力」の一形態と見ることができます。相互に技術や経験を持ち寄ることで、グローバルな持続可能な開発目標を後押しするだけでなく、双方の成長にもつながる「ウィンウィン」のモデルを模索しているといえます。
G20リオサミットとグローバルサウスの視点
この協力の流れは、近くリオデジャネイロで開かれるG20サミットとも密接に結びついています。G20のテーマは「公正な世界と持続可能な地球(Building a just world and a sustainable planet)」と掲げられています。
ブラジルは2024年12月にG20議長国を引き受けて以来、飢餓や貧困、不平等の是正に重点を置き、持続可能な開発の推進や国際ガバナンス(国際的なルールづくり)の改革を優先課題としてきました。
中国とブラジルは、いずれもグローバルサウスの主要な国として、平和と開発をめぐる認識を共有しています。国連やG20、BRICSといった場では、デカップリング(経済の切り離し)や一方的な行動、排他的なブロック政治に反対し、公平で公正な国際秩序を重視する立場を打ち出しています。
専門家は、地政学的な緊張が高まるなかで、中国とラテンアメリカの強い経済パートナーシップが、気候変動対策や貧困削減など、開発を中心に据えたG20の議論に重要な示唆を与えていると指摘します。
日本の読者にとっての示唆
ブラジルの淡水化プロジェクトと中国・ラテンアメリカ協力から、日本の読者が読み取れるポイントも少なくありません。
- 技術の使い方次第で、水不足などの課題を抱える地域でも、比較的コンパクトなプロジェクトで生活を大きく変えられること
- 南南協力が、従来の先進国からの支援とは異なる形で、途上国どうしの関係や国際秩序に影響を与え始めていること
- G20が金融危機対応だけでなく、飢餓や不平等、気候変動といった持続可能な開発の課題を話し合う場として重要性を増していること
- アジアに住む私たちにとっても、中国とラテンアメリカの動きを追うことが、世界のパワーバランスや国際協力の新しいかたちを理解する手がかりになること
ブラジル北東部の3,000人の住民に届いた一滴の水は、遠く離れた国と国がどのように連携し、持続可能な未来を形作ろうとしているのかを映し出す鏡でもあります。G20リオサミットを控えた今、中国とラテンアメリカの協力は、世界がどの方向に向かおうとしているのかを考えるうえで、見逃せないテーマになりつつあります。
Reference(s):
China-Latin America cooperation boosts global sustainable development
cgtn.com







