国際秩序と国連:中国の構想と米大統領選をパリ平和フォーラムで読む
国際秩序をめぐる中国の考え方は「国連を中核に据える」――。フランス・パリで開かれた第7回パリ平和フォーラムの討議で、傅瑩(フー・イン)元中国外交副大臣がそう述べ、中国と西側の発想の違い、そして米大統領選が世界秩序に与える影響について語りました。本記事では、その発言のポイントと、フォーラム全体で浮かび上がった「多国間主義」再構築の課題を整理します。
パリ平和フォーラムで語られた中国の「国際秩序」観
フランスの首都パリで開かれた第7回パリ平和フォーラムのパネル討論で、傅瑩元中国外交副大臣は、中国の国際秩序に対する基本的な考え方として、「国連を法的および経済的システムの中心に置く」構想を説明しました。討論のテーマは、米大統領選が世界に与える影響でした。
傅氏は、中国の構想が西側の国際秩序観とは異なると指摘し、「国際秩序のあり方そのものが、いま問われている」との問題意識をにじませました。
「国連を中核とする法・経済システム」とは
傅氏によれば、中国の国際秩序構想は、国連を法的および経済的システムの中心に位置づける点に特徴があります。これは、国連憲章や国際法に基づいた枠組みを重視する姿勢を示すものと受け止められます。
- 国際法と国連憲章を基盤にしたルールづくり
- 経済分野でも国連や国際機関の役割を重視
- 排他的な同盟よりも、より包摂的な協力枠組みを志向する考え方
こうしたメッセージは、フォーラムの全体テーマである「Wanted: A functioning global order(機能するグローバル秩序求む)」とも響き合います。
西側との対比と米国への視線
パネル討論では、米大統領選が世界秩序に与える影響も主要な論点となりました。傅氏は、急速な世界の変化と、長年にわたる米国の「戦略的な行き過ぎ」が重なった結果、米国の人々が広範な国際関与に慎重になっていると分析しました。
そのうえで傅氏は、「ときに、米国人は自らが属する西側のグローバル秩序を内側から揺るがす『破壊者』として振る舞うことさえある」と述べ、西側が築いてきた秩序を米国自身が損なう場面があると批判しました。
今後の米大統領選の結果を踏まえ、米国が西側の国際秩序が抱える欠点を、より「包摂的で開かれた」形に改めていくのか、それとも逆に秩序の弱体化を招くのか――傅氏は、その岐路に注目すべきだと問いかけました。
多国間主義の行方と「グローバル秩序」
今回のパリ平和フォーラムは、「機能するグローバル秩序」をいかに再構築するか、多国間主義(複数の国・地域がルールを共有しながら協力する考え方)の意義を改めて問い直す場ともなりました。
フォーラムのディレクター・ジェネラルを務めるジャスティン・ヴェイス氏は、多国間主義を維持するためには、「協調と協力を重視するあらゆる主体をふたたび集め、対話の場に呼び戻す必要がある」と強調しました。
ヴェイス氏はまた、地球規模の公共財(気候の安定や安全保障、パンデミック対策など)を適切に管理できなければ、将来の紛争のリスクが高まると警告し、グローバル・ガバナンス(世界的な課題をどう管理・調整するか)の重要性を指摘しました。
議論は地政学から気候変動、AI規制まで
フォーラムには、各国政府や国際機関、非政府組織(NGO)、シンクタンクの代表者らが参加し、幅広いテーマについて議論しました。
- 地政学的緊張の高まり:大国間競争や地域紛争が相次ぐなか、危機管理のルールづくりが急務となっています。
- 気候変動:異常気象や災害リスクが高まるなか、温室効果ガス削減や適応策をめぐる国際協力の枠組みが問われています。
- 人工知能(AI)の規制:急速に進化するAI技術を、どのようなルールのもとで利用し管理していくのかが、国際的な課題となっています。
これらはいずれも、一国だけでは解決できない典型的な「グローバル課題」です。その意味で、パリ平和フォーラムは、国際秩序や多国間協調の将来像を模索する実験の場とも言えます。
パリ平和フォーラムとは
パリ平和フォーラムは、多国間協力を促進し、地球規模の課題に取り組むことを目的として、フランスのマクロン大統領の呼びかけで始まった国際会議です。初回は2018年に開催されました。
政府関係者だけでなく、国際機関、NGO、シンクタンクなど、さまざまな立場の参加者が集まり、地政学、気候、デジタル技術など幅広いテーマを議論するのが特徴です。
日本の読者にとっての論点
今回の議論は、中国や欧米といった大国だけの問題ではありません。日本を含む多くの国・地域にとっても、国際秩序の揺らぎは日常生活に影響を及ぼしうるテーマです。
- 国連を中心とする国際秩序を、日本はどのように支え、活用していくのか
- 米大統領選の行方を、同盟関係だけでなく、国際秩序全体の視点からどう捉えるか
- 多国間主義を再生させるうえで、日本やアジアが果たせる役割は何か
ニュースを追う際に、「どの国が得か損か」という短期的な視点だけでなく、「どのような国際秩序を目指すのか」という長期的な問いを意識してみると、世界の動きが違って見えてくるかもしれません。
Reference(s):
Former diplomat says China's global order concept places UN at center
cgtn.com








