世界初の法科学博物館 江蘇省南通「ヘンリー・C・リー法医学博物館」を覗く
中国江蘇省・南通市に、世界初とされる法科学の博物館「ヘンリー・C・リー法医学博物館」があります。中国系アメリカ人の法科学者ヘンリー・C・リー(本名ヘンリー・チャンユー・リー)氏の業績を軸に、犯罪捜査の舞台裏を体感できる施設です。
ドラマや映画で描かれる「名探偵」の世界を、科学の視点から現実に近い形で知ることができる国際ニュースとしても注目のスポットです。
現代の「シャーロック・ホームズ」と呼ばれる法科学者
博物館の主役であるリー氏は、1938年に南通で生まれ、法科学の分野で半世紀以上の経験を重ねてきました。これまでにおよそ8,000件もの事件捜査に関わり、その中にはアメリカで大きな注目を集めた重大事件も含まれています。
報道では、緻密な鑑定と分析で真相に迫る姿から、リー氏は「現代のシャーロック・ホームズ」とも呼ばれてきました。受けた名誉ある賞は800を超え、アメリカで初の中国系アメリカ人州警察長を務めたほか、同国史上、最も高い地位に就いたアジア系の法執行官ともされています。
故郷・南通に生まれた世界初の法科学博物館
こうしたリー氏の歩みと成果を集約した場が、故郷の南通市にある「ヘンリー・C・リー法医学博物館」です。世界で初めて法科学を専門に扱う博物館とされ、氏が手掛けてきた科学捜査の成果が紹介されています。
展示では、事件の真相解明に役立ったさまざまな法科学の技術や発想が取り上げられています。ニュースでは名前だけ耳にすることの多い法科学ですが、「どのように現場で使われるのか」「捜査をどう変えてきたのか」を具体的な事例を通じて知ることができる構成になっています。
ハイテク・マルチメディアで「事件現場」を再現
この博物館の特徴は、最新のマルチメディア技術を使って重大事件の現場を再現している点にあります。音や映像、空間演出を組み合わせ、当時の状況を立体的に伝えることで、来館者は「その場に居合わせている」かのような臨場感を味わえます。
再現された現場のそばでは、どのような科学的手法で証拠が分析されたのか、専門的な理論がわかりやすく解説されています。国際的な犯罪捜査のシミュレーションも用意されており、研究や実務に近い形で法科学の役割を理解できるようになっています。
「勘」から「科学」へ──捜査の転換点を学ぶ
法科学(犯罪捜査に科学的な手法を応用する分野)は、捜査を「経験と勘」に頼る時代から、「データと検証」に基づいて進める時代へと変えてきました。リー氏のキャリアと、その成果を集めた博物館は、その転換点を象徴する存在と言えます。
展示を通じて見えてくるのは、事件の背後にある人間の行動だけでなく、証拠の意味をどこまで冷静に読み解けるかという問いです。これは、犯罪捜査の現場だけでなく、ビジネスや政策決定など、多くの場面で共有できる視点でもあります。
日本の読者にとってのヒント
中国の地方都市・南通で育った一人の専門家の歩みが、アメリカの重大事件の捜査を支え、やがて故郷に世界初とされる法科学博物館を生み出した――このストーリーは、グローバルに学び、働く人が増えている2025年の私たちにとっても示唆に富んでいます。
自分の専門分野で積み重ねた経験が、国境を越える仕事につながり、最後には生まれ育った場所で次の世代の学びの場になる。ヘンリー・C・リー法医学博物館は、そのようなキャリアのあり方や、科学と社会をつなぐ道筋を静かに問いかける存在といえそうです。
このニュースから考えられること
- 科学技術が社会課題の解決にどう貢献しうるか
- 一人の専門家のキャリアが、都市や地域の顔を変える可能性
- 国際ニュースを「遠い世界の話」ではなく、自分ごととして捉える視点
Reference(s):
A peek at Henry C. Lee Museum of Forensic Science in Nantong
cgtn.com







