中国・丁薛祥副総理、COP29で示した3つの気候行動メッセージ
2024年11月12日、アゼルバイジャンの首都バクーで開かれた国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)の世界首脳気候行動サミットで、中国の丁薛祥(てい・せつしょう)副総理が演説しました。気候変動対策の今後を左右する場で示された「3つの提案」は、2025年の国際議論を考えるうえでも押さえておきたい内容です。
演説の要点:3つのメッセージ
丁副総理は、国連気候変動枠組み条約の発効から30年という節目にあたって、次の3つを柱とする考え方を示しました。
- 先進国と途上国の「共通だが差異ある責任」の原則を再確認すること
- 経済成長モデルを根本から転換し、グリーン産業を通じて気候変動に対応すること
- 資金と技術を強化し、とくに途上国の気候変動対処能力を高めること
習近平国家主席の特使としてのメッセージ
丁薛祥氏は、中国共産党中央政治局常務委員であり、中国国務院副総理として、習近平国家主席の特別代表という立場でサミットに出席しました。
演説の冒頭では、開催国アゼルバイジャンがCOP29議長国として果たしてきた役割を評価し、会議の成功に期待を表明しました。そのうえで、「国際社会の大きな期待に応える成果を出す必要がある」として、各国の行動を促しました。
1. 「共通だが差異ある責任」という原則の再確認
最初の提案は、気候変動をめぐる国際交渉の基本原則とされる「共通だが差異ある責任」を改めて強調するものでした。これは、気候変動への対処はすべての国の共通目標である一方で、歴史的な排出量や経済力の違いに応じて、果たすべき役割も異なるとする考え方です。
丁副総理は次のような方向性を示しました。
- 先進国は、排出削減の義務を率先して果たし、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の達成時期を前倒しするべきだと指摘
- 途上国については、それぞれの能力の範囲内で最善を尽くすべきだとし、現実的なアプローチを強調
- 中国としては、2035年までの新たな国別削減目標(NDC)を経済全体とすべての温室効果ガスを対象に提出し、2060年以前のカーボンニュートラル実現をめざすと表明
2. 成長モデルの転換とグリーン産業
二つ目の提案は、「成長モデルの全面的な転換こそが気候変動の根本的な解決策だ」というメッセージです。丁副総理は、中国の電気自動車(EV)、リチウム電池、太陽光発電パネルなどの生産能力に触れ、これらが世界のグリーンな発展を支える「高品質な生産能力」であると位置づけました。
あわせて、国際社会に対して次のような取り組みを呼びかけました。
- エネルギー転換を、公平で秩序立ち、かつ公正な形で加速させること
- 新エネルギー分野の産業・サプライチェーンを安定させること
- グリーンな製品や技術へのアクセスを高め、イノベーションを促進すること
- 「新質の生産力」と呼ばれる新しいタイプの生産能力を、より速いペースで育成すること
3. 資金と技術で途上国の能力向上を
三つ目の提案は、気候変動と向き合う各国の能力を高めるうえで、資金と技術の役割が決定的に重要だという点です。
丁副総理は、中国が2016年以降、他の途上国の気候変動対策を支援するために、プロジェクト資金として1770億元以上を拠出・動員してきたと紹介しました。そのうえで、次のように訴えました。
- 先進国は、途上国への資金支援と技術移転をいっそう拡大するべきである
- COP29では、より高いレベルの資金目標を設定し、今後の地球規模の気候行動への「信頼」と「保証」を示すことが重要である
「人類運命共同体」としての気候行動
演説の締めくくりで丁副総理は、中国が「人類運命共同体」というビジョンを掲げながら、各国と協力して地球という共通の家を守り、「清潔で美しい世界」をともに築いていく意思を改めて表明しました。
気候変動は、一国だけでは解決できない典型的な地球規模課題です。今回の演説は、先進国と途上国の役割分担、グリーン産業の位置づけ、そして資金・技術支援の重要性という三つの軸から、今後の国際交渉の争点を整理した内容だと言えます。
私たちが読み取れるポイント
2025年の今、この演説から読み取れるポイントは少なくとも次の3つです。
- 先進国に対し、排出削減と資金支援の面で「率先垂範」を強く求めていること
- 気候変動対策はコストではなく、新しい生産力や産業を育てるチャンスでもあるという視点
- 途上国支援を通じた国際協力が、今後も気候外交の重要な柱であり続けるという見通し
気候変動をめぐる国際ニュースを追うとき、こうしたメッセージを頭に入れておくと、各国の発言や政策の背景がより立体的に見えてきます。SNSなどで議論するときにも、「誰がどの立場から、どんな責任や役割を強調しているのか」という視点を意識してみると、ニュースの読み方が一段深まるのではないでしょうか。
Reference(s):
Chinese vice premier's speech at World Leaders Climate Action Summit
cgtn.com








