習近平氏「経済グローバル化の大勢は変わらない」APEC演説を読み解く
2024年のAPEC CEOサミット向け書面演説で、中国の習近平国家主席は「経済グローバル化の大勢は変わっていない」と強調しました。アジア太平洋の役割と、中国が掲げる改革・開放の方向性をどう示したのか、主なポイントを整理します。
「経済グローバル化の大勢は変わっていない」
習近平氏は、アジア太平洋地域は経済グローバル化と深く結びつき、共通の利益と未来を共有する「運命共同体」になっていると指摘しました。一方で、世界は「新たな動乱と変革の時期」にあり、グローバル化をめぐる逆風も強まっていると認めています。
そのうえで、経済グローバル化を「川をさかのぼる航行」にたとえ、「前に進むか、流されるかの選択だ」と警告しました。各国間の経済協力をさまざまな口実で妨げたり、相互依存を断ち切ろうとする動きは「後戻りにすぎない」として、分断ではなく協力を呼びかけています。
3つの柱:イノベーション・ガバナンス改革・人中心
習近平氏は、より包摂的な経済グローバル化を進めるための具体的な方向として、次の3点を示しました。
1. イノベーションを成長の原動力に
まず掲げたのは「イノベーション(技術革新)を世界経済成長のエンジンにする」という方針です。科学技術の進歩は「全人類に利益をもたらすべきだ」と述べ、開発途上国の科学技術能力の向上を支援し、知識や技術の国際的な流れを促す必要があるとしました。
2. グローバル経済ガバナンスの改革
次に挙げたのが、国際経済のルールづくりを見直す「グローバル経済ガバナンスの改革」です。習氏は、「共に計画し、共に建設し、共に利益を分かち合う」という原則を掲げ、いわゆるグローバルサウスの代表性と発言力を高めるべきだと主張しました。
そのうえで、各国が国際経済協力に参加する際には、「平等な権利・平等な機会・平等なルール」を確保する必要があると述べ、開かれた世界経済システムの構築や、グローバルな産業・サプライチェーン(供給網)の安定と円滑化を求めました。
3. 人中心・格差是正のグローバル化
3点目は「人中心」の発想です。習近平氏は、「富む者がさらに富み、貧しい者がより貧しくなる」状態では、世界の安定と繁栄は実現できないと指摘しました。真の発展とは、すべての国が共に発展することだと位置づけています。
そのうえで、「人を中心に据えた経済グローバル化」をめざし、よりバランスの取れた発展と、より平等な機会の提供によって、国や階層、地域の違いをこえて多様な人々が発展の成果を享受できるようにすべきだと呼びかけました。
アジア太平洋は「グローバル化の機関車」であり続けるか
習近平氏は、アジア太平洋地域の経済がこれまで力強い成長を維持し、「アジア太平洋の奇跡」を生んできたことを強調しました。その背景として、地域の平和と安定へのコミットメント、「真の多国間主義」と「開かれた地域主義」の実践、そして経済グローバル化と互恵・共益の流れへの信頼を挙げています。
今後については、アジア太平洋が引き続き経済グローバル化の「機関車」であるべきだと述べました。そのうえで、従来の「開放性と包容性」という特徴をさらに磨きつつ、次のような方向を提案しています。
- 「グリーンなアジア太平洋」:環境に配慮した成長の加速
- 「デジタルなアジア太平洋」:デジタル技術を活用した新たな成長分野の開拓
- 「アジア太平洋運命共同体」の構築:地域としての連帯と協力の強化
こうした取り組みにより、今後30年の「新たな黄金期」を地域にもたらしたいという構想を示しました。
中国の改革・開放と「新質の生産力」
習近平氏は、中国国内の政策についても言及しました。2024年7月の中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議(いわゆる三中全会)で、中国式現代化を進めるための「全面的な改革深化の総合的な計画」が採択されたことを紹介し、中国は引き続き世界経済に「力強い原動力」を提供していくと述べました。
また、2024年の成長目標については、十分に達成できるとの自信を示し、中国が世界経済の「最大の成長エンジン」であり続けるとの見通しを示しました。国内では、「新質の生産力」と呼ばれる新しいタイプの生産能力を、実情に合わせて育成していく方針も強調しています。
対外面では、「質の高い」一帯一路協力の推進、グリーン発展の堅持、気候変動対策における重要な一員としての役割を挙げました。さらに、より高い水準の開かれた経済システムを構築し、自主的な市場開放措置の拡大や、高水準の自由貿易圏ネットワークの拡充を通じて、「世界に向けて扉をさらに大きく開く」と説明しました。
アジア太平洋と世界へのメッセージ
演説の締めくくりで、習近平氏は「中国の発展はアジア太平洋抜きにはありえず、同時に中国の発展はアジア太平洋に一層の利益をもたらす」と述べ、地域との相互依存関係を改めて強調しました。
そして、「開放と連結性の精神」に基づき、団結と協力を強め、共通の課題に共に立ち向かうことで、世界の共通繁栄と人類のより明るい未来に向けた「大きな力」を形成しようと呼びかけました。
この記事から考えたいこと
今回の演説は、経済グローバル化の方向性をめぐる議論が続く中で、アジア太平洋の役割と中国のスタンスを改めて示したものと言えます。特に次の点がポイントとして浮かび上がります。
- グローバル化そのものは続くという前提のもとで、より包摂的で持続可能な姿への転換を目指していること
- 技術革新とグリーン・デジタル分野を、成長と協力の新たな軸として位置づけていること
- グローバルサウスの発言力強化や人中心の発展など、「公平性」や「バランス」を重視するキーワードが繰り返し登場したこと
今後、アジア太平洋の各国・地域がどのように協力し、こうしたビジョンを具体的な政策やプロジェクトに落とし込んでいくのかが、大きな注目点となります。日本を含む地域の読者にとっても、グリーンやデジタル、サプライチェーンの安定といったテーマは、ビジネスや暮らしに直結する課題です。演説のメッセージを手がかりに、自分たちにとっての「望ましいグローバル化」の姿を考えてみるきっかけになりそうです。
Reference(s):
Xi Jinping: General trend of economic globalization has never changed
cgtn.com








