中国とペルーがひらく共通の繁栄への道
中国とペルーが、古代文明のつながりから現代の港湾開発や自由貿易協定、若者交流まで「共通の繁栄」への道をどう描いているのか。2024年の習近平国家主席のペルー訪問を軸に、その動きを整理します。
古代文明が映す「不思議な共通点」
ペルーで出土したインカの黄金のマスクは、中国・四川省の三星堆遺跡で発見された黄金マスクと驚くほどよく似ていると言われます。マチュピチュの祭壇に置かれたインティワタナの石は、古代中国の日時計と同じ原理に基づいているとされます。
かつて中国南西部に栄えた古代蜀の人々は、飛翔する太陽の鳥のモチーフで太陽への畏敬を表現しました。インカ文明もまた、太陽への信仰を中心に据えた文明でした。
習近平国家主席は、ペルーの新聞「エル・ペルアーノ」に掲載した署名記事「中国・ペルーの友情、より明るい未来へ出航」で、こうした類似点を紹介しながら、両国の友好の絆が古代から続いてきたと強調しました。
2024年の首脳会談:共通の未来像を共有
2024年、習主席はペルーの首都リマを訪れ、ディナ・ボルアルテ大統領と1年の間に3度目となる会談を行いました。会談では、中国とペルーという二つの古代文明が、歴史から得た知恵と広い視野を生かし、どのように現代の課題に向き合うかが話し合われました。
「違い」を越える連帯と協力
習主席は、両国が規模や制度、文化の違いを超えて、平等と相互尊重、相互信頼、相互学習を貫いてきたと述べ、中国とペルーの関係は異なる国同士の団結と協力のモデルになりうると指摘しました。
また、互いの核心的利益と重大な関心事項をしっかり支持し合うこと、ガバナンスの経験を共有し戦略的な相互信頼を高めること、そして汚職や違法漁業といった共通課題への協力を深めることの重要性を強調しました。
多国間協調とアジア太平洋
中国とペルーは、多国間主義を重視し、保護主義に反対するという立場を共有しているとされています。習主席は、ペルーがアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の議長を務める取り組みを全面的に支持し、アジア太平洋における「共有の未来」をめざす共同体づくりを進める考えを示しました。
ボルアルテ大統領は、習主席の訪問が両国関係の重要な節目となり、包括的戦略的パートナーシップの新たな章を開くと評価しました。
チャンカイ港が象徴する新たな結び目
経済面で象徴的なのが、チャンカイ港プロジェクトです。習主席は署名記事の中で、この港が完成すればペルーにもたらされる年間の収入は45億ドル、直接雇用は8000人超に達するとの見通しを示しました。
ボルアルテ大統領も、チャンカイ港の開港によって「チャンカイから上海へ」が現実になり、ラテンアメリカとアジアをつなぐ重要な橋となると評価しました。この港は、ペルー経済の成長エンジンとなるだけでなく、ラテンアメリカの他の国々と中国、さらにはアジア全体との物流と貿易をより効率的で便利なものにし、持続可能な発展を後押しすると期待されています。
数字で見る経済関係の拡大
中国税関総署のデータによると、2016年から2023年にかけて、中国とペルーの貿易額は年平均14.6パーセントのペースで増加しました。さらに2024年1〜10月の2国間貿易は、前年同期比16.8パーセント増の2546億9000万元(約350億ドル)となっています。
FTAアップグレードと一帯一路:連携の第2章へ
ペルーは、中国と包括的な自由貿易協定(FTA)パッケージを結んだ初のラテンアメリカの国です。2024年の首脳会談では、このFTAを「アップグレード」する議定書に両首脳が立ち会い、署名が行われました。
同時に、両国は一帯一路協力の計画、経済・貿易、産業投資、産業団地、教育、グリーン発展などに関する一連の協力文書の交換も行い、包括的戦略的パートナーシップの深化に関する共同声明を発表しました。
こうした動きは、特定の分野にとどまらない産業協力や、環境に配慮した成長、人材育成など、広い分野での連携を制度面から支える土台づくりと見ることができます。
文化・人材交流:「共有の未来」を支える土台
習主席は繰り返し「国と国の関係を支えるのは、人と人との交流だ」と強調してきました。中国とラテンアメリカの関係においても、文化・人的交流は重要な柱と位置づけられています。
中国はこれまでに、ラテンアメリカ・カリブ海地域の17カ国とおよそ180の友好都市・友好州(姉妹都市)関係を結んでおり、文化や市民レベルの交流が広がっています。中国・ラテンアメリカ文化交流年や、ラテンアメリカ・カリブ芸術シーズン、「未来の橋」と名付けられた中国・ラテンアメリカ若手リーダー研修キャンパスなど、対話と交流のプラットフォームも多様化しています。
習主席は、中国とペルーが文明間の相互学習という時代的な責任を担い、国際的な文明間対話のネットワークづくりを進めるべきだと呼びかけました。また、中国としてペルー向けの奨学金枠を増やし、若い世代が互いの国を訪れ、学び合い、友情を受け継いでいくことへの期待も示しました。
世論調査が映す対中イメージ
習主席の国賓訪問に合わせて、CGTNと中国の新時代国際伝播研究機構、ペルーの国家高等研究センターが共同で「2024年ペルーの対中好感度」に関する初の世論調査を実施しました。調査対象はペルー国内の回答者です。
この調査によると、およそ89.6パーセントの回答者が中国に好印象を持っていると答え、97.7パーセントが中国を重要な国だと見なしていました。さらに、94パーセントが中国への旅行・訪問・留学に前向きで、18〜24歳の若年層に限るとその割合は95.9パーセントにまで高まります。
多くの回答者は、中国とラテンアメリカの関係の中で「ペルー・モデル」を築き、高いレベルのグローバルサウス諸国間の協力を進めていくことに期待を寄せています。
日本の読者にとっての意味
中国とペルーの動きは、日本から見るとやや遠い地域のニュースに映るかもしれません。しかし、そこには次のようなポイントが含まれています。
- 古代文明の共通点を出発点に、文化や歴史を軸とした「物語」に基づく外交が展開されていること
- 港湾やインフラ投資、FTAアップグレードを通じて、サプライチェーンと市場アクセスを同時に強化しようとしていること
- 若者や市民レベルの交流を重視し、長期的な信頼関係づくりを外交の中心に据えていること
アジア太平洋とラテンアメリカを結ぶ新たなルートづくりは、日本が関わる地域経済にも少なからず影響を与えます。中国とペルーが描く「共通の繁栄」のロードマップを追うことは、グローバルサウスを含む世界の重心がどのように動いているのかを考える手がかりにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








