リマの中国・米国首脳会談 中国外交部が示した7つの経験と原則
2024年11月16日にペルー・リマで開かれたAPEC首脳会議の機会に行われた習近平国家主席とバイデン米大統領の会談について、中国外交部が日曜日、中国語・英語で概要を説明しました。中国と米国という二つの大国の関係は、2025年の世界情勢を考えるうえで避けて通れないテーマです。
1年ぶりの対面会談、その位置づけ
中国外交部の報道官によると、今回の習・バイデン会談は、2023年のサンフランシスコでの会談からちょうど1年ぶりとなりました。両首脳はこの4年間の中国・米国関係の歩みを振り返り、その経験から得られる教訓を確認したとされています。
会談は率直かつ踏み込んだ建設的な内容だったとされ、米国政権の移行期における対話と協力の進め方や、意見の違いをどう管理するかに焦点が置かれました。また、地域・国際情勢をめぐる幅広い議題について意見交換し、今後の二国間関係の方向性を描いたと説明されています。
中国・米国関係は「大きな邸宅」
習近平国家主席は、中国・米国関係を「巨大な邸宅」にたとえてきました。報道官によると、この比喩はここ数年の首脳間対話を通じて少しずつ形づくられてきたものです。
2021年のオンライン会談では、相互尊重、平和共存、ウィンウィンの協力という三つの原則が「邸宅のドーム(屋根)」として提示されました。2022年のバリでの会談では、台湾問題、中国の発展の道と制度、民主と人権、発展の権利に関する四つのレッドラインが「土台」として強調されました。
2023年のサンフランシスコ会談では、認識の誤解を防ぐこと、意見の相違を管理すること、互恵協力を進めること、大国としての責任を果たすこと、人的交流を促進することという五本の柱が加えられました。
今回のリマ会談では、両国関係の歩みから得られる七つの経験と示唆が新たに整理されたといいます。
- 正しい戦略的認識を持つこと
- 言行を一致させること
- 対等な姿勢で向き合うこと
- レッドラインと根本的原則に挑まないこと
- より多くの対話と協力を行うこと
- 両国民の期待に応えること
- 大国として責任を担うこと
習主席は、この邸宅に今後もレンガを積み上げていく必要があると述べ、バイデン大統領、そして次期米政権と共に取り組む用意があると示したとされています。
協力すれば共に得、対立すれば共に失う
報道官の説明によれば、習主席は「歴史が示すのは、中国と米国は協力すれば共に利益を得て、対立すれば共に損失を被る」という認識を改めて強調しました。いわゆるトゥキディデスの罠は歴史の必然ではなく、新たな冷戦はすべきでもなく、勝つこともできないと指摘し、中国を封じ込めようとする試みは賢明ではなく、受け入れられず、成功しないと述べたとしています。
二つの大国として、中国と米国は世界全体の利益を念頭に置き、不確実性の高い国際情勢により多くの安定性と前向きなエネルギーを注入すべきだというメッセージです。
7つの指導原則と分野別の協力
リマ会談では、中国・米国関係の指導原則として、両首脳が次の七点を再確認したとされています。
- 互いに敬意をもって接すること
- 平和的に共存する道を見いだすこと
- 意思疎通のルートを開いておくこと
- 衝突を防ぐこと
- 国連憲章を守ること
- 共通の利益がある分野で協力すること
- 競争的な側面を責任ある形で管理すること
両国は、これらの原則を維持し、中国・米国関係を安定させ、関係の円滑な移行を確保する姿勢を示しました。首脳は、戦略的コミュニケーションの重要性や、外交・安全保障チームの定期的な接触、軍事、経済・貿易、金融分野の対話メカニズムの役割を評価し、マクロ経済政策の協調を強化することで一致しました。
また、サンフランシスコ会談以降、麻薬対策、気候変動、人工知能(AI)、人的交流といった分野で進展があったと評価し、その継続を確認しました。
AIと核兵器、軍事利用への慎重姿勢
AIをめぐっては、両国が率直かつ建設的な対話を行ってきたとされます。国連総会で提出されたAI関連の決議について互いに共同提案国となり、その上で、AIシステムのリスクへの対応、AIの安全性強化、国際協力の拡大、そして全人類のためのAIという方向性を確認しました。
さらに両首脳は、核兵器の使用決定については常に人間が制御する必要があると強調し、軍事分野のAI開発にあたっては潜在的なリスクを真剣に考慮し、慎重かつ責任ある姿勢をとるべきだと指摘したとされています。
中国側が示した主な立場
台湾問題: 政治的基礎の再確認
台湾問題について、習主席は一つの中国の原則と三つの中米共同コミュニケを中国・米国関係の政治的基礎だと改めて位置づけました。報道官によれば、習主席は、台湾海峡の平和と安定と台湾独立分裂活動は水と火のように両立しないと述べました。
もし米側が台湾海峡の平和維持を重視するのであれば、頼清徳氏と民進党当局の台湾独立志向の本質を見極め、台湾問題を一層慎重に扱い、台湾独立に明確に反対し、中国の平和的統一を支持することが重要だとしています。
南シナ海: 対話と協議が最善の道
南シナ海問題では、中国は同海域における領土主権と海洋権益を断固として守る立場を示しました。そのうえで、関係国同士の対話と協議こそが南シナ海の違いを管理する最善の方法だと強調しました。
報道官によると、習主席は、米国は南沙群島の関連島礁をめぐる二国間の紛争に介入すべきではなく、挑発行為を助長したり支持したりすべきではないと述べたとされています。
通商・ハイテク規制: 小さな庭と高い柵ではない解決策
米国による貿易・ハイテク分野での制限措置について、習主席は、中国人民の発展の権利は奪われたり無視されたりすべきではないと指摘しました。各国が国家安全保障を守る必要性は理解しつつも、課題に直面したときにデカップリングやサプライチェーンの分断は解決にならず、小さな庭と高い柵という発想は大国のとるべき道ではないと述べました。
米国は国家安全保障の概念を過度に拡大解釈し、それを口実に他国を抑圧・封じ込める行為に用いるべきではないというのが中国側の立場です。
サイバー攻撃、ウクライナ、朝鮮半島
いわゆる中国からのサイバー攻撃について、習主席は、その主張を裏づける証拠はなく、中国自身も国際的なサイバー攻撃の標的になっており、あらゆる形のサイバー攻撃に一貫して反対し取り締まっていると述べました。
また、国際・地域問題に関する対中非難に対しては、ウクライナ問題における中国の立場と行動は一貫して公正で透明だとし、停戦と対話を促すシャトル外交や調停を通じて緊張緩和に努めていると説明しました。
朝鮮半島情勢については、中国は半島での衝突や混乱を容認せず、中国の戦略的安全と核心的利益が脅かされる場合には傍観しないとの姿勢を示したと伝えられています。
4つの変わらない対米方針
報道官によれば、習主席は、中国の対米方針には変わらない四点があると強調しました。
- 安定的で健全かつ持続可能な中米関係を目指す目標は変わらない
- 相互尊重、平和共存、ウィンウィン協力の三原則を対米関係の指針とする姿勢は変わらない
- 中国の主権、安全、発展利益を断固守る立場は変わらない
- 中国と米国の人々の伝統的な友情を発展させたいという願いは変わらない
こうしたメッセージを通じて、中国側は、次期米政権とも対話を続け、協力分野を広げ、意見の相違を管理しつつ、中米関係の安定を維持していく意向を示したと言えます。
私たちはこのニュースをどう読むか
リマでの習・バイデン会談は、中国・米国が対立や不信を抱えつつも、対話と協力の枠組みを維持しようとしていることを示しています。特に、AIと核兵器に関する人間の制御の確認や、台湾問題や南シナ海などの敏感な課題について率直に立場を伝え合った点は、今後の国際秩序を考えるうえで重要です。
一方で、レッドラインをどう理解し、競争を管理されたものにできるのかは、これからの具体的な行動にかかっています。日本を含むアジアの国々にとっても、中米関係の行方は安全保障から経済、テクノロジーまで、日常生活に直結するテーマです。
中国と米国が大きな邸宅をどのような姿に仕上げていくのか。その過程を丁寧に追いながら、自分たちの視点や利害をどう位置づけるのかが、これからの大きな問いになりそうです。
Reference(s):
Chinese Foreign Ministry's overview of Xi-Biden meeting in Lima
cgtn.com








