習近平主席とバイデン大統領がリマで会談 米中関係の7原則を確認
ペルー・リマで開かれている第31回APEC経済リーダーズ会議に合わせ、習近平国家主席と米国のバイデン大統領が現地時間の土曜日午後に会談しました。世界の二大国のトップが直接向き合い、米中関係の「7つの指針」をあらためて確認し、台湾やAI、南シナ海など幅広い課題を話し合った今回の会談は、2025年の国際情勢を考えるうえで重要な一歩となりそうです。
リマでの米中首脳会談、その背景
会談は、ペルーの首都リマで開催中の第31回APEC経済リーダーズ会議の合間に行われました。習近平主席は、過去4年間の米中関係が「浮き沈み」を経験しつつも、対話と協力を重ねることで全体としては安定を保ってきたと振り返りました。
両国はこの間、首脳レベルの「舵取り」のもとで、米中関係の指針となる原則をまとめ、対話と協力の枠組みを軌道に戻してきたとしています。外交、安全保障、経済・貿易、財政・金融、軍事、麻薬対策、法執行、農業、気候変動、人と人の交流など、20を超える分野で対話メカニズムが再開・新設され、一定の成果が出ていると説明しました。
習近平主席が示した「7つの経験と示唆」
習近平主席はこの4年間の経験を踏まえ、米中関係を安定させるための「7つの経験と示唆」を整理しました。そのポイントは次のとおりです。
- 戦略的認識を正しく持つこと――新興国と既存大国が対立しやすいとされる「トゥキディデスのわな」は歴史の必然ではなく、新冷戦は「すべきでもなく、勝者も生まれない」と強調しました。中国を封じ込めようとする試みは賢明ではなく、受け入れられず、成功しないと述べました。
- 言行を一致させること――「信なくば立たず」として、中国は約束を守ってきたと説明。米側が発言と行動を一致させなければ、自らのイメージを損ない、信頼を損ねることになると指摘しました。
- 対等に向き合うこと――二つの大国として、一方が他方を自らの型にはめ直したり、「力の優位」を振りかざして抑え込んだり、発展の正当な権利を奪って優位を維持しようとすべきではないとしました。
- レッドラインと根本原則を尊重すること――大国間の対立や相違は避けられないものの、一方が他方の核心的利益を損なったり、対立・衝突を求めたりしてはならないと強調。特に、一つの中国原則と3つの米中共同コミュニケは米中関係の政治的基礎であり、順守されなければならないとしました。
- 対話と協力を拡大すること――現在の状況では、米中の共通利益は縮小ではなく拡大しているとし、経済、貿易、農業、麻薬対策、法執行、公衆衛生に加え、気候変動やAI、国際的な紛争への対応などで協力を広げるべきだと述べました。
- 国民の期待に応えること――米中関係は両国民の幸福を高め、互いの距離を縮めるものであるべきだと強調。人的・文化的交流を進めるために「橋や道路」をつくり、冷却効果をもたらす行動を避ける必要があるとしました。
- 大国としての責任を果たすこと――人類の未来と世界平和への責任を念頭に置き、世界に公共財を提供し、分断ではなく団結に資する行動を取るべきだと指摘。互いを消耗させたり、他国に側につくよう強いるべきではないとしました。
習近平主席は、45年に及ぶ米中の国交樹立の歴史は、こうした経験則の妥当性を証明していると述べました。互いをパートナーとみなし、相違を棚上げして共通点を追求すれば関係は前進する一方、互いをライバルと位置付けて悪意ある競争を続ければ、関係は混乱し、後退しかねないとの見方を示しました。
台湾や安全保障分野で示された中国の立場
習近平主席は、台湾問題や民主主義と人権、中国の発展の道と制度、発展権について、中国側の「レッドライン(越えてはならない一線)」をあらためて説明しました。これらは米中関係にとって最も重要な「ガードレール」であり、安全網だと位置付けています。
台湾問題:「台湾独立」との両立は不可能と強調
台湾をめぐっては、台湾海峡の平和と安定と、「台湾独立」を目指す分離主義的な動きは「水と火のように両立しない」と強調しました。米側が本気で台湾海峡の平和と安定を重視するのであれば、頼清徳氏と民進党(DPP)当局の「台湾独立」志向の本質を見極め、台湾問題を慎重に扱うことが重要だと指摘しました。
そのうえで、米国に対し、「台湾独立」に明確に反対し、中国の平和的統一を支持することが必要だと訴えました。一つの中国原則と3つの米中共同コミュニケが、米中関係の政治的基礎であるという立場も改めて示しました。
サイバー、南シナ海、ウクライナ、朝鮮半島
- サイバー分野――「中国発のサイバー攻撃」という主張を裏付ける証拠はないとし、中国自身も国際的なサイバー攻撃の被害者であり、あらゆる形のサイバー攻撃に一貫して反対し、取り締まっていると述べました。
- 南シナ海――中国は南シナ海における領土主権と海洋権益を断固として守ると強調。そのうえで、関係国同士の対話と協議こそが最良の解決策であり、米国は南沙諸島の関連島礁をめぐる二国間の争いに介入したり、挑発行動をあおったりすべきでないとしました。
- ウクライナ――ウクライナ問題に関する中国の立場と行動は「公平で明白」だと述べ、停戦協議を後押しするシャトル外交を行い、緊張緩和に向けてあらゆる努力を続けていると説明しました。
- 朝鮮半島――中国は朝鮮半島での紛争や混乱を容認せず、自国の戦略的安全保障と核心的利益が脅かされる状況を座視しないとの姿勢を示しました。
経済・技術と「デカップリング」への懸念
習近平主席は、世界が頻発する紛争と不確実性に直面するなかで、「大国間競争」を時代の基本ロジックにすべきではなく、連帯と協力こそが難局を乗り越える道だと指摘しました。サプライチェーン(供給網)の寸断や「デカップリング(分断)」は解決策ではなく、互恵的な協力を通じてこそ共通の発展が実現できると訴えました。
また、特定分野を狭い範囲に囲い込む「小さな庭と高い柵」の発想は、大国にふさわしいものではなく、開放と共有こそが人類全体の福祉の向上につながると述べました。
バイデン大統領のメッセージ:競争は「衝突にしてはならない」
バイデン大統領は、米中関係は両国民だけでなく世界の未来にとっても「最も重要な関係」だと位置付けました。そのうえで、競争が衝突に転じることを防ぐのは両政府の責任だと述べました。
過去4年間、両国はコミュニケーションの経路を立て直し、外交・安全保障チームの間で率直かつ突っ込んだ対話を積み重ねてきたと説明。特に1年前のサンフランシスコ会談以降、軍同士の対話、麻薬対策、法執行、AI、気候変動、人と人の交流などで具体的な進展があったと評価しました。
バイデン大統領は、米国は新冷戦を求めておらず、中国の制度を変えようとせず、同盟関係も中国を標的にしたものではないと表明しました。また、米国は「台湾独立」を支持せず、中国との衝突も望まず、対中政策として台湾問題を利用するつもりもないと述べました。米側は引き続き一つの中国政策を堅持し、中国との間で相違を責任ある形で管理するため、移行期における対話と意思疎通を強化する用意があるとしています。
さらに、両国は2026年のAPECとG20の開催をそれぞれ支持し合うことで一致し、協力すれば両国民のために何ができるかを示す象徴的な例だと位置付けました。
米中関係の「7つの共通理解」とAI・核兵器の安全
両首脳は、米中関係を導く「7つの共通理解」をあらためて確認しました。その内容は、次のように整理されます。
- 互いを尊重すること
- 平和的な共存の道を見いだすこと
- コミュニケーションの窓口を開いたままにすること
- 衝突を防止すること
- 国連憲章を守ること
- 利益が重なる分野で協力すること
- 競争面を責任ある形で管理すること
両国は、これらの原則を維持しつつ、米中関係の安定化を続け、関係の「円滑な移行」を確保していくことで一致しました。首脳間に加え、外交・安全保障チーム同士の戦略的対話や、軍事、経済・貿易、金融を巡る対話メカニズムの重要性も再確認し、マクロ経済政策の協調を強める方針です。
AI分野については、両国が国連総会で互いのAI関連決議案を共同提案したことを評価し、国際協力を強化して「すべての人のための善きAI」を推進する必要性を確認しました。また、核兵器の使用決定においては、人間によるコントロールを維持することの重要性を強調しました。
会談の締めくくりに、両首脳は今回の対話を「率直で、深く、建設的だった」と評価し、今後も連絡を取り合っていく意思を示しました。中国側からは蔡奇氏と王毅氏が会談に同席しました。
今回の会談は何を意味するのか
今回のリマ会談は、米中両国が対立をエスカレートさせるのではなく、「ガードレール」となる原則を再確認し、具体的な協力分野を積み上げていく姿勢を示した点で注目されます。一方で、貿易や先端技術、安全保障をめぐる構造的な競争がなくなったわけではなく、両国が約束をどこまで行動に移せるかが試される局面でもあります。
世界経済の行方、気候変動対策、AIの国際ルール作り、台湾海峡や南シナ海、朝鮮半島の安定など、多くの課題で米中の動きは日本を含むアジア太平洋の国々と地域に直接影響します。読者の皆さんにとっても、ニュースの見出しだけでなく、「どのような原則のもとで米中が付き合おうとしているのか」を押さえておくことが、今後の国際ニュースを読み解くうえでの一つの手がかりになりそうです。
Reference(s):
President Xi Jinping meets with U.S. President Joe Biden in Lima
cgtn.com








