G20リオで習近平氏「共通発展の公正な世界」へ8つの行動を提案
ブラジル・リオデジャネイロで開かれている主要20か国・地域(G20)第19回サミットの第1セッションで、中国の習近平国家主席が「共通発展の公正な世界」の構築を呼びかけ、世界の開発を後押しするための8つの具体的な行動を示しました。格差や気候変動、デジタル化が進む中で、どのようなビジョンが提示されたのでしょうか。
G20リオサミットで示された「共通発展」のビジョン
習近平国家主席は、リオデジャネイロでのG20第1セッションで「共通発展の公正な世界の構築」と題した演説を行い、世界は今、百年に一度ともいえる規模の変革期にあり、人類は前例のない機会と課題に直面していると指摘しました。
そのうえで、主要国の指導者が集うG20のリーダーたちは、短期的な利害にとらわれるのではなく、世界全体を「運命を共にする一つの共同体」として捉え、歴史に対する責任を負い、主体的に歴史を前に進めるべきだと強調しました。
習氏は、中国がこれまでの杭州サミットで、G20のマクロ経済政策協調の議題の中心に初めて「開発」を据えたと振り返り、今年のリオサミットでも「公正な世界と持続可能な地球の構築」というテーマが掲げられ、飢餓と貧困に立ち向かう「グローバル飢餓・貧困撲滅連合」の設立が決まったことに言及しました。杭州からリオデジャネイロまで、一貫して「共通発展の公正な世界」を目指す流れの中にあると位置づけています。
「小さな庭と高い柵」ではなく、協力の橋を
共通発展を実現するためには、貿易や投資、開発協力といった分野にもっと資源を振り向け、開発に関わる制度や機関を強化する必要があると習氏は指摘しました。また、各国の間に「小さな庭と高い柵」を築くのではなく、より多くの協力の橋を架け、より多くの開発途上国が生活水準を向上させ、近代化を実現できる環境を整えるべきだと訴えました。
さらに、開発途上国が持続可能な生産とライフスタイルを採用し、気候変動、生物多様性の喪失、環境汚染といった課題に適切に対応できるよう支援すること、そして人と自然の調和を図る取り組みの重要性も強調しました。
国際経済協力については、開かれた、包摂的で差別のない環境を育て、すべての国にとって恩恵のある包摂的な経済のグローバル化を進めるとともに、新技術や新産業、新しいビジネスの形態によって持続可能な開発に活力を与えるべきだと述べました。その際、開発途上国がデジタル、スマート、グリーンといった分野の発展により良く参加できるよう支え、南北間の格差を縮める必要があるとしています。
また、マルチラテラリズム(多国間主義)へのコミットメントを維持し、国連を中心とする国際システム、国際法に支えられた国際秩序、そして国連憲章の目的と原則に基づく基本的な国際関係の規範を守ることの重要性も強調しました。
中国の貧困削減と「グローバル・サウス」の一員としての立場
習氏は、中国の発展は世界の共通発展の重要な一部であると位置づけました。中国は8億人を貧困から脱却させ、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダに掲げられた貧困削減目標を前倒しで達成したと説明し、これらは中国政府と国民の粘り強く統一された努力の成果だと述べました。
中国は常に「人々を中心に据える」方針を掲げ、「一つの貧困地域も、一人の貧困層も取り残さない」と厳粛に宣言してきたと強調。各地の実情に応じた産業育成や成長促進など、きめ細かな政策によって貧困を克服し、共通の繁栄をめざしてきたとしています。
習氏は、中国の経験は「弱い鳥でも早く飛び立てば高く飛べる」という比喩で表されるとし、忍耐と粘り強さ、そして青写真を現実に変える努力があれば、開発途上国も貧困をなくすことができると強調しました。「中国にできたのであれば、他の開発途上国にもできる」として、中国の貧困との闘いが世界に投げかけるメッセージだと述べました。
さらに、中国は今後も一貫して「グローバル・サウス」の一員であり、他の開発途上国にとって信頼できる長期的パートナーであり続けると強調。世界の開発のために、実行に移す「行動する主体」であり続け、他の開発途上国と共に近代化へと歩んでいくと語りました。
共通発展のための「8つの行動」
習氏は演説の中で、中国が世界の開発を支援するために進める「8つの行動」を提示しました。その主な内容は次の通りです。
1. 高品質な「一帯一路」協力の推進
中国は、多次元的な「一帯一路」の連結性ネットワークの構築を進めています。その中核として、環境に配慮したグリーン・シルクロードの建設を先導プロジェクトとし、デジタル分野の連結を強めるデジタル・シルクロードの発展にも力を入れるとしています。
2. グローバル発展イニシアチブの実施
中国は、構築中のグローバル・サウス研究センターが、その役割を十分に果たせるよう整備を進める方針です。また、開発途上国への支援を継続し、貧困削減、食料安全保障、デジタル経済などの分野で実務的な協力を深めると表明しました。
3. アフリカの開発支援
北京で開催された中ア協力フォーラム(フォーカック)首脳会議において、中国は今後3年間でアフリカの近代化を共に進めるための10のパートナーシップ行動を発表し、それに関連する資金的な支援を約束したと説明しました。
4. 貧困削減と食料安全保障の国際協力支援
中国は、ブラジルが主導する「グローバル飢餓・貧困撲滅連合」への参加を決定しました。また、G20が開発相会合を継続的に開催することを支持するとともに、世界の食品ロスや廃棄削減を議論する「国際食品ロス・廃棄会議」のホスト国として、今後も関与を続ける考えを示しました。
5. オープンサイエンス国際協力イニシアチブの提案
中国はブラジル、南アフリカ、アフリカ連合と共に、「オープンサイエンス(開かれた科学)に関する国際協力イニシアチブ」を提案しています。これは、グローバル・サウスが科学技術とイノベーション分野での世界的な進展に、より良い形でアクセスできるようにすることを目的としています。
6. G20を通じたグローバル・サウスの実務協力
中国は、北京に拠点を置くG20経済に関する起業研究センターの活動を支持し、グローバル・サウスのためになる実務協力の強化を掲げています。具体的には、デジタル教育や、博物館・古文書のデジタル化での協力を進めていく方針です。
7. G20腐敗防止行動計画の履行
中国は、G20の腐敗防止行動計画の実施を重視し、他の開発途上国と連携して、逃亡犯の送還や不正資産の回収、安全な避難先の否認(受け入れ拒否)、腐敗対策の能力構築などの分野で協力を強化するとしています。
8. 最貧国への高水準の対外開放
中国は、高い水準の対外開放を進める一環として、最も開発が遅れている国(LDC)に対する市場開放を一方的に拡大していく方針です。中国と外交関係を有するすべてのLDCからの輸入品について、関税分類上の全品目にゼロ関税の待遇を与える決定を明らかにしました。
G20リオサミットの場づくりとブラジルの役割
今回のG20第1セッションは、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領が議長を務めました。サミット開会前には、ブラジルが提唱する「グローバル飢餓・貧困撲滅連合」の発足式が行われ、習近平国家主席を含む各国の指導者が出席しました。
日本やアジアの読者にとっての意味
G20は、世界の主要な国と地域の指導者が集まり、経済や開発の方向性を議論する場です。そこにおいて、中国が「共通発展の公正な世界」を掲げ、グローバル・サウスを重視した8つの行動を示したことは、今後の国際協力の流れを考えるうえで一つの重要なシグナルと言えます。
特に、貧困削減、食料安全保障、気候変動、デジタル格差、腐敗防止といったテーマは、日本を含むアジアの国々にも直接・間接の影響を及ぼします。どのような形で具体的なプロジェクトやルールづくりに落とし込まれていくのか、今後の動きに注目が集まりそうです。
これからの注目ポイント
- 「グローバル飢餓・貧困撲滅連合」が実際の貧困削減や食料安全保障の現場でどのような役割を果たすのか
- グローバル・サウス研究センターやオープンサイエンスの枠組みを通じて、開発途上国の知識・技術へのアクセスがどう改善されるのか
- 一帯一路やデジタル・シルクロードのプロジェクトが、環境配慮や包摂性とどのように両立していくのか
- LDCへのゼロ関税措置が、貿易と産業発展にどのような影響を与えるのか
習近平国家主席は演説を、千里の道も一歩から、ということわざを引用して締めくくりました。中国は各国と共に、貧困を過去のものとし、「共通発展の公正な世界」というビジョンを現実にしていく歩みを進めていくとしています。
Reference(s):
cgtn.com








