G20リオサミットで習近平国家主席が語った「共通発展」と8つの行動
2024年11月18日にブラジル・リオデジャネイロで開かれた第19回G20サミット第1セッションで、中国の習近平国家主席が飢餓と貧困との闘いをテーマに演説し、公正で共通発展の世界をめざすビジョンと8つの具体的な行動を示しました。
本記事では、この国際ニュースのポイントを日本語で整理し、どんなメッセージが込められていたのかを読み解きます。
G20リオサミットで示された大きな問い
習近平国家主席は、世界では「百年に一度の大変革」が加速していると述べ、人類は前例のない機会と課題に直面していると指摘しました。富める者だけがより豊かになり、貧しい国や人が取り残される世界では、繁栄も安定も成り立たないという問題意識です。
そのうえで、世界を「運命共同体」としてとらえ、歴史に対する責任を担いながら、共通の発展を実現していくべきだと強調しました。
飢餓と貧困にどう向き合うか
今回のG20リオサミットは「公正な世界と持続可能な地球の構築」をテーマとし、その最優先課題として飢餓と貧困の克服を掲げました。新たに「飢餓と貧困に対するグローバル連合」を立ち上げる決定も打ち出されています。
習主席は、かつての杭州サミットで中国が初めて「開発」をG20のマクロ経済政策協調の中心に据え、持続可能な開発のための2030アジェンダの行動計画や、アフリカと後発開発途上国の工業化支援イニシアチブが採択された経緯を振り返りました。そして、杭州からリオまで、一貫して「共通発展のための公正な世界」を目指してきたと位置づけました。
習近平主席が示した4つの方向性
習主席は、公正で共通発展の世界を築くために、特に次の4点が重要だとしました。
- 貿易・投資・開発協力などへの資源配分を強化し、開発機関の役割を高めること。協力の「橋」を増やし、「小さな庭と高い塀」のような排他的な仕組みを減らすことで、より多くの開発途上国が近代化に向かえるようにする。
- 開発途上国が持続可能な生産やライフスタイルを採用できるよう支援し、気候変動、生物多様性の損失、環境汚染といった課題に適切に対応しながら、人と自然の調和を高めること。
- 開かれ、包摂的で、差別のない国際経済協力の環境を整えること。すべての国に利益をもたらす包摂的な経済のグローバル化を進め、新技術や新産業、デジタル・スマート・グリーンといった新しい発展分野を通じて、南北間の格差を縮小すること。
- 多国間主義を堅持し、国連を中心とする国際システム、国際法に支えられた国際秩序、国連憲章の目的と原則に基づく国際関係の基本原則を守ること。
中国の貧困削減の経験をアピール
習主席は、中国の発展は世界全体の共通発展の重要な一部だと述べ、中国が8億人を貧困から脱却させ、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダに掲げられた貧困削減目標を前倒しで達成したと紹介しました。
その背景として、中国が「人民中心」の発展理念を掲げ、「一つの貧しい地域や一人の貧しい人も取り残さない」と宣言してきたことを挙げます。村や世帯、個人ごとにきめ細かな対策を講じ、人材や資金、技術を後発地域に重点的に投入し、地域の実情に合わせた特色ある産業やインフラ整備を進め、豊かな地域とそうでない地域の支援協力を促進してきたと説明しました。
自身も村、県、市、省、中央とさまざまなレベルで貧困対策に携わってきたと振り返り、貧困削減は常に最優先課題であり、自ら必ずやり遂げると決意してきたと語りました。また、「弱い鳥でも早く飛び立てば高く飛べる」「水滴が岩を穿つ」といった比喩を用い、粘り強い努力が青写真を現実に変えるとのメッセージを発信しました。中国ができたのであれば、他の開発途上国にもできる──それが中国の貧困との闘いが世界に伝えるメッセージだと強調しています。
グローバル・サウスへの連帯と8つの行動
習主席は、中国は常にグローバル・サウスの一員であり、開発途上国の信頼できる長期的パートナーであり続けると述べました。「一輪の花では春にならない。百花が咲き誇ってこそ春になる」との言葉を引用し、各国が共に近代化へと歩むことの重要性を訴え、今後の「8つの行動」を提示しました。
- 1. 質の高い一帯一路協力の推進
7000億元の追加融資枠と800億元のシルクロード基金への追加拠出を基盤に、グリーンとデジタルを特徴とする多次元の連結性ネットワークを構築する。 - 2. グローバル発展イニシアチブの実施
すでに1100件を超える開発プロジェクトが動いていることを踏まえ、建設中のグローバル・サウス研究センターを実効性のあるものとし、200億ドル規模の開発資金を、貧困削減や食料安全保障、デジタル経済などの分野で活用する。 - 3. アフリカの発展支援
同年9月に開催された中国アフリカ協力フォーラム首脳会議で、今後3年間にわたりアフリカの近代化を共に進めるための10のパートナーシップ行動と、3600億元の金融支援を表明したことをあらためて示した。 - 4. 貧困削減と食料安全保障での国際協力
中国は新たに「飢餓と貧困に対するグローバル連合」に参加するとともに、G20が開発相会合を継続的に開催することを支持し、食品ロス・食品廃棄に関する国際会議のホストを続ける。 - 5. オープンサイエンスでの協力
ブラジル、南アフリカ、アフリカ連合とともに、グローバル・サウスが最新の科学技術やイノベーションによりよくアクセスできるよう、オープンサイエンス国際協力イニシアチブを提案する。 - 6. クリーンエネルギーやデジタル分野での実務協力
開発途上国へのクリーンエネルギー投資拡大のロードマップや、バイオエコノミーに関するハイレベル原則といったG20の成果を活用しつつ、北京に拠点を置くG20起業研究センターの活動を支援し、デジタル教育や博物館・古文書のデジタル化協力を進める。 - 7. 腐敗防止での協力強化
G20腐敗防止行動計画を実施し、逃亡犯の送還や不正資産の回収、安全な逃避先を与えない仕組みづくり、腐敗防止能力の強化などについて、開発途上国との協力を進める。 - 8. 後発開発途上国への市場開放
中国はハイスタンダードな対外開放を進め、後発開発途上国に対して一方的に市場アクセスを広げる方針を表明。外交関係を持つすべてのLDCからの輸入品に対し、関税番号ベースで100パーセントのゼロ関税を適用し、今から2030年までに他の開発途上国からの輸入額が総額8兆ドル規模に達する見通しだと述べました。
これから私たちは何を読み取るか
この演説は、飢餓と貧困という古くて新しい課題に対し、グローバル・サウス重視と多国間主義を軸にしたアプローチを示したものだと言えます。
今後、G20や国際機関の議論の中で、ここで示された8つの行動がどこまで具体化し、どのような形で各国の現場の取り組みにつながっていくのかが問われていきます。
習主席は最後に「千里の道も一歩から」という中国のことわざを引用し、一歩を踏み出すことの重要性を強調して演説を締めくくりました。飢餓と貧困を過去のものとし、公正な共通発展の世界をどのように築いていくのか──G20の場で示されたこの問いは、今も世界に投げかけられ続けています。
Reference(s):
Full text of Xi Jinping's speech at Session I of 19th G20 Summit
cgtn.com







