猛暑の極端現象で陸の炭素吸収力が低下 過去40年の研究が示すリスク
気候変動による猛暑などの「暖かい極端現象」が、森や草原、土壌など陸の生態系が二酸化炭素を吸収する力を弱めている可能性が示されました。最近、学術誌「Nature Ecology & Evolution」に掲載された研究論文が、過去40年にわたるデータからこの傾向を報告しています。
暖かすぎる極端現象が、なぜニュースになるのか
今回の国際ニュースの焦点は、気候変動に伴い増えている「暖かい極端現象」です。これは、通常よりも異常に高い気温が続く期間を指し、熱波や記録的猛暑として私たちの生活にも影響を与えています。
研究によると、こうした暖かい極端現象が起きている期間、地球の陸上生態系が大気中の二酸化炭素を吸収して貯蔵する能力、いわゆる炭素隔離(カーボンシンク)が「試されている(チャレンジを受けている)」状態になっているといいます。
陸の炭素吸収力を決める指標「NEE」とは
論文では、陸上生態系の炭素吸収力を見極める鍵として「NEE(純生態系交換)」という指標が使われています。NEEは、陸の生態系と大気の間で、二酸化炭素などの炭素がどれだけ出入りしているかを表す指標です。
研究によると、このNEEは次のような特徴を持つとされています。
- 陸上生態系がどの程度、炭素を吸収・貯蔵できるか(炭素隔離能力)を左右する重要な指標であること
- 気候変動の影響を強く受けること
- 年ごとの変動が大きく、安定した値ではないこと
つまり、NEEが揺れ動くということは、私たちが頼りにしている森や土壌の炭素吸収力もまた、気候条件によって大きく揺さぶられていることを意味します。
過去40年間で見えてきた「暖かい極端現象」の影
今回の研究は、過去40年分のデータを分析し、暖かい極端現象が発生している期間に、陸上生態系の炭素隔離能力がうまく機能しづらくなっていると指摘しています。
具体的には、
- 異常な高温が続く期間には、陸上生態系の炭素吸収が弱まりやすい
- その結果として、地球全体の炭素循環のバランスが揺らぎやすくなる
- こうした影響は、一年ごとのNEEの大きな変動として現れている
という構図が浮かび上がっています。気温上昇が進む中で、こうした暖かい極端現象は今後も増えると考えられており、そのたびに陸の炭素吸収機能が揺さぶられる可能性があります。
なぜ「年ごとのばらつき」が重要なのか
研究は、NEEが年ごとに大きく変動していることも強調しています。このばらつきは、次のような点で重要です。
- ある年は森林や土壌がよく炭素を吸収しても、猛暑の年にはその力が弱まる可能性がある
- 長期平均だけを見ると楽観的に見えても、極端な年には炭素吸収力が大きく低下しうる
- 国や地域が立てる気候変動対策の計画に、不確実性をもたらす要因になる
このため、陸上生態系を気候変動対策の一つの柱として位置づける際には、「いつも同じように炭素を吸収してくれるわけではない」という視点が欠かせなくなってきます。
気候変動対策への含意:森に頼りすぎていないか
今回の研究結果は、気候変動対策を考えるうえで、いくつかの示唆を与えています。
- 排出削減が依然として最優先であること
森や土壌などの炭素吸収源に期待を寄せる一方で、温室効果ガスそのものの排出を減らすことが引き続き不可欠であるという現実を改めて示しています。 - 陸上生態系の保全と管理の重要性
暖かい極端現象にさらされる中でも、できるだけ炭素吸収力を維持できるよう、森林や草地、土壌を健全な状態に保つ取り組みの重要性が増しています。 - 観測とデータのアップデートの必要性
NEEのような指標を継続的に追いかけることで、どの地域やどのタイプの生態系が極端な高温に弱いのかを把握し、対策に生かすことが求められます。
私たちがこれから考えたい3つの問い
今回の国際ニュースは、地球規模の話でありながら、私たち一人ひとりの暮らしともつながっています。記事を読み終えたあと、次のような問いを持ってみるのも有意義かもしれません。
- これからさらに暖かい極端現象が増えたとき、陸上生態系の炭素吸収力はどこまで持ちこたえられるのか
- 自分の住む地域や国の気候変動対策は、陸上生態系の不確実性をどこまで織り込んでいるのか
- 猛暑を「健康リスク」としてだけでなく、「地球の炭素循環を揺るがす現象」としても捉える視点を、どう社会全体で共有していくか
暖かい極端現象が、単なる暑さの問題ではなく、地球の炭素バランスを変えうる現象であることを示した今回の研究。私たちが「気候変動」と聞いて思い浮かべるイメージを、静かにアップデートする一歩と言えるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








