北京798芸術区で132体のレンガ彫刻 アンソニー・ゴームリーが問う都市と人間
北京の798芸術区で、英国人彫刻家アンソニー・ゴームリーの個展が開かれ、132体の等身大の赤いレンガ彫刻が一堂に並びました。中国・江蘇省宜興で作られた粘土レンガを用いたこれらの作品は、都市と人間の関係を静かに問いかける国際ニュースとしても注目したい展示です。
北京・798芸術区に並ぶ132体の「赤い人型」
今回の展示の中心となっているのは、ギャラリーの床一面に配置された132体の人型彫刻です。素材は、江蘇省宜興で焼かれた赤いクレイ(粘土)レンガ。人の背丈と同じスケールで作られており、見る側は「人の気配」と「建材としてのレンガ」が重なった、不思議な存在感を受け取ることになります。
彫刻はすべてレンガを積み上げて構成されており、なめらかな人体の曲線ではなく、角ばったブロックの組み合わせとして立ち上がっています。人間の形をしながらも、どこか建物の一部のようにも見える点が、この展示の大きな特徴です。
- 会場:北京の798芸術区
- 作家:英国人彫刻家 アンソニー・ゴームリー
- 作品数:等身大の人型彫刻 132体
- 素材:中国・江蘇省宜興の赤い粘土レンガ
「無限の配置」を感じさせるレンガの構造
これらの人型は、同じ形のレンガではなく、大きさの異なるレンガを組み合わせて作られています。そのため、理論上は無数の組み合わせがあり得る構造になっており、「今、目の前にある配置は、無限にあり得る姿のうちの一つ」にすぎないという感覚を呼び起こします。
ギャラリーの床に広がる人型の群れは、ひとつひとつが独立して立ちながらも、互いに関係し合う「配置」として存在しています。どこにどのように置かれるかによって、作品全体の印象が変わり得ることを示し、「形」だけでなく「場」そのものが作品の一部になっていると言えます。
物語を持たない人型が語りかけるもの
興味深いのは、これらの人型には、明確なストーリーやキャラクター設定が与えられていない点です。特定の歴史上の人物でもなく、具体的な出来事を再現しているわけでもありません。それでも、観る側にはさまざまなイメージが立ち上がってきます。
展示は、「荒涼」と「都市建築」のあいだにある対話を思わせるものだとされています。無機質なレンガで形作られた人型たちは、ビル群や住宅街の中で暮らす私たち自身の姿を連想させます。人が建物の中で生活を営む一方で、都市のスケールや構造がときに人を圧倒し、孤立させることもある――そのような感覚を呼び起こす作品です。
都市に生きる「身体」と「建築」のあいだ
人型でありながら、素材も構造も建築に近い。こうした二重性は、私たちの身体と都市空間が切り離せない関係にあることを示しているようにも見えます。レンガという、もともとは壁や建物を作るための単位が、ここでは「人」の形を取ることで、「建物をつくる材料としてのレンガ」と「社会を形づくる個人」との重なりを浮かび上がらせています。
物語をあえて持たないことで、作品は観る人の経験や記憶を引き出す器のような役割を果たします。ある人には工事が止まった建設現場のように見え、別の人には整然と並ぶ都市の住人のようにも見えるかもしれません。その意味で、この展示は「答えを示す作品」というより、「問いを投げかける空間」として受け止めることができます。
国際ニュースとしての視点:北京で出会う英国の彫刻
英国人彫刻家アンソニー・ゴームリーの個展が、北京の798芸術区で開かれているという事実そのものが、国際ニュースとしても興味深い点です。異なる文化圏で育まれた作家の視点が、中国の都市空間を背景に提示されることで、「都市」「建築」「人間」という普遍的なテーマが、あらためて別の角度から照らし出されます。
とくに、レンガという身近な建材を通じて、生命と都市、個人と社会の関係を見つめ直そうとする試みは、国や地域を問わず共有し得る問いです。北京の798芸術区から発信されたこの展示は、2025年の今を生きる私たちに、「都市に住むとはどういうことか」「建てられた環境が人の心や身体にどんな影響を与えているのか」を静かに考えさせます。
考えるためのアートとして
スマートフォンで画像を流し見るだけでは伝わりにくいのが、この展示のような立体作品の面白さです。132体という数の「多さ」、等身大という「身体感覚」、レンガという「重さ」を想像するだけでも、画面越しの情報とは違う実在感を感じられます。
国際ニュースとしてこの展示を見るとき、ポイントになりそうなのは次のような視点です。
- 人型でありながら、どこか建物のようにも見える造形
- 物語を持たないからこそ、観る人の経験によって意味が変わる余白
- 都市と人間、建築と身体の境界があいまいになる感覚
北京の798芸術区で展開されるアンソニー・ゴームリーのレンガ彫刻は、「読みやすいのに考えさせられる」国際アートニュースの一例と言えます。都市で暮らす自分自身の姿を重ねながら、この132体の人型が投げかける問いを、ゆっくり味わってみたくなる展示です。
Reference(s):
Life-sized clay figures redefine art in Beijing's 798 Art District
cgtn.com








