中国・陝西の土の彫刻家 崔海海 粘土でよみがえる1970~80年代の農村 video poster
中国北西部・陝西省で、土の彫刻家・崔海海(Cui Haihai)さんが、20年以上にわたって自分の子ども時代の記憶を形にし続けています。1970~80年代の農村の日常を粘土で再現するその作品は、地域の暮らしと文化の「記憶装置」としても位置づけられます。
陝西省の農村から生まれた「土の記憶」
崔海海さんが暮らすのは、北西部の陝西省にある農村地域です。豊かな自然に囲まれた村で育った幼少期の体験が、現在の作品づくりの原点になっています。自身の記憶をもとに、1970~80年代の農村生活を粘土で「もう一度」生き直すようにして表現しているのです。
1970~80年代の農村を粘土でよみがえらせる
崔さんの作品に登場するのは、当時の農村で繰り広げられたさまざまな場面です。秋の収穫期、脱穀場で忙しく働く人々の姿や、村全体が祝福ムードに包まれる結婚式の場面などが、細やかな表情やしぐさとともに表現されています。
そこには、単に「昔はこうだった」という懐古だけでなく、共同体の喜びや支え合いの感覚が立ち上がってきます。作品を眺めることで、土のにおいやざわめきまで伝わってくるようだと感じる人も多いでしょう。
土を「生きた人物」に変える技
素朴に見える粘土の人形も、完成までには丹念な工程が重ねられています。崔さんは次のような手順で作品を生み出しています。
- 赤い糊土(のりど)を数カ月かけて発酵させ、作品づくりに適した状態にする
- 完成後にひび割れが生じないよう、人物像の内部を空洞にして成形する
- 実際の人々の表情や動きを観察し、その細かなニュアンスを作品に反映させる
こうしてつくられた粘土の人物たちは、単なる像ではなく、笑い声や息づかいまで聞こえてきそうな「生きた存在」として、見る人の目の前に現れます。
文化の「魂」を未来へ残す
崔さんにとって、粘土の彫刻は趣味や仕事という枠を超えたものです。自分が作り続けている作品は、未来の世代にとって意味のある「文化の記録」になると考えています。
「自分の時代に、農村の生活をこうして作品に残した人がいたと、いつか誰かが気づいてくれたらうれしい」。そんな思いで、日々の制作を続けているといいます。作品は、後に続く世代に向けた貴重な記念碑にもなっていくでしょう。
子どもたちと分かち合う、土の楽しさ
制作の合間や自由時間には、崔さんは子どもたちに粘土の扱い方や造形の基本を教えています。子どもたちが見せる自由な発想や大胆な作品に、驚かされることも多いそうです。
崔さんは、この工芸が学校教育の場にも広がっていくことを望んでいます。教室で粘土に触れながら地域の文化や歴史を学ぶことができれば、技も記憶も自然に次の世代へと受け継がれていくからです。
私たちの暮らしをどう記録していくか
崔海海さんの取り組みは、特別な芸術家だけの話ではありません。自分が見てきた風景や日常の手ざわりを、何らかの形で残そうとする試みは、どの地域に暮らす人にとってもヒントになるものです。
写真や文章、音声、手仕事の作品など、手段は違っても、日々の暮らしを記録することは、未来の誰かにとっての大切な手がかりになります。粘土で農村の記憶を形にする崔さんの作品は、私たち自身の周りにある「残したい風景」は何かを静かに問いかけているように見えます。
Reference(s):
cgtn.com








