職業教育はなぜ今重要なのか? 天津の国際会議が示した課題と可能性 video poster
熟練した人材が不足するなか、職業教育の重要性と偏見の課題があらためて浮き彫りになっています。中国・天津市で昨年開かれた国際会議で、教育専門家や学生が職業教育の価値を語りました。
職業教育が「人手不足の時代」の鍵に
CGTNのインタビューに応じた専門家たちは、現在の経済において職業教育が欠かせない存在になっていると指摘しました。多くの国で技能労働者が不足するなか、実務的なスキルを育てる職業教育は、労働市場を支える重要な仕組みだとされています。
天津で開かれた世界職業教育会議
インタビューが行われたのは、中国の天津市(Tianjin Municipality)で開かれた「2024年世界職業教育・技術教育発展大会(World Vocational and Technical Education Development Conference)」の場でした。世界各地から参加者が集まり、職業教育の現状と今後について議論しました。
「だれにでも開かれたチャンス」と語る専門家
英国の教育機関NPTC Group of Collegesで世界展開を担当するジェームズ・ルウェリン氏は、CGTNの取材に対し、職業教育が持つ包摂性を強調しました。ルウェリン氏は、技術・職業教育は多様な背景を持つ人びとに機会を提供するものであり、進学やキャリアの選択肢を広げる役割を果たすと指摘しました。
なお根強い「普通教育より下」という偏見
一方で、会議の参加者や学生たちは、多くの社会で職業教育が一般的な学校教育よりも格下だと見なされがちな現状も認めています。親や周囲から「大学進学がいちばん」という価値観が強い場合、職業教育を選ぶことにためらいを感じる若者も少なくありません。
こうした偏見は、技能を重視する産業界のニーズと、教育に対する社会のイメージとの間にギャップを生みます。参加者たちは、このギャップを埋めるためには、職業教育で身につくスキルや、その後のキャリアの可能性を分かりやすく伝えていく必要があると強調しました。
経済にとっての職業教育の意味
職業教育は、学生に実践的で「手を動かす」スキルを提供し、個人の就業機会を広げるだけでなく、経済全体の生産性向上にもつながるとされています。今回の議論でも、職業教育が個人と社会の双方に「見える利益」をもたらす点があらためて確認されました。
国際機関の共同研究が示す背景
世界銀行、国際労働機関(ILO)、国連教育科学文化機関(ユネスコ)が2022年に行った共同研究によれば、技術・職業教育の質を高める必要性は一段と大きくなっているとされています。報告書は、労働市場が急速に変化するなかで、人びとがスムーズに仕事を移行できるようにするには、よく機能する職業教育制度が欠かせないと指摘しました。
その背景として、報告書は次のような要因を挙げています。
- グローバル化の進展による産業構造の変化
- デジタル技術をはじめとする技術革新
- 少子高齢化など人口構造の変化
- 脱炭素など気候変動への対応
これらの要因が重なることで、働く人びとがキャリアの途中で新たなスキルを身につける必要性が高まり、職業教育の役割もより重要になっているとされています。
これから問われる「職業教育の位置づけ」
天津での議論は、職業教育が人手不足や産業構造の変化に応える鍵であると同時に、いまだに偏見と向き合わざるをえない現実も映し出しました。今後、教育政策を考えるうえでは、学術中心の教育と職業教育を対立させるのではなく、どのように補完し合う仕組みをつくるかが問われていきます。
親や学生、企業、そして教育現場が、職業教育の価値をどう認識し直すのか。その問いは、中国・天津だけでなく、多くの国や地域で共有される課題でもあります。読者のみなさん自身のキャリア観や、身近な進路選択の場面にも、今回の議論を重ね合わせて考えてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
Experts, students emphasize importance of vocational education
cgtn.com








