中国の「低空経済」が本格離陸へ eVTOL実証と2024年の転機 video poster
2024年に「低空経済の年」とも呼ばれた中国で、低い高度の空域を活用する新しい産業が本格的な成長期を迎えつつあります。2025年の今、この国際ニュースの背景と今後のポイントを整理します。
中国の低空経済とは何か
中国本土(中国)で注目されている「低空経済」とは、おおむね地表から数百メートル程度までの低い空域を使った経済活動全体を指します。具体的には、次のような分野が含まれます。
- 電動で垂直離着陸できる新しい航空機 eVTOL を使ったエアタクシーやシャトルサービス
- ドローンによる宅配やインフラ点検、農業支援
- 小型飛行機やヘリコプターなどの一般航空を活用した観光やビジネス移動
これらを一体の「経済」として位置付け、政策や投資を集中させることで、新しい産業クラスターを育てようという狙いがあります。
2024年11月、6都市で eVTOL 実証計画を発表
2024年11月18日、中国の航空当局は、6つの都市で eVTOL の実証プロジェクトを始める計画を公表しました。電動の垂直離着陸機である eVTOL は、都市部の渋滞を避けて人や荷物を運ぶ新しい移動手段として、世界的に開発競争が進んでいます。
今回の実証プロジェクトは、次のような点で注目されています。
- 複数都市で同時に試験運用を行い、さまざまな都市構造やニーズに対応できるかを検証すること
- 安全基準や運航ルールなど、制度面の枠組みづくりを現場の運用と並行して進めること
- 将来の商用サービスを見据え、インフラ整備やビジネスモデルの検証も行うこと
「空飛ぶクルマ」とも呼ばれる eVTOL を日常の移動手段の一つにするために、実証段階から政策と産業が一体となって動き始めていることが分かります。
政府の仕事報告に明記、「低空経済の年」と呼ばれた2024年
低空経済が本格的に注目されるきっかけとなったのが、政府の仕事報告(政府の重点方針を示す文書)に「低空経済」が正式に盛り込まれたことです。これにより、低空経済は単なる産業トレンドではなく、国家レベルの重点分野として位置付けられました。
産業界の専門家は、こうした政策の後押しと相次ぐ実証プロジェクトを受けて、2024年を「低空経済の年」と呼んでいます。行政の支援、企業の投資、技術開発が同時並行で進んだことで、低空経済のエコシステムづくりが一気に加速した一年だったと言えます。
Airshow China で語られた一般航空の役割
2024年に開かれた中国の国際航空ショー Airshow China でも、低空経済は大きなテーマの一つになりました。国際メディア CGTN の趙晨晨記者は会場で、中国航空学会の専門家に話を聞き、低空経済の成長における一般航空の重要性が改めて浮き彫りになりました。
専門家たちは、おおむね次のような点を指摘しました。
- 小型機やヘリコプターなどの一般航空は、低空経済の実務を担う「足回り」として不可欠であること
- パイロットや整備士、運航管理など、人的リソースの育成が産業成長のボトルネックになり得ること
- 観光、救急搬送、防災など、公共性の高い用途を通じて社会にメリットを示すことが、市民の理解と受け入れにつながること
単に新技術を導入するだけではなく、既存の一般航空と組み合わせながら、現実的なサービスとして社会に根付かせていく視点が示されています。
私たちの生活はどう変わるのか
低空経済が本格的に広がると、どのような変化が起きるのでしょうか。想定されるシナリオを三つに整理してみます。
1. 都市部の移動の選択肢が増える
都市の中心部と空港、主要なビジネス街や新興開発エリアを結ぶエアタクシーやシャトル便が実用化されれば、移動時間の短縮だけでなく、都市の構造そのものにも影響を与える可能性があります。
2. 地方・観光地のアクセスが改善
鉄道や道路での移動が不便な地域でも、小型機や eVTOL を組み合わせることで、観光やビジネスの往来がしやすくなります。これにより、地方に新しい投資や雇用が生まれることも期待されます。
3. 防災・医療などの公共サービスが高度化
災害時の物資輸送や被災状況の把握、遠隔地への救急搬送など、低空を活用した公共サービスは、人命を守るインフラとしての重要性を増しています。ドローンや eVTOL を防災計画に組み込む動きも強まっていくとみられます。
安全・インフラ・受容性という三つの課題
一方で、低空経済の拡大には課題もあります。
- 多数のドローンや eVTOL が飛び交う空域で、どのように衝突を防ぎ、安全を確保するか
- 離着陸場、充電設備、管制システムなど、インフラ整備をどのような優先順位で進めるか
- 騒音やプライバシー、上空を飛ぶ機体への心理的な抵抗など、市民の懸念にどう向き合うか
これらの課題を技術だけでなく、法律、行政、ビジネス、そして市民対話を通じて解いていけるかどうかが、低空経済の持続的な発展を左右します。
日本とアジアへの示唆
2024年に低空経済を国家レベルの重点分野として位置付け、eVTOL の実証プロジェクトを進めている中国の動きは、アジアの他の国や地域にとっても参考になります。
人口が集中する大都市圏を抱え、災害リスクも高い日本にとって、低空をどう社会インフラとして活用するかは、決して他人事ではありません。交通、物流、防災を一体で考えるうえで、中国の取り組みを「先行事例」として観察する価値は大きいと言えるでしょう。
2025年の今後、低空経済は技術の話から、都市計画や地域づくり、国際協力を含むより広いテーマへと発展していく可能性があります。新しい空の産業がどのように形をとっていくのか、引き続き注視していく必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com







