中国が衛星データの「オープンクラウド」公開 農業や防災で活用進む
中国が、リモートセンシング衛星データなどの宇宙情報を一般向けに提供するクラウド基盤「GEOVIS Cloud Open Platform」を立ち上げました。衛星データの「オープン化」が進むことで、農業、防災、都市計画など幅広い分野での活用が期待される国際ニュースです。
中国が公開クラウド「GEOVIS Cloud」を立ち上げ
今回発表された「GEOVIS Cloud Open Platform」は、リモートセンシングデータを含む各種の宇宙情報サービスを、一般の利用者向けにクラウド上で提供するオープンプラットフォームです。衛星で観測した地表や大気の情報などを、オンラインでまとめて扱えるようにしたものとされています。
これにより、従来は専門機関や限られた企業が扱うことが多かった宇宙データが、より広いユーザーに届く形になります。データそのものだけでなく、アプリケーションサービスとして提供される点が特徴です。
スマート農業から防災まで、想定される活用分野
中国の新しいクラウドプラットフォームは、スマート農業、環境保護、都市計画、交通監視、自然災害の早期警戒など、多様な分野での活用が見込まれています。具体的には、次のような使い方が想定されています。
- スマート農業:衛星から作物の生育状況や土壌の水分などを把握し、施肥や灌漑のタイミングを最適化することで、生産性向上や資源の節約につなげる。
- 環境保護:森林の減少、水質の変化、大気汚染の広がりなどを広域に監視し、環境政策の立案や評価に役立てる。
- 都市計画:都市の拡大や土地利用の変化を衛星画像から追跡し、道路や公共交通、緑地の配置など、将来の都市づくりに反映する。
- 交通監視:道路や港湾、空港周辺の状況を把握し、物流や交通の効率的な運行管理に生かす。
- 自然災害の早期警戒:豪雨や洪水、土砂災害の兆候、海洋の異常などを衛星から観測し、早期警戒や避難判断の材料とする。
こうした分野では、広い範囲を同時に、繰り返し観測できるリモートセンシング衛星の特性が生かされます。クラウド基盤として提供されることで、行政や企業、研究機関などが同じ土台を共有しやすくなる点も重要です。
宇宙データの「敷居」を下げる試み
今回のプラットフォームには、「宇宙データへのアクセスの敷居を下げる」という狙いもあります。リモートセンシングデータは、専門的な解析や処理が必要になることが多く、これまでは扱える人や組織が限られがちでした。
「GEOVIS Cloud Open Platform」では、植生の状態、水資源、土壌、大気といった主要なパラメーターについて、あらかじめ加工・解析されたリモートセンシング製品が用意されたとされています。利用者は生データを一から処理するのではなく、指標やマップなど、用途にすぐ使える形で情報を扱えるようになります。
その結果、地方政府や企業、研究者に加えて、スタートアップや教育現場など、これまで宇宙分野と距離のあったプレーヤーも宇宙情報サービスにアクセスしやすくなる可能性があります。
背景にある中国のリモートセンシング衛星網の拡大
中国は近年、リモートセンシング衛星の打ち上げ数を増やし、高解像度の地球観測システムなど、観測手法の高度化を進めてきました。それに伴い、リモートセンシングデータの取得能力や、利用できる資源の豊富さも大きく向上したとされています。
陸域観測衛星、気象衛星、海洋観測衛星などで構成される地球観測システムが整備され、中国のリモートセンシング衛星は数と質の両面で、世界的に見ても先進的な水準に達したとされています。
2022年末時点のデータによると、中国が軌道上で運用する民生用リモートセンシング衛星は294基に達し、そのうち189基が商業衛星で、全体の6割以上を占めています。商業リモートセンシング衛星が、中国の民生用リモートセンシング衛星の主力となっている構図が見て取れます。
こうした衛星網の拡大と高度化が、今回のようなクラウドプラットフォームの基盤になっていると言えます。
国際ニュースとして見る「オープン化」の流れ
リモートセンシング衛星技術は、「空間と時間をまたいで広範囲を観測できる」「高い精度で情報を取得できる」という特性から、多くの産業を支えるインフラの役割を果たしつつあります。今回のように、衛星データをオープンなクラウド基盤として提供する動きは、そのインフラをさらに多様な主体が利用できるようにする試みと捉えられます。
宇宙データの公開や共有が進むことで、新しいサービスやビジネスが生まれる一方、各国・各地域の間で、宇宙インフラやデータ活用をめぐる競争や協力のあり方も変化していきます。防災や気候変動への対応など、国境を越えて共有が求められるテーマにおいては、こうしたプラットフォームがどのように役割を果たしていくかも注目点です。
私たちの生活との接点—身近なサービスの裏側にある宇宙
今回のニュースは中国国内のクラウド基盤に関するものですが、衛星データをクラウド経由で共有し、行政・企業・研究者が共通の基盤として使う流れは、世界全体で広がりつつあります。日本の読者にとっても、今後の国際ニュースを読み解くうえで重要な視点になりそうです。
天気予報、地図アプリ、位置情報サービス、農業支援など、私たちの日常生活の裏側には、すでに多くの衛星データが使われています。衛星データのオープン化やクラウド化が進めば、こうした身近なサービスの質やバリエーションがさらに変化していく可能性があります。
国際ニュースに触れるとき、「宇宙インフラとしての衛星データが、どのように公開され、誰がどのように活用するのか」という視点を持つことで、技術・経済・社会の動きをより立体的にとらえることができそうです。
Reference(s):
China launches cloud platform to share remote-sensing achievements
cgtn.com







