AIが肺がん検診を変える:中国で進む医療イノベーションと女性喫煙の課題 video poster
AI技術を活用した肺がん検診が、中国で実用段階に近づいています。世界で最も多くの命を奪うがんに対し、医療の現場では何が変わろうとしているのでしょうか。
肺がん検診にAIが「相性が良い」理由
北京の国家呼吸医学センターの主任を務める賀建奚(He Jianxing)医師は、インタビューで、人工知能(AI)は肺がんのスクリーニングに大きな可能性を持つと強調しました。
肺がん検診では、多数の画像を確認し、小さな変化を見落とさないようにする必要があります。こうした作業は反復的で時間もかかるため、AIが得意とする分野です。賀医師は、AIがこれらの反復作業を担うことで、医師はより高度な診断や治療方針の決定に集中できると指摘しました。
さらに、技術の進歩により、AIを使って肺機能の評価や腫瘍の悪性度の分析を行うことも視野に入っているといいます。
「医師はテクノロジーを統合する役割に」
一方で、現時点でAIが医師を置き換えることはないとも強調されました。ビッグデータの時代において、医師は異なる分野の技術を統合し、患者一人ひとりに最適な医療を組み立てる役割を担うべきだとされています。AIはそのための強力なサポート役であり、医師の仕事の質を高めるためのツールと位置付けられています。
病理診断を支える大規模モデル「PathOrchestra」
中国では、医療分野でのAI活用が着実に広がっています。2024年7月には、空軍軍医大学と清華大学、AIソフトウェア企業のセンスタイムが共同で、大規模病理モデル「PathOrchestra」を発表しました。
このモデルは、乳房や肝臓、肺を含む20を超える臓器の病理画像を解析できると報じられています。病理診断は、専門医の不足や地域格差が指摘される分野でもあり、AIの導入によって診断のスピードや均てん化が期待されています。
世界で最も命を奪うがん、肺がん
肺がんは、世界で最も多くの人が亡くなるがんとして知られています。国際がん研究機関によると、2022年には世界で約250万人が肺がんと診断され、180万人以上が亡くなりました。
中国国家衛生健康委員会のデータでは、中国だけでも2022年に約106万件の新たな肺がん症例が報告されています。人口規模が大きいだけに、早期発見と治療体制の整備は、中国だけでなく世界のがん対策にも大きな意味を持ちます。
毎年11月は、2001年に設立されたグローバル・ラング・キャンサー・コアリションが提唱する肺がん啓発月間です。今回紹介した議論も、2024年11月24日に北京で開かれた中国癌症基金会(CFC)の設立40周年記念会合の場で行われました。
女性で広がる喫煙と肺がんリスク
会合では、特に女性の肺がんが増加傾向にあることへの懸念も示されました。中国医学科学院と北京協和医学院人口医学・公衆衛生学院の喬友林(Qiao Youlin)教授は、かつては中国の女性に喫煙習慣はあまり見られなかったものの、近年は喫煙を「ファッション」と捉える女性が増えていると指摘しました。
2020年の統計によると、中国本土の男性では過去10年間で喫煙率が14.5ポイント低下した一方、女性の喫煙率は1.5%から3.3%へと上昇しました。喫煙率が依然として高い国・地域において、こうした動きは将来の肺がん患者数に影響を与える可能性があります。
会合では、たばこ規制の強化や、肺がんの早期スクリーニング体制の充実など、予防と早期発見をどう両立させるかが議論されました。
40年続くがん患者支援の取り組み
1984年に設立された中国癌症基金会は、この40年で患者支援プログラムや国際交流、子宮頸がん対策、経済的に厳しい患者への薬剤支援、がん患者の子どもへの教育支援など、多様な事業を進めてきたと報告しています。
AI技術の活用も、こうした長年の取り組みの延長線上にあります。単なる「最新テクノロジー」ではなく、患者の生活や家族の状況までを視野に入れた総合的ながん対策の一部として位置付けられていることがうかがえます。
日本の読者への問いかけ:AIと医療の役割分担
今回の動きは、日本の医療や私たちの暮らしにとっても無関係ではありません。高齢化が進み、医療現場の負担が増すなかで、AIがどこまで診療を支え、どこから先を人間の医師が担うべきかという議論は、共通するテーマといえます。
肺がんのように、早期発見が生存率に直結する病気では、検診やスクリーニングの受診行動が重要です。その裏側で、膨大な画像やデータをAIが支え、医師がより深い対話と判断に時間を割く──。そうした医療の姿を、私たちはどこまで受け入れ、どう信頼していくのか。中国の事例は、そのことを考えるきっかけを与えてくれます。
Reference(s):
cgtn.com








