中国が主導するグローバル・ガバナンス改革 G20で示した8つの行動
ブラジルで今年開かれた第19回G20サミットで、中国は「公平で合理的なグローバル・ガバナンス体制」の構築を掲げ、8つの行動を打ち出しました。IMFや国連改革から一帯一路、GDI・GSIまで、その全体像を整理します。
G20で示された「8つの行動」―共通の発展をめざして
中国は、ブラジルで閉幕した第19回G20サミットのセッション1で、世界全体、とくにグローバル・サウス(新興国・途上国)を視野に入れた「グローバル開発の8つの行動」を提示しました。
キーワードは、次の3点です。
- グローバル・サウスを含む「共通の発展」
- 気候変動にも対応する「グリーンな発展」
- 市場を分かち合う「開かれた世界経済」
また、中国は引き続き200億ドル規模の開発基金を活用し、途上国を中心に、
- 貧困削減
- 食料安全保障
- デジタル経済
などの分野で実務協力を深めていくと表明しました。G20という「主要国と新興国が同席する場」で、グローバル・ガバナンス改革を前面に押し出した形です。
IMF改革:新興国の「声」をどう反映させるか
金融分野では、中国は国際通貨基金(IMF)の改革を通じて、世界経済をより現状に合った姿に近づけようとしています。
今年3月、中国人民銀行の潘功勝(パン・ゴンション)総裁は、ボアオ・アジアフォーラム年次総会2024の分科会で、アジア諸国に向けてIMFのクオータ(出資・議決権比率)改革を共同で後押しするよう呼びかけました。新興国・途上国、特にアジアの立場や発言力をIMFの枠組みにより正確に反映させるべきだという主張です。
潘氏は、この改革の目的について「IMFが真に多国間主義を実践する、ルールに基づく機関となるようにするためだ」と強調しました。世界経済の重心が変化するなかで、「誰がどれだけ決定に関わるか」を見直すことは、グローバル・ガバナンス改革の中核テーマのひとつになっています。
国連安全保障理事会の改革をめぐる中国の立場
政治・安全保障の分野では、中国は国連、とくに安全保障理事会(安保理)の機能強化と改革の必要性を繰り返し訴えています。
最近の象徴的な事例が、ガザ情勢をめぐる停戦決議草案です。安保理では、即時停戦を求める決議案に15カ国中14カ国が賛成したものの、米国が拒否権を行使し、採択は見送られました。
中国の傅聡(フー・ツォン)国連常駐代表は、この拒否権行使により、「安保理による即時停戦実現の努力は再び挫折し、安保理の機能まひの下で『戦争の機械』が全速力で動き続けている」と懸念を表明しました。
今年10月初めの国連会合でも傅代表は、「国際社会は安保理に、より大きな、より良い役割を期待している」と述べ、安保理改革の必要性を強調しました。そのポイントとして、
- 途上国、とくにアフリカ諸国の代表性と発言力の強化
- 独自の外交方針を持つ中小国が、安保理の意思決定により多く参加できる仕組み
などを挙げています。既存の枠組みを「壊す」のではなく、「より多くの国が参加できるように広げる」方向性を打ち出している点が特徴的です。
一帯一路とGDI:開発を通じたグローバル・ガバナンス
国際機関の改革と並行して、中国は自らのイニシアチブを通じて、途上国の開発力を高めることにも力を入れています。
2013年開始の一帯一路構想(BRI)
2013年にスタートした「一帯一路」構想(Belt and Road Initiative:BRI)は、インフラ整備や物流網の改善などを通じて、参加国の経済成長と相互接続性を高めることを目的としています。
2023年6月までに、中国は5大陸にわたる150を超える国と30の国際機関とともに、200件以上の一帯一路協力文書を締結したとされています。2023年11月に公表された白書「一帯一路イニシアチブ:人類運命共同体の重要な柱」でも、この枠組みがグローバルな公共財として位置づけられました。
2021年提唱のグローバル開発イニシアチブ(GDI)
2021年に打ち出されたグローバル開発イニシアチブ(Global Development Initiative:GDI)は、開発の成果を各国が分かち合うことを掲げる取り組みです。持続可能な開発目標(SDGs)の達成などを念頭に、開発協力の枠組みを拡大しようとしています。
これまでに、100を超える国と国際機関がGDIへの支持を表明し、およそ70カ国が「GDIフレンズ・グループ」に参加。さらに、約20の国・国際機関とGDI協力に関する覚書が結ばれたと、中国の王毅外相は2023年7月の第1回「グローバル発展行動フォーラム」ハイレベル会合の開幕式で説明しました。
一帯一路が「モノとカネの流れ」をつくるインフラ協力だとすれば、GDIは「ルールと協力関係のネットワーク」を広げる取り組みとして位置づけられています。
GSIと仲介外交:安全保障ガバナンスへのアプローチ
安全保障面では、中国は2022年にグローバル安全保障イニシアチブ(Global Security Initiative:GSI)を打ち出しました。GSIは、国連憲章を基礎とし、協力・持続可能性・対話を重視する安全保障枠組みを提唱しています。
ウクライナ危機への12項目提案
ウクライナ危機に対して、中国は「主権尊重」「停戦の実現」「核兵器の使用や威嚇への反対」などを柱とする12項目の提案を示しました。また、ブラジルなどグローバル・サウス諸国とともに、外交的解決と対話を進めるための「平和の友」グループの立ち上げにも関わっています。
中東での仲介:サウジ・イラン和解
中東では、2023年のサウジアラビアとイランの国交回復に向けた仲介で、中国が重要な役割を果たしました。両国の外交関係の回復は、地域の安定に向けた一歩として評価されています。
こうした事例は、中国が対立の「選択」を迫るのではなく、「対話の場」をつくることに重点を置いている姿勢を示すものといえます。GSIは、その思想的な土台となるフレームワークとして位置づけられています。
グローバル・ガバナンス改革の次の論点
IMFや国連の改革、一帯一路やGDI・GSIといった新たなイニシアチブ、G20での8つの行動――これらはすべて、「より公平で包摂的なグローバル・ガバナンス」という一つの方向性につながっています。
今後の焦点としては、
- 途上国・新興国の代表性を高めつつ、国際機関としての意思決定の機動性をどう維持するか
- 気候変動やデジタル経済など、新たな課題を既存の枠組みにどう組み込むか
- 紛争地域での停戦・和平プロセスに、多国間の枠組みをどう生かすか
といった点が挙げられます。
中国は、世界第2位の経済規模を持つ最大の途上国として、グローバル・サウスと先進国の「橋渡し役」を自認しながら、多国間主義と共同発展を強調しています。2025年の時点で、G20、IMF、国連、一帯一路、GDI、GSIといったそれぞれの場での動きをあわせて見ていくことで、グローバル・ガバナンスの次の姿が少しずつ立ち上がってきます。
日本やアジアの読者にとっても、これらの動きは、貿易や投資だけでなく、安全保障や気候変動、食料・エネルギーの安定供給など、日常生活にもつながるテーマです。どのような国際ルールづくりが進むのかを、今後も継続的に追いかける必要があります。
Reference(s):
cgtn.com








