中国南水北調プロジェクト10年 北部へ765億立方メートル送水の意味
中国の大規模な水利インフラである南水北調プロジェクトが、南部の豊かな水を北部の乾燥した地域へ送り続けています。東線と中線の2ルートだけで、これまでに累計765億立方メートルの水が送水され、1億8500万人超の人びとと45の大中都市の水供給を支えていることが明らかになりました。2025年には運用開始から10周年を迎え、関連する水利投資も加速しています。
南水北調プロジェクトとは
南水北調プロジェクトは、その名の通り、中国南部の水資源を北部へと導水する国家的なプロジェクトです。現在は東線と中線の2つのルートが運用されており、将来的には西線も加わる計画です。
中でも中線は最も注目されるルートで、中国中部の湖北省にある丹江口ダムを起点に、河南省と河北省を経由して北京や天津へと水を届けています。東線は江蘇省から取水し、天津や山東省などの地域へと送水しています。
765億立方メートルがもたらしたインパクト
今回示されたデータによると、東線と中線を合わせた送水量は累計765億立方メートルに達しました。この水は、主に水不足に悩む中国北部地域の生活用水や産業用水として活用されています。
恩恵を受けているのは、1億8500万人を超える人びとと、沿線に位置する45の大中都市です。都市部の安定した水供給は、日常生活の安心だけでなく、工場やサービス産業など経済活動の基盤にもなります。
水を南から北へ物理的に運ぶという発想にはさまざまな議論がつきまといますが、少なくとも現時点では、このプロジェクトが中国北部の水ストレスを和らげる重要な役割を果たしていることが数字からうかがえます。
運用10周年、次のフェーズへ
南水北調プロジェクトは、2025年に運用開始から10周年を迎えました。節目の年となる今年、全国の水利システムと同プロジェクトの高品質な発展をテーマにしたフォーラムが開かれ、その場で最新の進捗が共有されています。
南水北調プロジェクトを担う企業の王安南董事長によると、中線の後続プロジェクトは順調に進んでおり、東線でも後続プロジェクトが進行中です。また、西線ルートに向けた事前の準備作業も進展しているとされています。
つまり、これまでの10年で築かれた基盤の上に、さらなる能力増強やルート拡張が計画されている段階に入ったと言えます。今後、送水量や供給エリアがどこまで広がるのかが注目されます。
水利投資1兆900億元超、何を意味するか
中国では、南水北調プロジェクトだけでなく、水利インフラ全体への投資も拡大しています。2025年の最初の10カ月間だけで、水利プロジェクトへの投資額は1兆900億元に近づき、前年同期比で11.7パーセント増加しました。米ドル換算でも1500億ドルを超える規模とされ、インフラ投資の柱の一つになっていることが分かります。
こうした投資は、老朽化した設備の更新や新たなダム、運河、配水ネットワークの整備など、多方面に振り向けられているとみられます。豪雨や干ばつなど極端な気象が増えるなかで、水をためる、運ぶ、配るための仕組みを強化する狙いがあると考えられます。
国際ニュースとして見る南水北調
南水北調プロジェクトは、中国国内の水問題への対応であると同時に、世界的な水資源マネジメントの議論とも重なるテーマです。気候変動の影響が強まるなか、水の偏在をどう是正するかは、多くの国と地域が直面する共通課題になっています。
巨大なインフラで水を長距離輸送する中国のアプローチは、環境負荷や地域間の利害調整など難しい論点も抱えています。一方で、長期的な投資を前提に、水安全保障を国家戦略として位置づけている点は、他地域にも示唆を与える部分があると言えそうです。
日本を含むアジア各地でも、水害対策と渇水対策の両立は大きな課題です。南水北調の10年間の経験が、今後どのような形で共有され、議論されていくのか。中国発の国際ニュースとして、引き続きフォローしていきたいテーマです。
Reference(s):
Mega project in China diverts 76.5b cubic meters of water to the north
cgtn.com








