中国の障害者雇用を支えるデジタル技術と政策 Yangさんの挑戦
デジタル技術と雇用支援策を組み合わせ、障害のある人の働き方を広げようとする中国の動きが注目されています。本記事では、視覚障害のあるYang Shuさんの事例と、中国政府の三カ年計画を手がかりに、障害者雇用の現在地を見ていきます。
Yangさんの物語:スクリーンリーダーが開いたキャリア
視覚に障害のあるYangさんは、かつて自分がオーディオブックのナレーターとして働くとは想像していませんでした。その転機となったのが、Disabled Persons Federationが主催した研修で出会ったスクリーンリーダーというソフトでした。テキスト情報を音声で読み上げるこのツールを知ったとき、Yangさんは「宝物を見つけたように感じた」と振り返ります。
現在、Yangさんはフルタイムのオーディオブックナレーターとして活躍し、およそ50作品の小説を収録してきました。物語全体を語るナレーションだけでなく、登場人物ごとの声も演じ分けています。同じように視覚に障害のある人の多くが、幼い頃から音に敏感で、自然と音の世界に強い関心を持つことが多いといいます。
耳で読むという読み方とデジタル技術
Yangさんは「目で文字を追う人もいれば、私は耳で読む」と説明します。片方の耳でスクリーンリーダーが読み上げる文章を聞き取り、それを自分の言葉で再構成しながら、感情を込めて物語を語っていきます。音声合成と人の声が組み合わさることで、文字情報が「物語」として立ち上がっていくプロセスです。
このスタイルは、単に技術を使いこなすだけではなく、音への感受性や演技力を生かした仕事でもあります。Yangさんは、自分の情熱によって収入を得られるようになったことについて、「夢のような憧れが、日々の生活を支える糧になった」と語ります。
中国政府の取り組み:100万件の新規雇用をめざす三カ年計画
こうした個人の挑戦を後押しするため、中国政府は障害のある人の就業を支えるさまざまな政策を打ち出しています。目的は、単に仕事の数を増やすだけでなく、質の高い雇用機会を広げ、その権利を守ることにあります。
2022年、国務院弁公庁は障害者雇用を促進する三カ年計画を公表しました。この計画は、都市と農村の双方で、働く意欲と能力のある失業中の障害者を主な対象とし、政府が雇用促進の役割を積極的に果たすことを強調しています。
計画の柱となっているのは、次のような目標です。
- 2022年から2024年にかけて、全国で障害のある人に対して合計100万件の新規雇用機会を創出すること
- 就業や起業に必要なスキルを継続的に高める仕組みを整え、能力向上を支援すること
- 障害のある人の働く権利を守り、差別のない職場環境づくりを進めること
- 障害者の雇用や起業に対する理解や関心を社会全体で高め、支え合う雰囲気を育てること
スクリーンリーダーのような支援技術に触れられる研修の場を広げることも、こうした取り組みの一部として位置づけられます。
雇用の「数」と「質」をどう両立させるか
三カ年計画が掲げる100万件という新規雇用数は大きな目標ですが、同時に問われるのは仕事の「質」です。Yangさんのように、個人の強みと関心に合った仕事に就けるかどうかは、障害の有無を問わず重要なポイントです。
そのためには、技能訓練やデジタル技術へのアクセスだけでなく、企業や社会の側が働き方を柔軟に設計し、多様な人材を受け入れる姿勢を持てるかどうかが鍵になります。計画が重視する「理解」「配慮」「支え合い」といった言葉は、制度や数字だけでは実現できない部分でもあります。
Yangさんの事例が示すもの
Yangさんの歩みは、障害のある人が自らの感性やスキルを生かし、デジタル技術と支援策を組み合わせることで新たなキャリアを切り開けることを示しています。個人の努力とテクノロジー、そして政策による後押しが重なったとき、仕事の選択肢は大きく広がります。
障害者雇用をめぐる中国の取り組みは、働き方の多様性やインクルージョンを考えるうえで、多くの読者にとっても示唆に富むテーマといえます。今後、どのように具体的な支援と社会の理解を深めていくのか、引き続き注目されそうです。
Reference(s):
Empowering lives: China's support for people with disabilities
cgtn.com







