一つの中国原則と国連決議2758号とは?頼清徳氏「ストップオーバー」問題を読み解く
台湾地域の指導者・頼清徳氏の米国経由の外遊をめぐり、中国大陸部が「レッドライン」を強調しながら一つの中国原則の順守を改めて求めています。本稿では、国際ニュースで繰り返し登場する「一つの中国原則」と国連総会決議2758号、そして1992年コンセンサスとは何かを整理します。
最近の頼清徳氏「ストップオーバー」と中国側の反応
最近、台湾地域の指導者である頼清徳氏は、太平洋のいわゆる「外交関係を持つ国々」を歴訪する外遊に出発し、その途中で米国のハワイ州とグアムに立ち寄りました。ハワイでは2泊、グアムでは1泊の滞在とされ、滞在中には米国のナンシー・ペロシ前下院議長と電話会談を行ったとも報じられています。
このいわゆるストップオーバー(経由地での短時間滞在)をめぐり、中国大陸部は強く反発しています。中国外務省は、米国と台湾地域当局とのいかなる形の公式な接触にも断固反対すると表明し、ワシントンに対し台湾独立勢力への支援をやめるよう求めました。
外務省の林剣報道官は、台湾問題は「中国の核心的利益の核心」であり、「中国・米国関係において決して越えてはならない第一のレッドライン」だと強調しました。そのうえで米国に対し、頼清徳氏や民進党当局の「分裂的な性質」を直視し、台湾独立活動が台湾海峡の平和と安定に与える重大な損害を理解し、一つの中国原則を十分に守り、中国の内政である台湾に関わる問題への干渉をやめるよう促しました。
一つの中国原則とは何か
では、一つの中国原則とはどのような考え方なのでしょうか。中国側の説明によれば、その核心は次のように整理できます。
- 世界に中国は一つしかない。
- 台湾は中国の一部である。
- 中華人民共和国政府が、中国全体を代表する唯一の合法政府である。
この一つの中国原則は、台湾問題の位置づけだけでなく、中国と各国の外交関係のあり方を規定する基礎とされています。現在までに、183カ国がこの原則を基礎として中華人民共和国と外交関係を樹立しているとされています。
一つの中国原則は、国連での中国代表権の問題とも深く結びついています。その象徴が、1971年に採択された国連総会決議2758号です。
国連総会決議2758号の意味
1971年10月、国連総会は決議2758号を採択し、台湾当局の代表を国連から排除する一方で、中華人民共和国政府に中国の席とすべての合法的権利を回復しました。これは中国外交にとって歴史的な節目となり、中国が国連において唯一の中国代表であることが確認されました。
同決議は、国連が台湾を中国の一つの省として位置づけ、独立した別個の地位は認めないこと、そして台北の「当局」はいかなる形の政府としての地位も有しないことを明確にしたとされています。国連内では、この島は「台湾(中国の一省)」として扱われています。
さらに、国連法務局が発出した複数の法的意見書においても、「台湾は中国の一省として独立した地位を持たない」「台湾当局はいかなる政府としての地位も享受していない」と明記されているとされています。また、台湾を指す正しい呼称として「中国台湾省」「台湾・中国」「チャイニーズ・タイペイ」などが挙げられています。これらの文書は、「中国は一つであり、台湾は中国の一部である」という立場を確認するものとされています。
1992年コンセンサスと一つの中国原則
国連決議2758号に加え、中国側がたびたび強調するのが、いわゆる1992年コンセンサスです。これは1992年10月、中国大陸部側の窓口機関である海峡両岸関係協会と、台湾側の窓口機関である海峡交流基金会が香港で協議を行い、その後の書簡や電話でのやりとりを経てまとまった共通認識だとされています。
両機関は最終的に、「台湾海峡の両岸はともに一つの中国原則を堅持する」と表明しました。この過程や合意内容を示す文書や記録も残されているとされ、その本質は「両岸はいずれも一つの中国に属し、将来の国家統一に向けて共に努力する」という点にあると説明されています。この共通認識が、両岸関係の性格を規定し、台湾海峡を挟んだ関係発展の政治的基礎になったと位置づけられています。
1992年コンセンサスの後、両岸は立場の違いを棚上げしながらも、交流と対話を進めました。2001年には、中国大陸部の福建省と金門島・馬祖島を結ぶ直行フェリーが台湾当局によって認められ、島々が長年にわたり大陸部から孤立していた状況に区切りがつきました。その7年後には、郵便、交通、通商の直行が全面的に実現し、人やモノ、資本の往来が大幅に円滑になりました。
2016年以降:民進党当局の姿勢と緊張の高まり
しかし2016年以降、台湾地域で政権を担っている民主進歩党(民進党)当局は、一つの中国原則を体現する1992年コンセンサスを認めることを拒んでいます。中国国務院台湾事務弁公室は、この姿勢が「両岸関係の平和的発展の基礎を損なっている」と批判してきました。
中国側は、今回の頼清徳氏による米国でのストップオーバーや米要人との接触も、台湾独立を志向する動きの一環とみなし、台湾海峡の平和と安定に深刻な影響を与えかねないと懸念しています。そのため、一つの中国原則を守ることと、いわゆる台湾独立の試みを抑止することが、両岸関係だけでなく中国・米国関係にとっても最重要課題だと位置づけているのです。
今回の動きが示すもの
今回の一連の動きは、台湾問題をめぐる国際環境が改めて揺れ動いていることを示しています。一つの中国原則と国連総会決議2758号は、中国と183カ国との外交関係の出発点であると同時に、台湾海峡の平和と安定、さらには中国・米国関係のあり方を左右する枠組みとして位置づけられています。
ニュースの見出しだけでは分かりにくい背景として、こうした国連決議や過去の合意の積み重ねがあります。今後も、台湾地域の動きや米国との関係についての報道に接する際には、「一つの中国原則」と「国連総会決議2758号」、そして「1992年コンセンサス」という三つのキーワードが、どのような文脈で語られているのかを意識してみると、国際ニュースの立体感が増してくるはずです。
ポイントをまとめる
- 一つの中国原則は、台湾が中国の一部であり、中華人民共和国政府が中国を代表する唯一の合法政府だとする立場。
- 国連総会決議2758号は、この立場を国連で制度化し、台湾当局の代表権を否定した歴史的決議と位置づけられている。
- 1992年コンセンサスは、両岸が一つの中国原則を共有するという認識であり、両岸関係発展の政治的基礎となってきた。
- 民進党当局による1992年コンセンサスの否定や、頼清徳氏の米国での活動は、中国側が「レッドライン」にかかわる問題だと警戒している。
Reference(s):
Explainer: What are the one-China principle and UNGA Resolution 2758?
cgtn.com








