敵から味方へ Black Myth: Wukongの広智が映す現代の物語 video poster
中国発のアクションRPG「Black Myth: Wukong」で、序盤からプレイヤーの心をつかんでいるのが狼の妖怪キャラクター・広智です。原作『西遊記』では敵だった存在が、なぜゲームでは頼れる味方として描かれているのでしょうか。
世界で注目された中国ゲーム「Black Myth: Wukong」
2024年8月20日に発売された「Black Myth: Wukong」は、発売から3日間で1,000万本を売り上げる大ヒットとなりました。2024年11月には、世界的なゲームイベント「The Game Awards 2024」でゲーム・オブ・ザ・イヤー候補にもノミネートされ、中国のゲームとして初めての快挙とされています。
原作『西遊記』をベースにした物語と広智の役割
Black Myth: Wukongは、中国古典『西遊記』の世界観をもとにしたアクションRPGです。プレイヤーは「選ばれし者」として旅に出て、伝説の孫悟空を探しながら、さまざまな妖怪と出会い、戦います。
その序盤に登場するのが、狼の妖怪・広智です。広智は強力な変身術と攻撃で、難関ボス戦でプレイヤーを何度も救ってくれる存在として描かれています。この頼もしさから、ゲームコミュニティでは「広智、助けて!」というフレーズがミームとして広がりました。
原作では「敵」だった広智 ゲームではなぜ「味方」に?
興味深いのは、原作『西遊記』に登場する広智が、孫悟空と三蔵法師(唐三蔵)を殺そうとする敵役として描かれている点です。伝統的な物語では悪役だった広智が、ゲームではプレイヤーを助ける人気キャラクターに変わっています。
この大胆な再解釈は、単なる設定変更というよりも、現代の物語づくりにおける「敵と味方の境界」を問い直す試みとも受け取れます。プレイヤーは、かつての悪役と協力しながら旅を進めることで、「本当に悪いとは何か」「立場が変われば見え方も変わるのではないか」といった問いを自然と考えさせられます。
SPARKでひもとく「広智」の再解釈
こうした対比をより深く知りたい人に向けて、教育シリーズSPARKの最新エピソードでは、動画配信プラットフォームで影響力を持つ王宏志氏(上海師範大学の教授)が、ゲーム版の広智と原作『西遊記』の広智を比較しながら解説しています。
王氏は、中国古典文学の視点からキャラクターの変化を読み解きつつ、ゲームという現代メディアが古典作品をどう翻案し、新しい意味を与えているのかを丁寧に説明しています。原作ファンにとっても、ゲームから『西遊記』に興味を持った人にとっても、物語を二重に楽しめる内容になっています。
ゲームと教養コンテンツの架け橋としてのSPARK
SPARKは、科学、哲学、芸術、研究、知識といったテーマを横断的に扱い、専門的な知見を誰にでも届く学びのコンテンツへと整理するシリーズです。Black Myth: Wukongと『西遊記』の比較も、その一つの試みと言えます。
人気ゲームを入り口に古典文学や思想へと視野を広げることで、「難しいから遠い」と感じがちな教養の世界を、日常の楽しみと自然につなげていく狙いがあります。ゲーム実況やSNSで話題になるキャラクターをきっかけに、原作テキストに立ち返ってみる――そうした学びのスタイルは、デジタルネイティブ世代にとって親しみやすいものです。
「敵から味方へ」が映す、現代の価値観
かつて悪役だった広智が、プレイヤーにとって頼れる仲間として愛されるようになった背景には、次のような現代的な価値観が見え隠れします。
- 固定的な善悪ではなく、視点の違いから物語を読む姿勢
- 弱い立場の味方やアウトサイダーへの共感
- ゲームを通じて文化や歴史を学ぼうとする動き
ゲームの中で「広智、助けて!」と叫びながらボスに挑む体験は、単なるアクションの爽快感だけでなく、「過去の物語をどう読み替えるか」という問いを、私たちに静かに投げかけているのかもしれません。
広智から始める『西遊記』の読み直し
Black Myth: Wukongのヒットと広智人気は、中国発のゲームが国際的な舞台で存在感を高めると同時に、古典文学の新しい楽しみ方を提示しています。SPARKのような解説コンテンツをきっかけに、原作『西遊記』を読み直してみると、ゲームのシーンが違って見えてくるかもしれません。
通勤時間やスキマ時間に、広智というキャラクターを通じて「敵と味方」「昔話と現代」という二つの軸を行き来しながら、自分なりの物語の読み方を探ってみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
SPARK: Understanding Guangzhi's transformation from foe to friend
cgtn.com








