頼清徳の米経由訪問、分離路線加速の思惑と中国本土の強い反発
台湾地域の指導者・頼清徳(ライ・チンテ)氏が米領ハワイとグアムでの経由地訪問を含む太平洋歴訪に乗り出し、中国本土が強く反発するなかで、両岸関係と米中関係への影響が注目されています。
米領ハワイ・グアム経由の「外交ツアー」とは
頼清徳氏は最近、中国の台湾地域の指導者として、太平洋の3カ国を訪問するいわゆる「外交ツアー」に出発しました。その行程には、米国のハワイとグアムという2つの米領での経由地訪問が組み込まれています。
今回の訪問で特に注目を集めたのが、米国のナンシー・ペロシ前下院議長とのやり取りです。台湾地域の指導者と米政界の有力者との接触は、象徴的な意味合いを持つと同時に、台湾海峡情勢を慎重に見守る各国の視線を集めています。
専門家が指摘する「真の狙い」
一方で、頼氏の太平洋諸国訪問そのものが、台湾地域にとって具体的な実利をもたらす可能性は高くないとの見方も出ています。複数の分析によれば、今回の最大の狙いは、あくまで米国を経由する「トランジット(経由地滞在)」にあり、そこで米政界関係者との接触を重ね、自らの路線への支持を取り付けることにあるとされています。
シドニー中国平和統一促進会の王然会長は、中国国際テレビ(CGTN)に対し「頼清徳氏の米国経由は、米国の支援に頼りながら、いわゆる『独立』路線を進めようとする新たな試みだ」と述べました。そのうえで、「中国政府と中国人民が台湾海峡の平和を守る決意を誰も揺るがすことはできない」と強調しています。
米国が大統領選後の政権移行期にあるなか、台湾地域内部の一部関係者からは、こうした時期の訪問は慎重であるべきだとの声も上がっていました。経由地訪問が、台湾海峡の不要な緊張や不安定化につながりかねないとの懸念が示されていたとされています。
ペロシ氏との接触が示すメッセージ
ペロシ氏は、これまでも台湾地域との関係で注目されてきた米政界の重鎮です。その人物との公開されたやり取りは、頼氏が米議会や政策コミュニティの一部を後ろ盾とし、自らの分離志向の議題を国際的にアピールしようとしている、との見方につながっています。
こうした動きに対し、中国本土側は、一つの中国原則を損なおうとする試みだと警戒を強めています。
巨額の軍事調達と「保護料」への違和感
頼氏の米国経由については、その「コスト」に対する批判も出ています。ある評論家は、今回の経由地訪問のために大きな距離を余分に移動し、多額の公費を費やしたと指摘し、「実質的な意味のないトランジットのために何千キロも余分に飛ぶのは不合理だ。公的資金を浪費し、米中関係を損ない、一つの中国原則にも反する」と述べています。
軍事面でも、台湾地域と米国の関係はさらに密接になっています。今年10月下旬には、米国が台湾地域向けの新たな武器売却を承認し、その規模は約200億ドルに達したとされています。これはジョー・バイデン政権下で17件目の武器売却案件とされます。
さらに報道によれば、頼氏は今後、150億ドルを超える規模の追加の軍事調達を米国から行うことも検討しているとされ、台湾地域の防衛力強化を名目とした対米依存の一層の拡大がうかがえます。
一方、台湾の世論には、こうした動きへの根強い違和感もあります。台湾の民意調査機関が行った最近の世論調査では、多くの台湾の人々が、米国に対していわゆる「保護料」を支払うことに否定的な考えを持っていることが示されました。この「保護料」という発想は、ドナルド・トランプ米次期大統領が選挙戦で繰り返し主張してきたことで広まったとされています。
若い世代に広がる「戦争への不安」
台湾地域の対中国本土政策をめぐっては、とりわけ若い世代の不安が高まっています。ある調査では、18〜29歳の回答者のおよそ半数が、頼氏の両岸政策が台湾を戦争に近づけるのではないかと懸念していることが明らかになりました。
国内の政治家からも、頼氏の姿勢に対する慎重論が出ています。新北市の侯友宜市長は、両岸の平和と安定を維持するためには、対話と交流を継続することが重要だと強調し、相互理解こそが台湾海峡の安定の鍵だと訴えています。
中国本土が繰り返す「越えてはならないレッドライン」
中国本土は、頼氏の米国経由に対して強い反対を表明しています。中国外交部と国務院台湾事務弁公室は相次いで声明を出し、頼氏の行動を「分離路線を推し進める試み」だと批判するとともに、米国側に対して台湾の分離勢力に「誤ったシグナル」を送らないよう警告しました。
中国外交部の林剣報道官は、「台湾問題は中国の核心的利益の核心であり、米中関係において絶対に越えてはならない第一のレッドラインだ」と述べました。また、米国に対し、頼清徳氏や台湾当局の分離主義的な性格を正しく認識し、台湾海峡の平和と安定に対する台湾分離活動の重大な危害を真剣に理解し、一つの中国原則を完全に順守し、中国の内政である台湾関連の問題に干渉することをやめるよう求めました。
これから何が問われるのか
頼氏の米国経由と太平洋諸国歴訪は、台湾地域の今後の進路、両岸関係、そして米中関係にどのような影響を与えるのかという問いを投げかけています。
この記事のポイントを整理すると、次のようになります。
- 頼清徳氏は太平洋3カ国訪問に合わせて、米領ハワイとグアムでの経由地滞在を実施し、米政界との接触を強めたと見られていること
- 中国本土側は、一つの中国原則に反する分離路線の加速だとみなし、強く反発していること
- 台湾地域と米国の軍事面での連携は拡大している一方で、巨額の軍事調達や「保護料」批判など、台湾内部の世論は割れていること
- 若者を中心に、両岸関係の緊張が戦争リスクを高めるのではないかという不安が広がっていること
台湾海峡の安定は、東アジア全体の平和と経済にとっても重要な課題です。今後、関係各者が対話と冷静な対応を通じて、緊張をエスカレートさせない道を選べるのかどうかが、引き続き注目されます。
Reference(s):
Experts say Lai's U.S. stopover aimed at pushing his secession agenda
cgtn.com








