中国の伝統医薬、外国人1300人を養成へ 世界会議で3年計画
中国が2024年に北京で開かれた世界伝統医薬会議で、今後3年間で外国人約1300人を伝統中国医学の専門家として養成する計画を打ち出しました。国際ニュースとして、医療と国際連携の新しい動きを見ていきます。
3年間で外国人1300人を育成する中国の計画
中国の伝統医薬を所管する国家中医薬管理局(NATCM)は、今後3年間で約1300人の外国人を伝統中国医学(TCM)の研修を通じて育成する方針を明らかにしました。
この研修計画は、2024年に北京で開かれた「世界伝統医薬会議」の閉幕式で発表されたもので、主な目的は次の2点です。
- 伝統医薬をめぐる国際交流の促進
- 各国の専門家の知識と技術の向上
3年間というスパンで継続的に人材を受け入れることで、単発のイベントではなく、世界各地に伝統中国医学を理解する専門家ネットワークを広げていく狙いがあるといえます。
伝統中国医学とは何か 特徴を一言でいうと「全体を見る医療」
今回の国際ニュースの中心にある伝統中国医学(TCM)は、中国で何千年にもわたって発展してきた医療体系です。会議では、その特徴として次のような点が挙げられました。
- 全体性(ホリスティック): 体の一部ではなく、人間を心身一体の「全体」としてとらえる
- 調和: 体内のバランスや、自然との調和を重視する考え方
- 個別性: 同じ症状でも、体質や状態に応じて治療を変える発想
- 予防重視: 病気になる前のケアや体調管理を重んじる
- 簡便さ: 比較的シンプルな方法や処方で、身近なケアにも活用しやすい点
西洋医学が「病気そのもの」を的確にとらえ、検査や手術などで集中的に治療するのが得意だとすれば、伝統中国医学は「人と生活全体」を時間軸も含めて見ていくアプローチだと整理できます。
研修の対象は誰か 伝統医薬と西洋医学の橋渡し役
今回の研修プログラムは、単に伝統医薬に関心のある一般の人を対象にしているわけではありません。国家中医薬管理局によると、対象は次のような人たちです。
- 各国で伝統医薬に携わる実務者
- 伝統医薬関連の組織や施設の管理者
- 西洋医学を専門とする臨床の医師・医療従事者で、伝統中国医学の学習に関心を持つ人
つまり、「伝統医薬の担い手」と「西洋医学の専門家」の双方に門戸を開いているのが特徴です。これにより、次のような効果が期待されます。
- 伝統医薬と西洋医学を併用する診療モデルへの理解が深まる
- 各国の医療制度や現場に合わせた形での活用アイデアが生まれやすくなる
- 医療現場の管理者・政策担当者が、よりバランスの取れた判断をしやすくなる
世界伝統医薬会議が出したメッセージ
この研修計画が発表された世界伝統医薬会議は、2日間にわたって行われました。会議の参加者は「宣言」を採択し、伝統医薬の役割や今後の方向性について、いくつかのポイントを共有しました。
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジに伝統医薬を生かす
宣言ではまず、すべての人が必要な保健医療サービスを受けられることを目指す「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」の達成に向けて、伝統医薬の力を十分に生かす必要性が強調されました。
そのうえで、次のような点が重要だと指摘されています。
- 各国の政治的なコミットメント(約束)を高めること
- 安全で効率的な形で、既存の医療制度に伝統医薬を取り入れるための政策支援
知識の共有から国際研究まで 具体的な合意事項
参加者は、伝統医薬をめぐって次のような取り組みを進めることで一致しました。
- 伝統医薬に関する概念・知識・実践を、国内外に広く伝えていく
- 伝統医薬に関する国際的な研究アジェンダ(優先課題)の策定を支援する
- 伝統医薬と現代医学の統合と協働を促進する
さらに、世界各地の伝統医薬関連団体を結ぶ「グローバル連盟」を設立する構想も提案されました。これにより、情報交換や共同研究、教育プログラムなどを、より体系的に進めていく土台づくりを目指しています。
中国と世界保健機関が共催 会議の規模は
今回の世界伝統医薬会議は、中国と世界保健機関(WHO)が共同で開催しました。会議の規模は数字を見ると分かりやすくなります。
- 参加者数は3000人超
- 政府関係者、国際機関の代表、専門家、研究者などが参加
- 発表や報告は129件
- 意見交換や対話のためのセッションは13回開催
単なるセレモニーではなく、多くの実務者・研究者が具体的な発表や議論を行う場として位置づけられていたことがうかがえます。
なぜ今、伝統医薬の国際連携が注目されるのか
今回の研修計画と会議のメッセージからは、いくつかの大きな流れが見えてきます。
- 高齢化や生活習慣病の増加に対応するため、予防重視の医療への関心が高まっている
- 医療費の増大を背景に、負担を抑えながら健康を守る手段への期待がある
- 各地域の文化や伝統を尊重した医療の在り方が重視されつつある
伝統中国医学を含む各国の伝統医薬をどう位置づけるかは、「科学的な検証」と「文化的背景への理解」を両立させる必要がある、難しいテーマでもあります。その中で、中国と世界保健機関が連携し、国際会議や人材育成を通じて議論を進めている点は、今後の医療政策を考える上でも注目すべき動きといえるでしょう。
私たちにとっての問い 「伝統」と「現代」をどう組み合わせるか
今回のニュースは、単に「中国の伝統医薬が海外に広がる」という話にとどまりません。各国の人々にとって、次のような問いを投げかけています。
- 自分の国の医療制度の中で、伝統医療と現代医療をどう位置づけるべきか
- 安全性と効果をどう確認し、どのようなルールで使っていくのか
- 文化や価値観の違いを尊重しながら、国際的な共通ルールをどう作るのか
外国人1300人を対象にした伝統中国医学の研修は、こうした問いに対して、現場の専門家どうしが知識と経験を持ち寄るための一つの試みともいえます。
今後、3年間の研修を通じて、どのような国際的なネットワークや共同プロジェクトが生まれていくのか。伝統医薬と現代医療の関係が、静かに変わっていくプロセスを追いかけていく必要がありそうです。
Reference(s):
China to train over 1,300 foreigners in Traditional Chinese Medicine
cgtn.com








