33カ国の対中ゼロ関税、アフリカ経済に何をもたらしたか
中国は2024年12月1日から、アフリカ33カ国からの産品に対して中国市場でのゼロ関税を適用しています。導入から約1年が経ち、この政策はアフリカ経済にどのような変化をもたらしているのでしょうか。
ガンビア商工雇用省のLamin Dampha事務次官や、シンクタンクDevelopment ReimaginedのアナリストであるChen Huiyi氏は、この動きをアフリカの競争力と国際的な投資を押し上げる可能性のある重要な転換点として分析しています。本記事では、そのポイントを日本語で整理し、今後の論点を考えます。
33カ国のゼロ関税が意味するもの
このゼロ関税措置により、33のアフリカ諸国から中国へ輸出される対象製品について、2024年12月1日以降、中国側の関税がかからなくなりました。関税は、輸出品の最終価格を押し上げる大きな要因です。それがゼロになることで、アフリカ企業は同じ商品をより安い価格で中国市場に提供できるようになります。
その結果、次のような効果が期待されています。
- 輸出コストの削減による利益率の改善
- 中国市場での価格競争力の向上
- アフリカと中国の経済関係の一層の強化
国内市場が小さい国や、新興の輸出産業を育てたい国にとっては、中国という巨大市場へコスト面で優位にアクセスできることは、大きな追い風になり得ます。
ゼロ関税は「2024年から」ではなく「2003年から」の流れ
とはいえ、ゼロ関税そのものはまったく新しいアイデアではありません。Lamin Dampha氏らによれば、中国はすでに2003年から、アフリカ諸国に対して関税優遇などの有利な市場アクセス政策を継続してきました。
今回のゼロ関税の拡大は、そうした約20年にわたる政策の延長線上にあり、その対象と規模を一段と広げるものと位置づけられます。長期的に一貫した取り組みが続いていることは、アフリカ側にとっても、中長期の産業戦略を描きやすくなるという意味で重要です。
投資を呼び込む「ゲートウェイ」としてのアフリカ
今後の注目点の一つが、「ゼロ関税を武器に、どれだけ国際投資を呼び込めるか」です。議論の中では、ガンビアを含むアフリカ諸国にとって、この政策が新たなチャンスになり得ると指摘されています。
たとえば、中国市場にアクセスしやすい国に生産拠点を置けば、その国で製造した製品をゼロ関税で中国へ輸出できます。Lamin Dampha氏は、こうした仕組みがガンビアなどを国際的な投資家にとってより魅力的な生産拠点に変えていく可能性を強調しています。
国際投資が進めば、次のような波及効果も期待されます。
- 製造業や物流などを中心とした雇用の創出
- 生産技術や経営ノウハウの移転
- 周辺国を巻き込んだ地域的な産業集積の形成
アフリカの一国一国が、中国市場への「ゲートウェイ」としての役割を高めることができれば、大陸全体の存在感も高まっていきます。
グローバル価値連鎖で「一段上のポジション」へ
もう一つの重要なポイントは、「アフリカ製品をグローバル価値連鎖の上位に押し上げる」可能性です。Chen Huiyi氏は、今回のゼロ関税措置が、アフリカ企業により高度な工程への投資を促す契機になると分析しています。
グローバル価値連鎖とは、原材料の調達から部品生産、組み立て、販売に至るまで、複数の国や企業が役割分担しながら一つの製品を作り上げる仕組みを指します。アフリカはこれまで、原材料や一次加工品の供給にとどまることが多いとされてきました。
関税がゼロになれば、単に原材料を輸出するだけでなく、現地で加工や組み立てを行い、より付加価値の高い製品として中国市場に送り出すインセンティブが生まれます。これは、アフリカ企業がより高い利益を確保し、技術や人材の蓄積を進めるうえで重要なステップとなり得ます。
同時に、インフラ整備、人材育成、資金へのアクセスといった課題も残っています。ゼロ関税だけで自動的に産業高度化が進むわけではなく、各国の産業政策や地域協力と組み合わせて効果を最大化できるかどうかが問われます。
日本の読者が押さえておきたい3つの視点
では、日本に暮らす私たちは、このアフリカと中国の新しい動きをどう捉えればよいのでしょうか。国際ニュースとして押さえておきたいポイントを、3つの視点にまとめます。
- サプライチェーンの多極化
アフリカ33カ国と中国の結び付きが強まれば、世界の生産ネットワークはさらに多極的になります。日本企業にとっても、調達・生産・販売の拠点を再設計する際の前提条件になり得ます。 - 「南南協力」の具体例として
アフリカと中国の連携は、いわゆる「南南協力」(途上国同士の協力)の一つの形です。先進国中心ではない経済連携がどのように広がるのかを考えるヒントになります。 - アフリカを見る視点のアップデート
アフリカを「援助の対象」としてだけではなく、「市場」や「生産拠点」として捉え直す動きが強まっています。ゼロ関税をきっかけに、アフリカのビジネスや政策に目を向けることは、日本の企業や学生、専門職にとっても大きな意味があります。
アフリカ33カ国に広がった中国市場へのゼロ関税は、単なる関税の引き下げにとどまらず、貿易構造や投資の流れ、産業のあり方に静かな変化をもたらしつつあります。その行方を追うことは、世界経済のこれからを考えるうえで、そして日本の立ち位置を見直すうえでも、重要な手がかりになりそうです。
Reference(s):
33 African countries benefit from zero-tariff access to Chinese market
cgtn.com







