英軍捕虜を救った中国漁民をたたえる記念碑 浙江省でお披露目
第二次世界大戦中に英軍捕虜を救った中国の漁民をたたえる記念碑が、中国東部・浙江省の救出現場で木曜日に公開されました。戦時下でも人命救助を優先した人々の行動を伝える国際ニュースとして注目されています。
英軍捕虜救出をしのぶ新たな記念碑
記念碑が建てられたのは、浙江省舟山(ジョウシャン)沖の救出現場です。ここで地元の漁民たちは、沈没事故に巻き込まれた英国人捕虜を救うため、自らの命を顧みず海に出ました。
記念碑の左側には、中国語と英語で「Dongjiの漁民による英国人捕虜救出記念」と「愛は国境を越え、友情は時を超える」という趣旨の言葉が刻まれ、この出来事の詳細な説明も添えられています。戦争という極限状態の中でも、人道的な行動が国境を超えた友情につながったことを象徴するメッセージです。
82年前の「リスボン・マル号事件」とは
記念碑が伝えるのは、82年前に起きたリスボン・マル号事件です。1942年10月、日本軍に徴用されていた貨物船リスボン・マル号は、香港から日本に向けて1,800人を超える英国人捕虜を輸送していました。
この船が浙江省の舟山諸島沖を航行中、アメリカの潜水艦の攻撃を受けて被弾・沈没しました。冷たい海に投げ出された多くの捕虜たちを目の当たりにしたのが、近くで漁をしていた地元の漁民たちでした。
彼らは自らも危険にさらされながら海に乗り出し、最終的に380人を超える英国人捕虜を救出したとされています。国籍や立場を超えて命を優先した行動は、その後長く語り継がれてきました。
記念碑のデザインとその意味
今回の記念碑は、中国美術学院が設計・制作しました。舟山の漁民が命がけで救助に向かう歴史的な瞬間を切り取り、立体的に表現しているとされています。
記念碑の概要は次の通りです。
- 長さ:4.5メートル
- 高さ:1.8メートル
- 幅:1.7メートル
- 重量:約1トン
- 素材:船舶にも使われる海軍用青銅
重厚な青銅の質感は、荒れた海や当時の緊迫した状況を思い起こさせると同時に、82年を経ても錆びつかない友情と記憶を表現しているようにも感じられます。
「平和のための犠牲を忘れない」声
記念碑の除幕式には、救助に参加した漁民の子孫も参加しました。その一人である呉不偉(ウー・ブーウェイ)さんは、「より多くの人にこの歴史を知ってほしい。そして平和のために犠牲を払った人々を忘れないでほしい」と語っています。
戦争の当事者が次第にこの世を去っていく中で、子や孫の世代が記憶の継承を担う段階に入りつつあります。現場に立つ記念碑は、単なる追悼の場であると同時に、訪れた人が自分ごととして歴史を考える「問いかけ」の装置とも言えます。
いま、この物語から何を学ぶか
リスボン・マル号事件は、戦時下における悲劇であると同時に、人道的な勇気と国際的な連帯の物語でもあります。武力衝突や対立が続く現代において、「愛は国境を越え、友情は時を超える」というメッセージは、決して過去のものではありません。
日本にいる私たちにとっても、このニュースは二つの視点を投げかけます。
- 戦争の被害と加害の両面を含む歴史を、どのように多角的に学び、語り継ぐのか
- 国籍や立場が異なる人々と、どうすれば信頼と友情の関係を築けるのか
浙江省の小さな漁村から始まった一つの救出劇は、82年後の今も、平和や人間の尊厳について考えるきっかけになり続けています。スマートフォンの画面越しにこのニュースを読む私たちも、その物語の「次の語り手」になれるかどうかが問われているのかもしれません。
Reference(s):
Memorial commemorating heroic WWII rescue unveiled in E China
cgtn.com








