中国科学者がチベットカモシカのゲノム解読 高地適応と保全に光
中国科学院などの研究チームが、希少なチベットカモシカの染色体レベルのゲノムを解読し、高地での生存を支える遺伝子の秘密に迫っています。
中国の研究チームが史上最も精度の高いゲノムを構築
中国科学院 Chinese Academy of Sciences と、その傘下にある青海省西寧市の中国科学院西北高原生物研究所、同じく西寧市にある青海大学の研究者らが、チベットカモシカの染色体レベルのゲノムを組み立てることに成功しました。
中国科学院によると、今回構築されたゲノムは、現在利用可能なものの中で最も正確で、最も完全なチベットカモシカのゲノムだとされています。希少な高地動物について、ここまで精密な遺伝情報が得られたことで、今後の研究の基盤となる成果だといえます。
高原の生物多様性保全に直結する成果
チベットカモシカは、青海・西蔵高原 Qinghai-Xizang Plateau の生物多様性を支える重要な野生動物です。この地域の生態系にとって要となる存在であるため、その遺伝的な特徴を理解することは、高原全体の自然環境を守るうえでも欠かせません。
研究に参加した中国科学院西北高原生物研究所の張同祚研究員は、今回の成果について、チベットカモシカの遺伝学研究における技術的な前進であるだけでなく、高原の生物多様性保全に向けた重要な遺伝的基盤を提供するものだと強調しています。
ゲノムから読み解く高地で生き抜く力
研究チームは、チベットカモシカのゲノムを詳細に解析することで、将来の気候変動のシナリオの下で、この動物がどの程度生き残ることができるのかを予測しやすくなるとしています。
たとえば、低酸素状態への耐性や、寒冷な環境への適応に関連する遺伝子の特徴がわかれば、気温や降水パターンが変化したときに、どの個体群がより脆弱になりやすいかを見通すことができます。これにより、限られた保全資源を、リスクの高い個体群に優先的に振り向けるといった戦略が立てやすくなります。
守るべき個体群を見極める
今回のゲノム情報は、チベットカモシカの中でどの集団が特に保護を必要としているのかを見分ける手掛かりにもなります。遺伝的な多様性が低下している集団を早い段階で特定できれば、保護区の設定や個体の移動などを通じて、多様性を維持・回復する対策が取りやすくなります。
張研究員は、こうした取り組みが、チベットカモシカ全体の遺伝的多様性を守るうえで重要だと指摘しています。多様性が保たれていれば、環境の変化が起きたときにも、種として適応しやすくなるからです。
野生動物の感染症対策にも活用
ゲノム情報は、野生の個体群で病気が広がるのを防ぐうえでも役立ちます。チベットカモシカにどのような免疫関連の遺伝的特徴があるのかが分かれば、感染症に弱い個体群やエリアを事前に把握し、監視や予防措置を強化することができます。
張研究員は、今回の成果が、野生個体群の病気の予防と制御にとっても極めて重要だとしています。高原という厳しい環境の中で暮らす動物たちを守るためには、病気のリスクを科学的に見積もることが欠かせません。
デジタル時代の生物多様性保全という視点
今回のチベットカモシカのゲノム解読は、単に一つの希少種の謎を解き明かすだけでなく、生物多様性保全そのものがデジタルなデータに支えられる時代に入っていることも示しています。
高精度のゲノムという設計図があれば、保全政策の優先順位付けや、気候変動への適応戦略、感染症対策などを、より根拠を持って議論することができます。スマートフォンからニュースを読む私たちにとっても、こうした科学の進展が、地球のどこかで生きる野生動物の未来と直結していることを意識するきっかけになりそうです。
Reference(s):
Chinese scientists to decode DNA secrets of rare Tibetan antelope
cgtn.com







