中国の医療保険が希少疾患を拡充 90品目超をカバーする狙いとは
中国で、希少疾患(難病)向けの医薬品を対象とする医療保険の範囲がさらに広がり、保険でカバーされる薬が90品目を超えました。超高額になりがちな希少疾患治療薬へのアクセスをどう広げているのか、最新の動きを整理します。
医療保険リストに13の希少疾患薬が新たに追加
中国ではこのほど、国家医療保障局(National Healthcare Security Administration/NHSA)などが共同で公表した最新の医療保険薬品リストに、希少疾患向けの薬が13品目追加されました。これにより、医療保険で費用の一部が補償される希少疾患薬は合計90品目超となりました。
今回新たにリスト入りした薬には、次のような疾患の治療薬が含まれます。
- 肥大型心筋症(心臓の筋肉が分厚くなる病気)
- 難治性てんかん(通常の治療でコントロールが難しいてんかん)
- 発作性夜間ヘモグロビン尿症(赤血球が壊れやすくなる血液の病気)
いずれも患者数が少ない一方で、生命や生活の質に大きな影響を与える疾患です。保険対象となることで、患者や家族の経済的な負担が軽くなることが期待されています。
なぜ希少疾患は「取り残されがち」なのか
希少疾患は、患者数が極めて少ないことが特徴です。患者数が限られることで、次のような課題が生じやすいとされています。
- 発症頻度が低く、研究や治験の対象になりにくい
- 研究開発コストを回収しづらく、薬価(薬の価格)が高くなりがち
- 専門医や診断体制が整いにくく、診断まで時間がかかることがある
こうした事情から、希少疾患の分野は長年にわたり医療政策の中で優先順位が低くなりがちでした。今回のように公的医療保険がカバーする薬を増やすことは、患者にとって「高すぎて手が届かない薬」を「現実的に利用可能な薬」に近づける取り組みと言えます。
7年連続でのリスト見直し 対象疾患を拡大
NHSAは設立以来、医療保険の薬品リストを7年連続で見直しており、その中で希少疾患向けの薬を段階的に追加してきました。近年は、次のような疾患の治療薬も対象に含めています。
- 脊髄性筋萎縮症(SMA)
- ゴーシェ病
- 重症筋無力症
これらはいずれも、早期からの治療や継続的な投薬が重要とされる難病です。保険適用によって、長期的な治療を続けやすくなる環境づくりが進んでいるとみられます。
北京協和医院の院長である張抒楊(Zhang Shuyang)氏は、「より多くの高品質で生命を救う医薬品が医療保険の対象に加わることは、医師と患者の共通の期待だ」と述べています。医療現場と患者側のニーズが一致していることがうかがえます。
診断・治療ネットワークも全国規模に拡大
中国では、薬の保険適用拡大と並行して、希少疾患の診断・治療体制の整備も進めています。全国レベルの希少疾患診療ネットワークが構築され、医療機関同士が連携して診療にあたる仕組みが広がっています。
2024年10月時点で、このネットワークには400を超える医療機関が参加し、中国のすべての省級行政区をカバーしています。ネットワークの特徴として、次のような点が挙げられています。
- 専門性の高い病院への紹介(医療連携・転院)の仕組み
- 遠隔医療(オンラインを通じた診療やコンサルテーション)の活用
- 地域をまたいだ情報共有による診断精度の向上
患者が住んでいる地域に専門医が少ない場合でも、ネットワークを通じて適切な医療につながる可能性が高まると考えられます。
アジアの希少疾患政策として見る中国の動き
希少疾患への対応は、中国に限らず多くの国と地域に共通する課題です。患者数が少ないために市場規模が小さく、財政負担や薬価の設定、研究開発支援など、どのように持続可能な仕組みをつくるかが問われています。
今回の中国の医療保険拡充は、
- 公的保険でどこまで高額薬をカバーするのか
- 診断ネットワークや遠隔医療をどう活用するのか
- 患者と医療現場の声を政策にどう反映するのか
といった論点を考える上で、アジアの一つの事例として注目されています。日本を含む各国で、希少疾患患者への支援をめぐる議論が続く中、中国の取り組みは今後もフォローしておきたい動きと言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








