上海・浦東新区、外国人材呼び込みへ新たなビザ緩和策 電子ビザも全面試行
上海市の浦東新区が、外国人材の受け入れと生活をより便利にするための新たな一手を打ち出しました。ビザ制度の緩和とオンライン化、教育・医療サービスの拡充を柱とする今回の取り組みは、国際都市・上海の中でも浦東を「世界の人材が集まるエリア」として一段と押し上げそうです。
浦東が発表した「34の新措置」とは
これらの制度は、2024年に開催された「浦東国際人材ハブフォーラム(Pudong International Talent Hub Forum)」で発表されたものです。浦東新区は合計34の新措置を打ち出し、地域で働き暮らす外国人材に向けて、仕事、起業、日常生活など幅広い分野での利便性向上を目指しています。
キーワードは次の3つです。
- 出入境手続きのさらなる円滑化
- 電子ビザの全面的な試行
- 教育・医療など生活サービスの国際化
ポイント1:出入境がスムーズに、高度人材と家族をサポート
新措置により、外国人材が中国への出入境を行うハードルが下がるとされています。浦東新区は、「高度外国人材」に対して確認書を直接発行できるようになり、この書類をもとに、複数回の出入境が可能なビザを取得できるようになります。
対象となる活動は、学術交流、科学研究での協力、ビジネス訪問などです。また、この確認書を利用すれば、家族も同じ書類で中国に入国できる仕組みが用意されています。本人だけでなく家族も含めて受け入れることで、長期的な滞在や本格的な拠点づくりを後押しする狙いがうかがえます。
ポイント2:浦東全域で電子ビザを試行、手続きは完全オンラインに
もう一つの柱が、電子ビザ(eビザ)の試行です。浦東新区全域を対象に、ビザ申請を全面的にオンラインで完結できる仕組みが導入されます。
具体的には、申請の際に紙の書類、原本のパスポート、紙のビザを提出する必要がなくなります。オンライン上で手続きを済ませれば、入国時にはパスポートと電子ビザの情報を使って、そのまま出入境管理のゲートを通過できるよう設計されています。
対面での申請や郵送を前提とした従来型のビザ手続きに比べると、時間や手間の負担が軽くなる可能性があります。頻繁に出張や出入境を行う研究者やビジネスパーソンにとっては、こうしたデジタル化がどこまで実務の負担を減らせるかが注目されます。
ポイント3:教育・医療サービスを拡充、「住みやすさ」にも焦点
今回の新措置は、ビザや出入境だけにとどまりません。浦東新区は、外国人材が生活するうえで重要となる「教育」と「医療」の分野でも国際化を進める方針です。
具体的には、国際教育サービスや国際医療サービスを拡充し、「ハイクオリティな国際人材コミュニティのサービス体制」を整えることを目指しています。子どもの教育環境や医療体制への不安は、海外で働く人にとって大きな判断材料の一つです。生活インフラの充実は、人材を「呼び込む」だけでなく、「とどまってもらう」ための重要な条件と言えます。
浦東が「実験場」になってきた背景
浦東新区は、1990年に「新区」として位置づけられて以来、投資家やイノベーター、そして各種政策の試験導入が行われる場として発展してきました。今回の外国人材向けの新措置も、そうした役割の延長線上にある取り組みと見ることができます。
新制度が浦東でどのような成果を上げるかによって、今後、他の地域に広がっていく可能性も考えられます。国際都市を掲げる各地の間で、外国人材の受け入れ環境をめぐる競争が続くなか、浦東の動きは一つのモデルケースとして注目されます。
日本のビジネスパーソン・研究者にとっての意味
日本を含む海外から浦東に関わる人にとって、今回の動きはどのような意味を持つでしょうか。具体的には、次のような変化が考えられます。
- 学術交流や共同研究で上海・浦東を訪れる際、出入境やビザ取得の負担が軽くなる可能性
- 企業の駐在員や長期プロジェクトで滞在する人にとって、家族も含めた移動や生活設計が立てやすくなること
- 教育・医療サービスの選択肢が増えることで、「仕事だけでなく生活の質」も含めて海外拠点を検討しやすくなること
国や都市が人材を獲得しようとする時代において、出入境手続きのデジタル化と生活インフラの整備は、どこまで人の選択に影響を与えるのか。浦東の試みは、その問いに対する一つの実験でもあります。
今後、実際にどれだけ多くの外国人材が浦東を拠点に選ぶのか、そして新制度がどのように運用されていくのかを見ていくことで、アジアの都市間競争の行方を考えるヒントも得られそうです。
Reference(s):
Shanghai's Pudong unveils new measures to attract global talent
cgtn.com








