中国の科学者Lu Qi氏、UNEP最高環境賞「Champions of the Earth」2024受賞
リード:2024年に国連環境計画(UNEP)が発表した最高環境賞「Champions of the Earth」を、中国の科学者Lu Qi氏が受賞しました。砂漠化対策や大規模な植林プロジェクトを支えてきた研究者の取り組みは、いま世界が直面する土地劣化や干ばつの課題を考えるうえで、2025年の現在も重要な示唆を与えています。
UNEP「Champions of the Earth」とは何か
「Champions of the Earth Award」は、国連環境計画(UNEP)が授与する最高位の環境賞で、地球環境と人々の暮らしを守る先駆的な取り組みを顕彰するものです。2005年の創設以来、これまでに122人・団体が表彰されてきました。
2024年の受賞者は6人・1団体で、土地劣化や干ばつ、砂漠化といった地球規模の課題に対する「卓越したリーダーシップ、大胆な行動、持続可能な解決策」が評価されています。
中国の科学者Lu Qi氏、科学・技術革新部門で受賞
中国の科学者Lu Qi氏は、2024年の「Champions of the Earth Award」のうち、サイエンス&イノベーション(科学と革新)分野で受賞しました。発表は2024年、UNEP本部があるケニアの首都ナイロビで行われています。
UNEPによると、Lu氏は約30年にわたり、科学と政策の両面から中国の環境悪化を食い止め、砂漠化の進行を抑える取り組みを牽引してきました。これは、単なる研究にとどまらず、政策立案や現場の実践と結びついた長期的な取り組みとして評価されています。
世界最大規模の植林プロジェクトを支えた研究者
UNEPの発表では、Lu氏が「世界最大の植林(アフォレストレーション)プロジェクト」の実施に重要な役割を果たしてきたことが強調されています。植林は、砂漠化の進行を抑えるだけでなく、土壌の保全、生物多様性の回復、二酸化炭素吸収源の拡大といった多面的な効果をもつ取り組みです。
さらにLu氏は、中国科学院林業研究機関のチーフサイエンティストとして、砂漠化、土地劣化、干ばつに取り組むための専門家ネットワークや国際的なパートナーシップの構築にも関わってきました。これは、一国の努力を越え、各国・各地域が知見と技術を共有するための基盤づくりでもあります。
「砂との闘い」を支える科学技術
Lu氏は、中国の国営通信社への声明で、「今回の受賞は中国の林業・草地分野にとって最高の評価であり、特に砂漠化対策に従事してきた科学者・技術者たちへの大きな励ましだ」と述べています。
また、中国が過去70年にわたり進めてきた砂漠化対策は、科学技術の進展と、それを支えるエコロジー(生態)重視の方針に支えられてきたと強調しました。単に「砂を止める」だけでなく、地域ごとの自然条件を踏まえ、長期的に持続可能な形で土地を回復させる発想が重要だと示唆しています。
「二つのグリーンウォール」を地球に——広がる協力構想
Lu氏は、今回の受賞によって、特に若い世代の科学者や現場の実務者が、地球環境保護や国連の「2030アジェンダ」の達成に一層積極的に関与することを期待すると述べています。
さらに、砂漠化を抑える技術やノウハウを、より多くの地域で共有する必要性にも言及しました。その手段として、中国の「Belt and Road Initiative(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード構想)」や「Global Development Initiative(グローバル発展イニシアチブ)」などの枠組みを通じた国際協力への期待を示しています。
Lu氏は、「ともに地球に二つの『グレート・グリーンウォール(巨大な緑の壁)』を築き、より緑豊かな地球への中国の貢献を実現したい」と語りました。この言葉は、地球規模で砂漠化を食い止め、荒廃した土地を再び緑で覆っていこうという象徴的なメッセージといえます。
他地域の受賞者が示す「土地を守る」世界的潮流
2024年の「Champions of the Earth Award」は、中国だけでなく、世界各地で土地とコミュニティを守ってきた人々と団体を称えています。受賞者には次のような顔ぶれが含まれます。
- ブラジルの先住民担当大臣であるSonia Guajajara氏
- 米国の先住民族の権利擁護に取り組むAmy Bowers Cordalis氏
- ルーマニアの環境保護活動家Gabriel Paun氏
- インドの生態学者Madhav Gadgil氏
- エジプトの持続可能な農業イニシアチブ「SEKEM」
地域も立場も異なる受賞者に共通しているのは、土地や川、海といった基盤となる生態系を守ることが、人々の暮らしと文化、経済の土台になるという視点です。環境保護はもはや「余裕がある国だけの課題」ではなく、すべての国と地域に共通する生存条件に近いテーマになりつつあります。
UNEPトップが語る危機感と希望
UNEPのインガー・アンダーセン事務局長は、2024年受賞者の功績について、人類が直面する危機と、それを乗り越える可能性を次のように語っています。
「すでに世界の陸地の約4割が劣化しており、砂漠化は進行し、壊滅的な干ばつは頻度を増しています。しかし、適切な政策、科学の飛躍的進歩、制度改革、市民の行動、そして先住民のリーダーシップと知恵があれば、私たちは生態系を回復させることができます」。
Lu氏のような科学者や、各地で土地を守る実践者の取り組みは、この「回復可能性」を具体的に示す事例といえます。
日本の読者への問いかけ——遠い砂漠の話で終わらせないために
日本にいると、砂漠化は「どこか遠い国の問題」に見えがちです。しかし、土地の劣化という意味では、山林の管理、農地の維持、都市のヒートアイランド対策など、国内にも通じる課題が少なくありません。気候変動が進む中で、干ばつや豪雨など極端な気象が増えている点も世界共通です。
今回の受賞ニュースが示しているのは、次のようなシンプルなメッセージかもしれません。
- 科学と政策、現場の知恵をつなぐことで、土地と生態系は「守り直す」ことができる
- 長期的な視点に立った取り組みは、数十年後に大きな成果となって現れる
- 技術や経験を国境を越えて共有することが、地球規模の課題解決には欠かせない
2025年を生きる私たちにとって、このニュースは単なる受賞報道ではなく、「自分の暮らしや仕事の中で、どんな形で環境保全に関わることができるのか」を静かに問いかける話題でもあります。
国際ニュースをフォローすることは、遠い世界の出来事を知るだけでなく、「地球のどこかで起きている変化が、自分の地域の未来とどうつながるのか」を考えるきっかけにもなります。Lu Qi氏の受賞は、その入口の一つといえるでしょう。
Reference(s):
Chinese scientist wins 2024 UNEP's Champions of the Earth Award
cgtn.com








