ディン・リレンが第12局で勝利 フィデ世界選手権は6対6のタイに
シンガポールで開催中のフィデ(国際チェス連盟)世界選手権で、現世界王者のディン・リレンが第12局に勝利し、インドの挑戦者グケシュ・ドマラジュとのタイトルマッチを6対6のタイに戻しました。残り2局で、世界一の座をかけた戦いはあらためて振り出しに戻った形です。
第11局の黒星から一夜で立て直し
前日の日曜日に行われた第11局でディンは敗れ、スコアは5対6とグケシュが一歩リードしていました。残りはわずか3局という厳しい状況の中で迎えた第12局は、ディンにとって「負けられない一戦」でした。
それでもディンは、過度に力むことなく自分のリズムを貫いたといいます。「昨日の対局は受け止めるのが難しいものでしたが、いつも通りのルーティンを保ち、この重要な一局に向けて気持ちを切り替えようとしました」と対局後に語りました。
イングリッシュ・オープニングから主導権を握る
第12局で白番を持ったディンは、イングリッシュ・オープニング(1.c4から始まる序盤戦略)を採用しました。この形を選ぶのは今大会で2度目で、緻密なポジション戦を得意とするディンらしい選択です。
これに対しグケシュは、クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド(d5とe6で中央を固める構え)を目指す形で応じました。ディンはそこからレティ・セットアップと呼ばれる配置に組み替え、キング側のビショップを長い対角線に展開するフィアンケットを選びます。
序盤から中盤にかけては両者とも慎重な指し回しで、評価値上もほぼ互角の展開が続きました。お互いに無理をせず、「どこで仕掛けるか」を探る神経戦が続きます。
勝負を分けた18.d4 中央突破で形勢逆転
均衡が崩れたのは中盤戦に入ってからでした。グケシュは、ディンの陣形の中でやや弱点となっていたd3のポーン(歩兵の駒)を集中的に狙い始めます。いわゆる「後ろに取り残されたポーン」を攻めて、長期戦で優位を築こうとする狙いでした。
しかし、ディンはこの構想を事前に読み切っていたかのように、タイミング良く18.d4と中央を突き出します。この一手でポーンの位置関係が一気に変わり、むしろディン側の中央ポーンが力を持つ展開にシフトしました。
以降は、中央のポーンとビショップ2枚の協力でディンが主導権を握ります。グケシュはポーンを2つ失ったあとも最善の守りを探し続けましたが、十分なディフェンスを構築することはできず、最終的にディンの勝利が決まりました。
- 第11局の黒星で追い込まれたディンが、第12局で勝利してタイに戻す
- イングリッシュ・オープニングからレティ・セットアップへと柔軟に構える戦略
- d3ポーンを狙うグケシュに対し、18.d4の中央突破で流れを変えたディン
- スコアは6対6となり、残り2局で新旧王者が激突する構図に
「コーヒーと軽食」で整えた王者のメンタル
注目されたのは盤上の読みだけでなく、メンタル面の立て直し方です。ディンは「今日は対局前にコーヒーを一杯飲み、途中でエネルギーを保つために軽食もとりました。とても良い内容で指せたと思いますし、いくつか良い手も見つけられました」と、淡々としながらも手応えを口にしました。
前日の敗戦を引きずらず、あくまで「いつも通り」を意識したことが、結果的に最高のパフォーマンスを引き出した形です。長丁場のタイトル戦では、こうした細かなコンディション調整が勝負を左右することも少なくありません。
グケシュ「後半戦の内容には手応え」
一方のグケシュは、敗戦を冷静に受け止めています。「後半戦では多くの対局でチャンスがありました。今日は明らかに内容が悪かったですが、あまり深刻には受け止めていません。悪い対局は起こるものです」と話し、精神的なダメージは最小限に抑えようとする姿勢を見せました。
さらに「後半全体を見れば、お互いに前半より良いプレーができていると思います。6対6という結果は全体としては妥当ですが、昨日の時点で自分がリードしていただけに、この一局を落としたのは少し残念です」と続け、内容面への自信と、勝負の厳しさの両方をにじませました。
アジア勢同士の頂上決戦 残り2局の見どころ
中国出身のディン・リレンと、インドの新星グケシュ・ドマラジュという、アジアを代表するトップ棋士同士による世界タイトル戦は、第12局を終えて6対6の完全なタイ。残り2局で決着がつかなければ、タイブレーク(早指しなどによる決定方式)にもつれ込む可能性もあります。
第12局の内容からは、
- ディンはポジション重視の緻密な構想力と、要所での読みの深さ
- グケシュは、わずかな弱点も逃さず攻めに転じる勝負感
といった、それぞれの持ち味があらためて浮き彫りになりました。両者とも「後半戦の方が内容は良い」と感じていることからも、終盤に向けてさらに質の高い対局が期待されます。
この記事の時点でスコアは6対6。ここから先の一手一手が、そのまま「世界王者」の称号に直結していきます。オンライン中継やSNSを通じて対局をフォローしながら、自分ならどこで仕掛けるか、どの一手を選ぶかを考えてみると、この国際ニュースはより立体的に見えてくるはずです。
Reference(s):
Ding Liren defeats Gukesh to tie battle at FIDE World Championship
cgtn.com








