砂漠を25キロ後退させた緑の奇跡 中国・シャポトウの挑戦 video poster
黄河と騰格里砂漠がぶつかる中国北西部・シャポトウで、砂漠化を食い止める「緑の奇跡」が進み、砂漠を25キロ押し戻した事例が注目されています。
黄河と騰格里砂漠が出会う「シャポトウ」とは
シャポトウは、中国北西部の中衛市に位置し、騰格里砂漠の端と黄河が出会う場所です。かつてこの地域では、絶えず移動する砂丘が農地をのみ込み、住民の暮らしや交通を脅かしてきました。
砂嵐による被害や農地の埋没は、地域経済だけでなく、人々の生活そのものを揺るがす深刻な問題でした。砂漠化対策は、シャポトウにとって「生き残り」をかけた長期的な課題だったといえます。
ワラ格子と砂固定システムによる砂漠化対策
こうした状況に対し、シャポトウでは、地域の人びとが長年にわたって砂漠化対策に取り組んできました。象徴的なのが、砂漠化対策の国際ニュースでもたびたび紹介される「ワラ格子バリア」と呼ばれる方法です。
ワラ格子バリアとは、砂地にワラを格子状に並べて固定し、地表を覆うことで風の勢いを弱め、砂の移動を抑える仕組みです。シンプルに見えますが、広大な砂地に人の手で格子を敷き詰める作業は、時間も労力もかかる地道な取り組みです。
さらに、シャポトウでは、ワラ格子によって安定した地表に植林や植草を組み合わせる「砂固定システム」も導入してきました。砂を物理的に押さえ込みつつ、植生を増やして根で土をつかませることで、砂地を「生きた土地」へと変えていく発想です。
数字で見る「緑の奇跡」 シャポトウの成果
こうした砂漠化対策は、数十年という時間軸で着実な成果を上げています。中衛市全体では、約168万ムーの砂漠のうち、これまでに150万ムー(約10万ヘクタール)が造林などによって整備されました。
ムーは中国で使われる面積の単位で、150万ムーは東京23区のおよそ半分に近い広さに相当します。その広さの砂地が、少しずつ緑へと変わってきたことになります。
その結果、中衛市の植生被覆率は、かつて1%にも満たなかった状態から、現在は42%にまで増加しました。単なる「点」の緑化ではなく、「面」としての緑が広がりつつあることが分かります。
さらに、騰格里砂漠の前線は、およそ25キロメートルも後退したとされています。かつては砂丘に埋もれる危険にさらされていた土地が、今では農地や緑地として利用できるようになり、地域の暮らしと生態系の両方を守る役割を果たしています。
COP16と中国の砂漠化対策の位置づけ
2024年12月2日から13日にかけて、サウジアラビアのリヤドでは、国連砂漠化対処条約(UNCCD)の第16回締約国会議(COP16)が開催されました。197の締約国から代表が集まり、土地劣化や砂漠化、干ばつといった課題にどう向き合うかが議論されました。
この会議に合わせて紹介された「グリーン・ミラクル」シリーズでは、中国本土各地の砂漠化対策の現場が取り上げられ、その一例としてシャポトウの取り組みも注目されました。砂漠を25キロ押し戻し、植生被覆率を大きく高めたシャポトウは、土地の再生と自然との共生を志向する取り組みの象徴的なケースといえます。
砂漠化は特定の地域だけの問題ではなく、土地の劣化や干ばつを通じて、食料安全保障や移住、経済にも影響を与える地球規模の課題です。その中で、シャポトウのような事例は、技術とコミュニティの力を組み合わせることで、過酷な自然条件を前向きに変えていく可能性を示しています。
シャポトウから見える、これからの問い
シャポトウの「緑の奇跡」は、壮大な成功物語として語られる一方で、私たちにいくつかの問いも投げかけています。
- 時間をかけて何を守るのか:数十年単位で続けられた砂漠化対策は、短期の成果だけでは測れない取り組みです。私たちの社会は、どこまで長期の視点で自然環境と向き合えるのでしょうか。
- 技術と地域コミュニティの役割:ワラ格子バリアのような技術的工夫に加え、実際に作業にあたるのは地域の人びとです。制度や技術とともに、現場で支える人をどう支えていくかも重要なテーマです。
- 他地域への応用可能性:土地の条件や気候が違えば、同じ方法がそのまま適用できるわけではありません。それでもシャポトウの経験は、「身近な環境をどう再生するか」を考えるうえで、多くの示唆を与えてくれます。
砂漠を25キロ押し戻し、ほとんど緑のなかった土地に植生を取り戻したシャポトウ。そこにあるのは、壮大な自然との対立ではなく、人と自然が折り合いを探りながら共に生きていこうとする、静かな挑戦です。
国際ニュースとしてのスケール感を持ちながらも、砂漠化対策の現場での一歩一歩は、ごくローカルで具体的な行動の積み重ねです。シャポトウの物語は、私たちの日常の中で「どんな小さな一歩なら踏み出せるか」を考えるきっかけにもなりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








