三世代がつなぐマカオのボクシング 若きアルビンの初プロ戦にかける夢
カジノや観光のイメージが強いマカオで、ひそかに世界を目指す三世代のボクサーと指導者がいます。大学を卒業したばかりのアルビン・サリナスさん、その師匠で元アジア王者のン・クオクコンさん、そして90歳の名トレーナー、チャン・イオクセンさんです。3人はボクシングでマカオに栄光をもたらすという同じ夢に向かって、2025年のいまもリングに立ち続けています。
大学卒業後、「伝説」を目指すアルビン
アルビン・サリナスさんは、大学生活を終えたあと、新しい夢を追い始めました。それは本物のボクシングレジェンドになることです。安定した就職の道ではなく、過酷なトレーニングと結果の世界へ踏み出す選択は、簡単なものではありません。
プロとして成功するためには、日々の練習に全てを注ぎ込む覚悟が求められます。友人との時間や趣味、自由な休日の多くをあきらめながら、アルビンさんは初めてのプロの試合に備え、体力と技術、そしてメンタルを磨き続けています。
元アジア王者ン・クオクコン「ザ・マカオ・キッド」
アルビンさんのコーチを務めるのが、元アジア王者のン・クオクコンさんです。現役時代にはザ・マカオ・キッドという愛称で知られ、マカオのボクシング界をけん引してきた存在です。現在は、自らの経験を次の世代に伝えることに力を注いでいます。
ンさんは、勝つために必要なのは才能だけではなく、小さな積み重ねと忍耐だとよく語ります。シャドーボクシングの一つひとつの動き、フットワークの角度、ジャブの打つ位置。その細部にまで目を配りながら、アルビンさんのポテンシャルを引き出そうとしています。
90歳、60年以上リングを見守るチャン・イオクセン
3人目のキーパーソンが、トレーナーのチャン・イオクセンさんです。90歳になったいまもジムに立ち、若いボクサーたちを指導し続けています。ボクシングのリングは英語でsquared circle(四角い円)とも呼ばれますが、チャンさんは60年以上、その四角い円の内側と外側で選手たちを見守ってきました。
長年の経験から、パンチのテクニックだけでなく、スタミナ配分や相手との距離感、リング上で心を乱さない呼吸法など、目に見えにくい部分も含めてアドバイスします。高齢でありながら、一つひとつの動きを自ら示すその姿は、若いボクサーにとって生きた教科書のような存在です。
三世代が共有するボクシングでマカオに栄光を
アルビンさん、ンさん、チャンさんの3人に共通するのは、ボクシングでマカオに栄光をもたらしたいという思いです。多くのスター選手を輩出してきた大国と比べれば、マカオのボクシング環境は決して恵まれているとはいえません。それでも彼らは、日々の練習と試合を通じて一歩ずつ前に進もうとしています。
- マカオから国際舞台で戦えるボクサーを育てること
- 若い世代に、スポーツを通じた規律や集中力の大切さを伝えること
- 地域の人びとに、ボクシング観戦の楽しさと感動を届けること
こうした目標は、単なる勝敗やタイトルの数だけでは測れません。ジムで汗を流す若者たちの姿そのものが、マカオのスポーツ文化を少しずつつくり上げていると言えます。
犠牲と絆がつくる、初プロ戦への道
プロを目指すボクサーの道には、つねに犠牲がつきまといます。早朝のロードワーク、厳しい食事制限や減量、ケガへの不安。周囲の同年代が普通の学生生活や社会人生活を送るなかで、自分だけが別のリズムで生きているように感じることも少なくありません。
アルビンさんも、そうした現実と向き合いながら、初めてのプロの試合に向けて準備を進めています。その背中を支えているのが、ンさんとチャンさんという二人の指導者の存在です。厳しい言葉をかけるときもあれば、試合前に静かに肩を叩くだけのときもある。しかし、そのすべてが一緒に夢を見ているという無言のメッセージになっています。
マカオから世界へ――私たちへの問いかけ
2025年のいま、スポーツニュースでは華やかなスター選手の結果が注目されがちです。その一方で、マカオの小さなジムでは、三世代が同じ夢を追い続けています。そこにあるのは、派手さよりも、毎日の地道な努力と、師弟の強い信頼関係です。
もしあなたがアルビンさんの立場だったら、大学卒業後に安定した道ではなく、険しいリングへの挑戦を選べるでしょうか。もしあなたがンさんやチャンさんのような立場なら、次の世代のためにどれだけ時間と情熱を注げるでしょうか。
マカオのジムで続くこの挑戦は、遠い国のスポーツ物語であると同時に、夢と現実の折り合いをどうつけるかという私たち自身への問いでもあります。三世代が追い続けるボクシングの夢は、2025年を生きる私たちに、自分の物語をどう描くのかを静かに問いかけています。
Reference(s):
cgtn.com








