中国・海南省で無痛分娩が保険適用に 出産支援強化の狙いは
中国南部の海南省で、出産時の無痛分娩などを医療保険で手厚く支える取り組みが進んでいます。費用負担を減らし、安心して子どもを産み育てられる環境づくりを目指す中国の最新動向を見ていきます。
300元で無痛分娩 にわかに現実的になった選択肢
海南医学院第一附属病院で出産したフー・シュンメイさんは、分娩時の痛みを和らげる無痛分娩の費用が医療保険で大きくカバーされると知り、ほっとしたと話しています。本来なら約2,000元かかるところ、自己負担は約300元(約42ドル)に抑えられたといいます。
同病院は、海南省で無痛分娩を提供する試行医療機関の一つで、現在はこの無痛分娩が医療保険の給付対象に含まれています。フーさんは「費用が大幅に抑えられ、心理的な負担も軽くなった」と語っています。
海南省で広がる「痛みの少ない出産」
海南省は、2025年8月に、出産時の適切な無痛分娩を医療保険の償還対象に加えた複数の地域の一つとなりました。中国では2018年に全国の試行病院で無痛分娩を推進する取り組みが始まり、一部地域では2021年から医療保険による費用補助が導入されています。
海南医療保障研究院の研究者イエ・ユン氏によると、出産にかかる費用の大部分は医療保険基金でカバーできるようになってきており、「この取り組みの拡大は、妊婦の経済的負担を直接的に軽減する」と説明しています。
海南省で無痛分娩が医療保険の対象となってからは、この方法を選ぶ女性の数が約2倍に増えたと、海南婦幼保健医療センターは述べています。今後、痛みのコントロールを選ぶ人がさらに増えれば、「出産は怖い」というイメージの緩和にもつながると見られています。
中国全体で進む出産支援政策
こうした動きは、海南省だけの話ではありません。中国では2018年から、全国の試行病院で無痛分娩を推進する国家レベルの取り組みが展開され、2021年以降、一部地域で医療保険による費用補助が始まりました。
今年10月には、中国国務院が出産支援サービスの強化に向けた13項目の具体策を示す文書を公表しました。その内容には、出産前後の支援サービスの充実に加え、保育サービスの拡大、教育・住宅・雇用分野での支援、そして出産に前向きになれる社会環境の整備などが含まれています。
注目されるのは、適切な無痛分娩と生殖補助医療(体外受精など)のサービスを、医療保険の償還対象とする方針が明記された点です。これにより、経済的な理由で治療や無痛分娩をあきらめていた人にとっても、選択肢が広がることが期待されています。
費用と人材の課題 それでも広がる可能性
一方で、無痛分娩の普及には課題もあります。中国国家衛生健康委員会が2022年に行った研究によると、中国の無痛分娩の実施率は30%にとどまり、先進国で見られる80〜90%という水準と比べると、まだ低い段階にあります。
イエ・ユン氏は、その背景として以下の点を挙げています。
- 患者側の費用負担が相対的に高いこと
- 麻酔科医の不足
- 無痛分娩に対応するための追加スタッフや設備など、病院側のリソースが必要であること
今回のように医療保険による補助が広がれば、費用面のハードルは下がりますが、同時に医療人材や設備の整備も進めていく必要があります。イエ氏は、病院が無痛分娩の提供体制強化に向けて追加の資源を投入することも重要だと指摘しています。
「産みやすく、育てやすい」社会へ
イエ・ユン氏は、新華社の取材に対し、無痛分娩をはじめとする出産支援策の拡充は、出産サポート体制の改善と人口発展戦略の最適化につながると述べています。
今回のプログラムには、より多くの妊婦が無痛分娩を選びやすくすることで、次のような効果を期待する狙いがあります。
- 出産時の痛みや不安を軽減し、心理的な負担を減らす
- 産後うつのリスクを下げる
- 家族関係の安定や調和を促し、家庭全体の安心感を高める
- 出産を前向きに捉えられる「出産フレンドリー」な社会づくりを後押しする
中国では、医療保険の仕組みを通じて、出産や子育ての負担を社会全体で支える方向性が明確になりつつあります。海南省の取り組みは、その具体的な一歩として位置づけられます。
押さえておきたいポイント
- 海南省では無痛分娩が医療保険の対象となり、自己負担が約2,000元から約300元へと大幅に軽減された事例が出ている
- 中国全体では、2018年から無痛分娩の推進が進み、2025年10月には国務院が包括的な出産支援策13項目を発表した
- 無痛分娩の普及率はまだ30%にとどまるが、保険適用や医療体制の整備が進めば、今後さらなる拡大が見込まれる
- 費用負担軽減に加え、産後うつの予防や家族の安定にもつながる取り組みとして位置づけられている
出産や子育てをどう社会で支えるかは、多くの国と地域が直面する共通のテーマです。海南省の事例は、医療制度を通じて「痛み」や「不安」という目に見えにくい負担に向き合おうとする動きとして、今後も注目されそうです。
Reference(s):
cgtn.com








