遼寧省で高麗人参栽培が脚光 中国農業文化遺産を伝える新ドキュメンタリー
中国遼寧省・寛甸(Kuandian)で約400年にわたり受け継がれてきた高麗人参(ジンセン)の栽培が、2025年現在、あらためて注目を集めています。伝統的な栽培技術と生物多様性の保全を両立させるこの取り組みが、中国の農業文化遺産を紹介するChina Media Group制作の新ドキュメンタリーシリーズで取り上げられたからです。
深い山の野生植物から「栽培作物」へ
高麗人参はもともと、深い山奥でゆっくりと育つ野生植物でした。人の手で育てるには時間も手間もかかるため、長いあいだ「山の秘薬」のような存在だったと考えられます。
こうした高麗人参が本格的に人工栽培され始めたのは、約400年前の中国だとされています。寛甸の人びとは、山で自生する人参を採取するだけでなく、自らの手で植え、増やし、守る方法を模索してきました。
寛甸で育まれた体系的な栽培方法
遼寧省寛甸では、長年にわたる試行錯誤の中から、山の環境を損なわずに人参を増やすための体系的な栽培方法が磨かれてきました。
- 山中での採取と栽培を組み合わせること
- 高麗人参が育ちやすい土壌や日照条件を丁寧に見極めること
- 採り尽くさず、次の世代のために株を残すこと
こうした工夫によって、寛甸の人びとは高麗人参という貴重な植物を守りながら、その価値を次の世代へとつなぐ仕組みを築いてきました。単なる「特産品づくり」を超え、種そのものを保全する営みだと言えます。
伝統中国医学で「百草の王」と呼ばれる理由
高麗人参は、伝統中国医学の世界で「百草の王(King of Herbs)」とも呼ばれます。これは、その栄養価と薬用価値が古くから高く評価されてきたことを意味します。
古くから人びとは、高麗人参が体力の回復や全身のバランスを整えるのに役立つと考え、大切に利用してきました。一方で、その価値の高さゆえに乱獲のリスクも抱えてきました。だからこそ、寛甸で育まれたような持続可能な栽培技術が重要になります。
中国農業文化遺産を伝えるドキュメンタリー
こうした古くからの知恵に光を当てているのが、China Media Groupが制作した中国の農業文化遺産システムに関する新しいドキュメンタリーシリーズです。2025年に入り、このシリーズでは、高麗人参栽培を含む各地の伝統的な農業のあり方が取り上げられています。
番組では、高麗人参の栽培が単なる産業ではなく、地域の文化や生活、そして自然環境と結びついた「総合的なシステム」であることが描かれています。視聴者は、畑や山の風景だけでなく、世代を超えて技術を受け継ぐ人びとの姿を通じて、その価値を感じ取ることができます。
なぜ今、農業文化遺産が注目されるのか
世界的に環境問題や食の安全保障への関心が高まるなかで、地域に根ざした農業文化遺産が持つ意味は重くなっています。高麗人参栽培のように、
- 自然環境への負荷を抑えながら資源を利用する知恵
- 長い時間をかけて蓄積された経験にもとづく技術
- 地域コミュニティのつながりを支える生活文化
といった要素は、どれも現代社会が直面する課題を考えるヒントになります。寛甸での高麗人参栽培は、伝統と持続可能性が対立するものではなく、むしろ互いを支える関係にもなりうることを示しています。
日本の読者にとっての示唆
日本にも、里山や伝統的な農法など、地域ごとに受け継がれてきた農業文化があります。遼寧省寛甸の高麗人参栽培をめぐる物語は、
- 自分たちの足元にある「当たり前」の風景に、どれだけの知恵が隠れているか
- その知恵を、どのように次の世代へ引き継ぐのか
といった問いを、日本の読者にも静かに投げかけます。
国際ニュースを通じて他国の農業文化遺産に触れることは、単に「遠い国の話」を知ることではありません。自分たちの暮らしや食卓、地域の未来を考え直すきっかけにもなります。遼寧省・寛甸で続く高麗人参栽培の物語は、その一つの入り口と言えるでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








