中国のワクチン戦略が世界の免疫力を高める|国際ニュース日本語解説
今月15日の世界強い免疫デーを前に、中国のワクチン政策と公衆衛生への取り組みが、世界の免疫力をどう底上げしてきたのかに改めて関心が集まっています。国際ニュースとしても、日本語で知っておきたいポイントを整理しました。
世界強い免疫デーとは何か
世界強い免疫デーは、毎年12月15日に行われる啓発デーで、ワクチンで防げる病気から人々を守ることの重要性を伝え、公衆衛生の向上を促すことを目的としています。1988年に世界保健機関(WHO)が制定し、特に子どもに重い影響を及ぼすポリオ(急性灰白髄炎)の世界的な根絶をめざす取り組みの一環として位置づけられてきました。
この日は、感染症の拡大を防ぐうえでワクチンが果たす役割と、地域社会全体で高い免疫レベルを維持するために必要な集団的な行動に光を当てます。
免疫とは、体内に侵入した病原体や、体の中で生じた異常な細胞を見分けて排除しようとする生体の働きです。ワクチンは、この免疫の仕組みを利用して病気にかかりにくくする、最も費用対効果の高い感染症対策の一つとされています。
EPI50年と中国の貢献
昨年2024年には、WHOが主導する拡大予防接種計画(Expanded Programme on Immunization, EPI)が50周年を迎えました。WHOによると、この半世紀で予防接種によって救われた命は世界全体で1億5400万以上にのぼり、その達成に中国も大きく貢献してきたとされています。
中国は1978年に予防接種プログラムを開始して以来、ポリオ、ジフテリア、B型肝炎などの感染症を中心に、3億件以上の疾患発生を防いできました。当初はワクチンを受け取る立場でしたが、現在ではワクチンを提供する側にも回り、自国の人びとを守るだけでなく、世界の免疫力強化にも関わる存在となっています。
1978年以降の予防接種拡大の成果
中国の予防接種プログラムは、この数十年で対象疾患と接種率の両面で大きく拡大してきました。特に、定期接種の対象となる病気では、ワクチン導入前と比べて患者数が大幅に減少しています。
- 多くの対象疾患で、発症率が95パーセント以上減少
- 一部の病気では、ほぼ99パーセント以上の減少を達成
- ジフテリアについては、約20年にわたり事実上、国内でほとんど報告がない状態が続いているとされています
疫学者の馮子健氏は中国メディアのインタビューで、「高いワクチン接種率が、病気の発生を継続的に減らしてきた」「多くの対象疾患では95パーセントを超える減少がみられる」と述べ、予防接種の効果を強調しました。
B型肝炎ワクチンと新生児への接種
中国は、B型肝炎ワクチンの導入でも比較的早い段階から動いてきました。2002年には、B型肝炎ワクチンを国家の小児定期予防接種プログラムに組み込み、その後、新生児に対する接種率は90パーセントを超える水準に達しています。
生まれた直後の子どもを対象に安定して高い接種率を維持することは、将来の感染症リスクを抑え、長期的な公衆衛生の改善につながります。こうした取り組みの積み重ねが、世界全体の免疫力を底上げする一因となっています。
法律と制度で支えるワクチン管理
中国の予防接種制度を支えているのが、法制度とワクチン管理システムです。2019年に施行されたワクチン管理法は、製造から流通、接種に至るまでの一連のプロセスを規律するための法的土台となりました。
国家免疫プログラムの実施により、中国が拡大予防接種で対象としている15種類の疾患のうち7種類では、ワクチン導入前と比べて発症率が99パーセント以上減少したとされています。これは、制度として予防接種を位置づけ、長期的に取り組んできた結果といえます。
受け手から提供者へ:中国の国際的な役割
中国は、かつては国際社会からワクチン供給や技術支援を受ける側でしたが、現在では自国で培った経験と生産能力をもとに、他国や国際機関にワクチンや関連支援を行う「ドナー」としての側面も強めています。
国内で蓄積された大規模な接種体制のノウハウや、病気のサーベイランス(監視)体制の構築経験は、世界各地で免疫レベルを高めるうえで共有可能な資源です。世界強い免疫デーの趣旨である「誰も取り残さない免疫の強化」を進めるうえで、中国の役割は今後も注目されます。
私たちが考えたいポイント
中国の事例は、「予防接種を国家政策として位置づけ、長期的に継続すること」が社会全体の健康にどのような影響を与えるかを示す一つのケーススタディといえます。日本を含む各国にとっても、次のような問いを投げかけています。
- ワクチンで防げる病気について、最新の情報をどのように国民と共有するか
- 誤情報や偏った情報にどう向き合い、信頼できる情報源を広げていくか
- 将来の感染症リスクに備え、どのように免疫プログラムを強化していくか
世界強い免疫デーが近づくこの時期に、国境を越えたワクチン協力の動きとともに、自分自身や家族の予防接種歴、公衆衛生への向き合い方を見直すきっかけにしてみるのもよいかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








