北京の市民ホットラインが広場ダンス騒音を解決 指向性音響で共存へ video poster
中国・北京の金融街エリアで、夜な夜な集まるアマチュアダンサーと周辺の住民が、騒音をめぐって対立していました。この問題に、市民ホットラインと最新の指向性音響技術を組み合わせて「 win-win 」の解決策を見いだした様子を、CGTNのドキュメンタリー番組『Hotline Beijing』が伝えています。本記事では、そのプロセスと都市ガバナンスの意味を、日本の読者の視点から整理します。
夜の広場ダンスが生んだ「にぎやかさ」と「悩み」
舞台となったのは、北京の金融街(ジンロンジエ)にある公共の広場です。ここは長年、仕事帰りの人びとが夜に集まり、音楽をかけて踊るアマチュアダンサーの定番スポットになってきました。
ところが、ダンスに使われる大音量の音楽が、周辺の住宅街にとっては深刻な騒音に変わります。特に問題となったのは、夜の時間帯に勉強する子どもたち。ドキュメンタリーによると、「宿題に集中できない」と訴える声も上がり、住民のストレスは次第に高まっていきました。
健康のために踊りたいダンサーと、静かな生活環境を求める住民。どちらの言い分にも一理があるだけに、対立は簡単には解決しません。住民たちは、北京市の「12345市民ホットライン」に相次いで苦情を寄せるようになりました。
市民ホットライン「12345」が受け止めた声
北京の「12345市民ホットライン」は、市民からの相談や苦情を一元的に受け付ける電話窓口です。番号一つで行政機関につながる仕組みは、市民の声を政策や現場に反映させるチャネルとして位置づけられています。
金融街の広場ダンスに関する苦情は、このホットラインを通じて積み重なっていきました。ドキュメンタリーでは、学校帰りの子どもたちが自ら状況を説明し、「静かに勉強できる環境がほしい」と訴える様子も描かれています。
通報を受けた地元の担当者たちは、広場へ足を運び、現場の状況を確認します。夜のにぎやかな雰囲気、踊りを楽しむ人びとの表情、そして周辺住民の困りごと。担当者は、一方の側の「我慢」を求めるのではなく、両者が納得できる解決策を探る必要性を感じていきます。
決め手は「指向性音響」 音の向きを変えて騒音を減らす
そこで登場したのが、指向性音響と呼ばれる最新の音響技術です。これは、音を特定の方向にだけ集中的に届ける仕組みで、あたかも「音のスポットライト」のように働きます。
従来のスピーカーは、音が全方向に広がりやすく、広場で流した音楽がそのまま周辺の住宅へ届いてしまいます。一方、指向性音響を使うと、ダンサーがいるエリアに向けて音を集中的に届けつつ、その周囲への拡散を大幅に抑えることができます。
ドキュメンタリーによれば、地元の担当者と科学者、技術者が協力し、広場の形や建物の配置を踏まえながら、スピーカーの位置や向きを調整していきました。その結果、ダンサーたちは従来と同じように音楽を楽しみながら踊ることができる一方で、住宅側では音量が大きく下がり、生活への影響が軽減されるようになりました。
「静けさ」と「にぎわい」を両立させる発想
この解決策が特徴的なのは、「音を小さくして我慢する」か「ダンスをやめる」といった二者択一ではなく、「音の向き」を工夫するという発想の転換にあります。
指向性音響は、商業施設や展示会などで、特定の場所だけに音声案内を届ける用途などで使われてきました。金融街の広場では、その技術をコミュニティの騒音問題に応用し、「楽しさ」と「静けさ」を両立させる試みが行われたことになります。
『Hotline Beijing』が映す、市民・科学者・行政の協働
CGTNのドキュメンタリー『Hotline Beijing』は、この一連のプロセスを通して、市民ホットラインが単なる苦情窓口ではなく、都市の課題解決をつなぐ「ハブ」として機能している姿を描いています。
番組の中では、
- ホットラインに寄せられた市民の声
- 現場を訪ねる担当者の姿
- 科学者や技術者による音響実験
- ダンサーと周辺住民が一緒に結果を確かめる場面
といったシーンが連続し、都市ガバナンスが「上からの指示」だけでなく、対話と技術によって形作られていく過程が可視化されています。
重要なのは、どちらか一方の「勝ち」ではなく、両者が納得できる「折り合いの付け方」を探った点です。広場は再び、ダンサーにとっても、住民にとっても、使いやすい公共空間へと近づいていきました。
日本の都市が学べるポイントは何か
日本でも、駅前のストリートライブ、観光地のにぎわい、商店街のBGM、深夜営業の店舗など、音をめぐる摩擦は少なくありません。北京の事例は、こうした課題に向き合ううえで、いくつかのヒントを与えてくれます。
1. 声を集約する窓口づくり
まず、市民の声を一元的に受け止めるホットラインの存在です。どこに相談すればよいか分からない状態だと、不満が蓄積する一方になります。番号や窓口を分かりやすく示し、「相談すれば動いてもらえる」という経験を重ねることが、信頼の土台になります。
2. 当事者同士の対話と「見える化」
次に、現場での対話です。北京の金融街では、ダンサーと住民の双方の立場を確認しながら、子どもの学習環境への影響など具体的な困りごとを共有していきました。これは、日本の自治体にとっても応用しやすいアプローチです。
3. 技術をうまく組み合わせる発想
そして、音響技術のようなテクノロジーを組み合わせる発想です。「静かにしてほしい」「いや、楽しみを奪わないでほしい」という対立を、単純なゼロサムで考えるのではなく、技術や配置の工夫で両立できないかを試す余地があります。
小さな広場から広がる、都市の共存のヒント
北京・金融街の一つの広場で生まれた解決策は、人口が密集する都市が直面する騒音問題に対して、静かながらも示唆に富む事例と言えます。2025年の今、各国・各地域の都市が似た課題に向き合う中で、市民ホットライン、対話、そして技術を組み合わせた取り組みは、参考になる部分が少なくありません。
あなたが暮らす街では、どんな「音のコンフリクト」が生じているでしょうか。北京の事例をきっかけに、「静けさ」と「にぎわい」をどう両立させるかを、身近な都市空間に引き寄せて考えてみるのもよさそうです。
Reference(s):
Hotline Beijing | A win-win solution for dancers and residents
cgtn.com








