中国の低空経済が急成長 ドローン配達とeVTOLが生む新質生産力
2023〜2024年にかけて、中国でドローン配達や空飛ぶタクシーなどの「低空経済」が急成長しました。その動きは今も中国経済の重要なテーマとなっており、技術革新を通じて新質生産力を育てようとする政策と結びついています。
深圳で日常化するドローン配達
南部の経済都市・深圳の公園では、ドローンの荷物受け取りポイントが市民の「映えスポット」になっています。利用者は専用のコードを読み取って注文するだけで、約30分後にはドローンが軽食や飲み物を届けてくれます。
このサービスを運営する中国のオンラインプラットフォーム、美団(メイトゥアン)は、深圳市内で約30のドローン配達ルートを整備し、これまでに30万件以上の注文をさばいてきました。オフィスビルや住宅街、観光地、市民公園、大学キャンパスなど、日常生活のさまざまな場面をカバーしています。
低空経済とは何か 新質生産力の「実験場」
中国で「低空経済」と呼ばれているのは、従来の航空ビジネスに加え、ドローンなどの低空飛行体を基盤とする製造・サービス全般を指します。物流、観光、都市交通、インフラ点検、災害救援など、多様な用途が含まれます。
最近の中央経済工作会議では、科学技術イノベーションを通じて新質生産力を育て、現代的な産業体系を構築する方針が打ち出されました。低空経済は、その先行分野のひとつと位置づけられ、政府活動報告にも初めて明記されています。
- 低空観光向けの大型飛行船
- 宅配や都市内輸送に使われる無人航空機(UAV)
- 都市間を結ぶ電動垂直離着陸機(eVTOL)のエアタクシー
- 空撮や設備点検、緊急時の救援・監視
こうした分野は、デジタル技術とリアルな移動・物流が重なるため、新しい産業と雇用を生み出す「実験場」になっています。
数字で見る低空市場のポテンシャル
中国工業情報化部系の研究機関の報告によると、低空経済関連の市場規模は2023年に5059.5億元(約709億ドル)に達しました。2026年には1兆元を超えるとの予測も示されており、成長余地の大きさがうかがえます。
機体の普及も加速しています。中国民用航空局(CAAC)によれば、2024年上半期だけで約60万8,000機の無人航空機(UAV)が新たに登録されました。これは2023年末時点の登録数から48%の増加で、CAACの宋志勇局長は「中国の低空経済が急速な発展段階に入ったことを示すデータだ」と述べています。
- 2023年の低空経済市場:5059.5億元
- 2026年には1兆元超と予測
- 2024年上半期の新規登録UAV:約60万8,000機(2023年末比48%増)
eVTOLとヘリが変える都市間移動
2024年2月には、5人乗りの電動垂直離着陸機(eVTOL)が、深圳から近隣都市・珠海のフェリーターミナルまでの初の都市間エアタクシー実証飛行を行いました。自動車では2時間以上かかる行程を、約20分で結んだとされています。
同じ年の8月には、江蘇省崑山の空港から上海浦東空港へ向かう商用旅客ヘリコプターも運航され、時速200キロ近い巡航速度で都市間を結びました。こうした取り組みは、中国の都市群のあいだを「空の路線」で結ぶ新たな移動インフラの可能性を映し出しています。
地上の交通管理でも、ドローンの存在感が高まっています。各地では、事故対応や交通整理、車線規制、交通量の把握などを目的とした「ドローンパトロール」や「空の交通警察」が登場しつつあります。
衛星測位システムの北斗(BeiDou)に加え、人工知能(AI)や画像認識技術を組み合わせることで、およそ8割のドローンが自律飛行での点検業務をこなせるようになっています。現場に人が足を運ばなくても、映像やデータを通じて状況を把握できるため、安全性と効率の両面でメリットがあります。
新質生産力としての意味と、日本への問い
中国が掲げる「新質生産力」とは、単に生産量を増やすのではなく、科学技術イノベーションやデジタル化を通じて質の高い成長を実現する力を指しています。低空経済は、ドローンやeVTOLといった新技術、AIや衛星測位の高度な活用、そしてそれらを支える産業・規制の整備が一体となった象徴的な分野と言えます。
市民から見れば、「30分で届くドローン配達」「渋滞を避ける空のタクシー」といった便利なサービスですが、その背後では産業構造や都市のインフラのあり方が静かに書き換えられつつあります。
日本でも、人口減少や物流の人手不足が課題となるなか、低空空域の活用やドローン物流への関心が高まっています。中国で進む大規模な実証と制度整備の動きを観察することは、どのように安全性と利便性を両立させるか、市民生活にどう溶け込ませるかを考えるうえで、一つの参考になりそうです。
Reference(s):
China fosters new quality productive forces via tech innovation
cgtn.com








