希少疾患に光を:中国で進む早期診断と医療費9割減 video poster
世界で数百万人が影響を受けているとされる希少疾患は、診断も治療もいまだに難しい分野です。その中で、中国が診断期間の短縮や医療費の削減で大きな成果を上げており、国際ニュースとしても注目されています。
希少疾患とは?なぜ見つけにくいのか
希少疾患は、患者数が少ないため医師が出会う機会も限られ、診断がつくまでに長い時間がかかりやすい病気です。多くは先天的な遺伝要因と関係しており、子どもの頃から症状が現れるケースも少なくありません。
重い症状が出ていても、よくある病気と見分けがつかず、検査や受診を繰り返しながら何年も原因が分からないまま過ごす人もいます。今回紹介する中国の取り組みは、こうした状況を変えようとする試みです。
中国で進む希少疾患診療の改革
2024年10月に開かれた中国の希少疾患に関する会議「China Conference on Rare Diseases 2024」で、Peking Union Medical College Hospital の院長である Zhang Shuyang 氏は、新華社の取材に対し、中国での希少疾患診療の大きな前進を紹介しました。
同氏によると、中国では希少疾患の診断にかかる平均期間が、従来のおよそ4年から4週間未満へと劇的に短縮されたといいます。また、患者や家族の経済的な負担にも直結する医療費は、平均で90パーセント減少しました。
さらに、希少疾患に対する国民の認知度も大きく変わりました。Zhang 氏は、中国での希少疾患に関する認知度が、かつての31パーセントから69パーセントへと大きく伸びたと説明しています。
- 診断までの平均期間:4年 → 4週間未満
- 医療費負担:平均90パーセント減
- 希少疾患の認知度:31パーセント → 69パーセント
早期診断がもたらす現実的なメリット
診断までの期間が短くなることは、単に待ち時間が短くなる以上の意味を持ちます。病名が分からなければ、適切な治療や支援制度につながることができず、家族の不安や経済的負担も膨らみます。
早く診断がつけば、進行を遅らせる治療や、症状が出る前からの予防的な対応も取りやすくなります。これは、後述する国際専門家の指摘とも重なります。
出生異常と希少疾患:8,000種類以上の生まれつきの課題
多くの希少疾患は、先天的な遺伝要因により生じるとされています。そのため、先天性の異常や出生時の障害と深く結びついています。
中国国家衛生健康委員会の Yu Yanhong 氏は、同じ会議で新華社の取材に応じ、8,000種類を超える出生異常が知られており、その多くが希少疾患として分類されると説明しました。
Yu 氏によると、中国では出生異常による乳児死亡率と5歳未満児死亡率が、この10年で50パーセント以上減少しました。2023年の時点で、神経管閉鎖障害やダウン症候群といった代表的な状態においても、大きな改善が見られたとしています。
出生時からの支援や予防、スクリーニングの充実は、希少疾患に対する社会全体の負担を軽くし、当事者と家族の生活を支えることにつながります。
国際専門家が見る中国の強み:遺伝子とゲノムの研究
カナダの希少疾患団体である Canadian Organization for Rare Disorders の代表を務める医師、Durhane Wong-Rieger 氏も、中国の取り組みに注目する一人です。同氏は CGTN のインタビューで、中国が遺伝学やゲノム研究の分野で大きな進歩を遂げていると語りました。
Wong-Rieger 氏は、中国では遺伝子治療の臨床試験数が世界で最も多いと指摘しています。遺伝子治療は、特定の遺伝子の異常が原因となる希少疾患に対し、新たな治療の道を開くと期待されている分野です。
なぜ早期診断がこれほど重要なのか
Wong-Rieger 氏は、希少疾患の患者にとって早期診断が極めて重要だと強調します。病気を早く見つけることができれば、不可逆的な症状が出る前に介入し、症状の進行を遅らせたり、生活の質を維持しやすくなります。
しかし、問題は医療の領域にとどまりません。希少疾患は、患者本人だけでなく家族全体に、感情面、社会生活、経済面で大きな負担をもたらすことが多いからです。
- 感情面:原因が分からない不安や孤立感
- 社会面:学校や職場での理解不足、支援制度へのアクセスの難しさ
- 経済面:長期にわたる通院や介護、専門治療にかかる費用
診断が早くつき、適切な治療や支援につながれば、こうした負担を軽減できる可能性が高まります。
高齢者に広がる希少疾患という課題
専門家たちは、希少疾患が子どもだけの問題ではなく、高齢者にも広がりつつあると指摘しています。高齢化が進む社会では、この点は特に重要です。
高齢者の場合、希少疾患による症状が年齢のせいとみなされてしまい、診断が遅れることがあります。例えば、歩きにくさや物忘れ、疲れやすさといったサインが、加齢による変化として片付けられてしまうことがあるのです。
こうした見落としを防ぐためには、医療者だけでなく、家族や地域社会も希少疾患の存在を知り、おかしいと感じたときに医療につなぐ視点が求められます。
2025年の今、私たちが考えたいこと
2025年の現在、中国で進む希少疾患への取り組みは、国境を越えて多くの示唆を与えています。診断までの時間を縮め、医療費を抑え、出生異常や高齢者の希少疾患にも目を向けることは、日本を含む各国にとっても避けて通れないテーマです。
希少疾患は、患者数が少ないからこそ、声が届きにくい領域でもあります。一人ひとりの病気の背後には、家族の生活や将来への不安が存在します。国や地域の取り組みを知り、身近な話題として共有していくことが、支援の土台になります。
日々のニュースの中で見落としがちな希少疾患というテーマを、改めて考えるきっかけとして、中国の事例を捉えてみてはいかがでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








