中国工程院が選ぶ「2024年世界の工学トップ10」とは
中国工程院(Chinese Academy of Engineering、CAE)が2024年のGlobal Top 10 Engineering Achievementsを北京で発表しました。CAR-T細胞療法や月探査機嫦娥6号、自動運転車など、世界の工学とテクノロジーの今を象徴する成果が並びます。本記事では、この国際ニュースを日本語ニュースとしてわかりやすく整理し、2025年の私たちにとって何を意味するのかを考えます。
2024年版「世界の工学トップ10」とは
発表を主導したのは、中国工程院が発行する英文学術誌Engineeringです。中国工程院の事務総長であるChen Jianfeng氏によると、選ばれた10件はいずれも過去5年間に完成し、技術的な検証を済ませた工学・技術分野の大きなブレークスルーと位置づけられています。
このリストには、大規模プロジェクトから基盤技術まで、将来のテクノロジーの方向性を示す取り組みが含まれており、世界の工学コミュニティにとって一種の道しるべとなっています。
リストに含まれる主な技術分野
発表された10件のうち、代表的な技術として次のようなものが挙げられています。医療、宇宙、エネルギー、モビリティ、電子デバイスなど、幅広い分野がカバーされています。
医療・ヘルスケア
- CAR-T細胞療法:患者の免疫細胞を応用する先端的な治療法で、従来の治療では対応が難しい病気に対する新しい選択肢として世界的に注目されています。
- 外科手術ロボット:医師の操作をロボットが補助し、繊細な手術を高精度で行うことをめざすシステムです。患者の負担を減らしつつ、安全で質の高い医療の実現に寄与すると期待されています。
宇宙開発と通信インフラ
- 嫦娥6号(Chang'e-6)月探査ミッション:中国本土の月探査計画の一環として実施された月面探査ミッションで、深宇宙探査技術の発展を象徴する成果とされています。
- 低軌道衛星コンステレーションによる全球通信:地球低軌道を周回する多数の衛星をネットワーク化し、世界規模で通信サービスを提供することをめざす取り組みです。インターネットアクセスの地域格差を縮小し、新しいデジタルサービスの基盤となることが期待されています。
エネルギーと次世代インフラ
- 高温ガス冷却炉:高温のガスを冷却材として用いる原子炉で、安全性やエネルギー効率の向上が期待される次世代型の原子力技術です。安定した電力供給と脱炭素の両立に向けた一つの選択肢と見られています。
- 自動運転車:高度なセンサーとソフトウェアを組み合わせ、人の代わりに車両が走行を制御する技術です。移動の在り方や物流、都市づくりに大きなインパクトを与える可能性があります。
- フレキシブルディスプレー:折り曲げや丸めが可能な表示パネルで、スマートフォンやウェアラブル端末など、これまでにない形状の電子機器を実現する基盤技術とされています。
どのように選ばれたのか
EngineeringのGlobal Top 10 Engineering Achievementsは、2021年から毎年実施されている選考プロジェクトです。2024年版も、世界各地からの提案と専門家の評価を組み合わせたプロセスを経て決定されました。
選考プロセスは、次のようなステップで構成されています。
- 世界各地からの候補のノミネーション
- 関連分野の専門家による推薦と技術評価
- 一般の人々を対象にしたアンケートなどの公開調査
- 最終候補を精査する選考委員会によるレビュー
Chen Jianfeng事務総長は、選ばれた成果はいずれも過去5年間に完成し、実証された重要な工学・技術の前進であり、今後の技術発展の方向性を示すものだと説明しています。大規模プロジェクト、重要な技術革新、工学の進歩がバランスよく含まれている点も特徴です。
2025年の視点から見た3つのポイント
2025年の今、2024年版の世界工学トップ10を振り返ると、次のようなポイントが浮かび上がります。
- 医療と宇宙が同じリストに並ぶ時代:CAR-T細胞療法のような新しい医療技術と、月探査ミッションや全球通信インフラが同時に評価されていることは、工学が人の健康から宇宙規模の課題までを一体的に扱う時代になっていることを示しています。
- 過去5年のブレークスルーが未来を形づくる:選ばれた成果はいずれも過去5年間に完成・検証されたもので、研究段階を超えて次のステップに進みつつある技術です。工学の進歩が短期間で社会に影響を与えるスピード感がうかがえます。
- 社会とつながる工学の評価:ノミネーション、専門家の推薦、一般の公開調査、選考委員会のレビューというプロセスは、工学やテクノロジーの評価が一部の専門家だけで完結せず、より広い社会との対話の中で行われつつあることを象徴しています。
世界の工学の動きをコンパクトに切り取ったこのリストは、研究者や技術者だけでなく、ビジネスや政策に関わる人にとっても、次にどの分野で変化が起きそうかを考えるヒントになります。日本にいる私たちにとっても、医療、エネルギー、宇宙、デジタルインフラといったテーマで何が起きているのかを俯瞰する手がかりとして、引き続き注目していきたい動きです。
Reference(s):
Chinese academy unveils 2024's top 10 global engineering achievements
cgtn.com








