中国で法治教育推進の新法案 公共空間とネットでの啓発を強化
中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会の会期で、法による統治を進めることを目的とした新たな法案が審議に入りました。公共の場やオンライン空間での法治教育を体系的に進めることを目指しており、消費者保護や個人情報の安全など、私たちの生活に直結する内容が盛り込まれています。
法治教育を推進する新たな法案とは
今回審議が始まったのは、「法治に関する広報・教育」に関する草案です。現在開かれている全人代常務委員会の会期中の土曜日に初めて提出され、初回の審議(ファーストリーディング)に付されました。
草案は、法についての知識を社会全体に広く伝え、法に基づく社会ガバナンスを強化することを狙いとしています。単に法律を制定するだけでなく、「どう市民や企業に伝え、理解してもらうか」を制度として位置づけようとする試みです。
公共の場での法教育を義務化
草案で特徴的なのは、駅やショッピングモールなどの公共性の高い場所の運営者・管理者に対し、法に関する広報や教育を行う責任を明確にしている点です。管理者は自らの管理区域で、次のような市民の関心が高い分野を中心に情報提供を行うことが求められます。
- 消費者の権利保護
- 電話・インターネットを利用した詐欺への対策
- 食品・医薬品の安全
- 火災予防や避難などの防災・安全
- 個人情報やプライバシーの保護
日常的に人が集まる場所を「学びの場」としても活用することで、法律を専門家だけのものにせず、身近な生活ルールとして浸透させようとする狙いがうかがえます。
オンラインサービスにも法教育の責任
草案は、オンラインサービス事業者にも新たな役割を求めています。インターネット企業などのオンラインサービス提供者に対して、従業員向けの法教育を強化するとともに、利用者に対しても法に関する情報提供や注意喚起を行うよう求めています。
具体的には、利用規約の周知や、安全な利用方法に関するガイド、違法行為に巻き込まれないための注意点などを分かりやすく提示することが想定されます。デジタル空間でのトラブルや犯罪が複雑化するなか、オンライン上での法意識の向上を図る狙いがあります。
若者・学校教育への重点的な取り組み
草案は、とくに若い世代への法教育を重視しています。すべての段階・すべての種類の学校における法教育について、その目的、教育内容、評価基準を明確に定めることが盛り込まれています。
これにより、初等教育から高等教育まで一貫した形で、「法律とは何か」「権利と義務はどう結びついているのか」といった基本的な理解を育てていくことが想定されます。若いうちから法について学ぶことで、将来の社会参加やトラブル回避の力を高める狙いがあります。
国家公務員が先頭に立って学ぶ
法治を進めるうえで、行政を担う公務員が法律を理解し、実務に生かすことは欠かせません。草案は、国家の職員が率先して法律を学ぶべきだと定めています。
さらに、公務員採用試験の出題内容に法知識を組み込むことも明記されました。採用段階から法への理解を重視することで、行政の現場で法の理念を具体的な政策やサービスに反映させやすくする狙いがあります。
「法による統治」を支える教育の役割
今回の草案は、立法や制度設計と同じくらい、「市民や企業が法を理解し、活用できるようにすること」が重要だという考え方を前面に押し出しています。法治国家を目指す動きは多くの国や地域で共通していますが、教育を通じて社会全体の法意識を底上げしようとする点に特徴があります。
消費者権益の保護や、電信・インターネット詐欺の防止、個人情報の保護などは、デジタル時代の共通課題でもあります。中国で進むこうした取り組みは、同様の課題に直面する他の国や地域にとっても参考となる側面があるかもしれません。
日本の読者が押さえておきたいポイント
日本でも消費者教育や情報モラル教育が議論されるなか、中国で法治教育を包括的に制度化しようとする動きは、アジア地域のガバナンスの変化を読み解くうえで重要な手がかりになります。
本稿執筆時点(2025年12月8日)で、この法案はまだ草案段階であり、今後の審議や修正を経て具体的な内容が固まっていく見通しです。公共空間、オンラインサービス、学校教育、公務員制度という複数の領域をまたいで法教育を位置づける試みが、どのような形で具体化していくのか注目されます。
Reference(s):
China considers draft law to promote education on rule of law
cgtn.com








