中国全人代常務委で国有資産と黄河保護法を報告 2023年監査是正も
中国で開かれている全国人民代表大会(全人代)常務委員会の会議で、国有資産管理や黄河保護法の運用、2023年の監査是正状況など、ガバナンスの要となる報告がまとめて審議されています。中国経済の方向性やリスク管理を読み解くうえで、注目すべき動きです。
全人代常務委で一連の報告を審議
現地時間の日曜日、中国の立法機関である全人代常務委員会の会議が開かれ、複数の重要な報告が審議されました。全人代常務委員会の委員長である趙楽際(Zhao Leji)氏も全体会議に出席しました。
今回の会議では、次のようなテーマの報告が取り上げられています。
- 企業国有資産法の執行状況
- 黄河保護法の執行状況
- 2023年監査是正状況の報告
- 防災・減災・緊急管理に関する財政資金の配分・活用
- 農地保護の現状
- 立法の備案審査(記録・審査)
- 社会の不正行為や腐敗への対応状況
経済、環境、財政、法制度、社会ガバナンスと、幅広い分野を一度に俯瞰できる構成になっていることが特徴です。
国有企業・国有資本の管理強化へ 委託運営機構の整備を提案
まず、企業国有資産法(国有企業に関する資産管理の基本法)の執行状況に関する報告が説明されました。この報告では、国有企業と国有資本の管理のあり方をめぐり、「委託運営機構」の仕組みを整備・改善することが提案されています。
報告によると、目指しているのは、国有資産をより体系的かつ効率的に管理する枠組みです。具体的には、次のような方向性が示されています。
- 国有資本を一元的に運営・管理する機関の仕組みづくり
- 「所有」と「経営」の役割を分け、監督機能を明確化すること
- 国有資産の保全と増値(価値向上)を図る管理メカニズムの強化
中国経済において大きな存在感を持つ国有企業の経営効率とガバナンスをどう高めるかは、成長と安定の両方に直結するテーマです。今回の報告は、その方向性を示す一つの材料と言えます。
黄河保護法の運用 「法に基づく河川管理」と生態系回復
会議では、黄河保護法の執行状況に関する報告も審議されました。報告は、「法に基づく河川の管理・保全」(法治に基づくガバナンス)を進めることを強調し、黄河流域の生態系保全と回復をさらに推進する必要性を指摘しています。
黄河保護法の運用をめぐっては、次のような点が重視されています。
- 流域全体を対象にした一体的な管理と、関係地域間の調整
- 水資源の節約と効率的な利用の徹底
- 生態系の保全・修復と、流域の経済発展とのバランス
環境保護と経済発展の両立は、多くの国・地域に共通する課題ですが、広大な流域を持つ黄河の管理は、中国の持続可能な発展戦略の一部として位置づけられています。
2023年監査是正:5380億元と2800人超が対象
2023年の監査是正状況に関する報告も、会議で説明されました。報告によると、9月末時点で、是正措置の対象となった資金は合計で5380億元(約748億ドル)に達し、2,800人を超える関係者が責任を問われたとされています。
監査是正とは、監査で判明した問題点について、関係機関や担当者が改善措置を講じるプロセスを指します。今回の報告からは、次のような点が読み取れます。
- 多額の資金が是正対象となっており、財政運営や資金管理の改善が進められていること
- 個人レベルでも多数の関係者が accountability(説明責任)を問われていること
- 監査結果の「出しっぱなし」ではなく、是正までを含めたサイクルを重視していること
財政・公共部門の信頼性を高めるうえで、監査とその後の是正プロセスは重要なインフラとも言えます。
防災・減災の財政支出を点検 仕組みの最適化を提案
会議では、防災・減災・緊急管理に関する財政資金の配分と活用状況に関する報告も取り上げられました。報告は、災害関連の財政政策と制度を改善し、資金配分のモデルを最適化することを提案しています。
主な論点として、次のような課題が示されています。
- 災害リスクの高い地域や分野への重点的な資金配分
- 事前の防災・減災投資と、災害発生後の緊急対応のバランス
- 地方レベルでの資金執行の透明性や効率性の向上
気候変動や自然災害への対応が世界的な課題となる中で、防災・減災の財政支出をどう設計するかは、中国にとっても重要な政策テーマとなっています。
農地保護・立法手続き・社会の不正への対応も報告
このほか、会議では次のような報告も審議されました。
- 農地保護に関する報告:耕地の保全や農地の転用管理など、食料安全保障とも関わるテーマについて現状と課題が示されました。
- 立法の備案審査(記録・審査)に関する報告:制定・改正された法律や行政規則などを記録・審査する仕組みの運用状況を点検し、法体系の一貫性や適合性を高める方向性が示されました。
- 社会の不正行為や腐敗への対応に関する報告:人々の生活に影響を与える不正行為や腐敗への対処状況を整理し、監督と処分の仕組みの整備を進める姿勢が示されました。
これらは、それぞれ個別のテーマでありながら、「法に基づく統治」「公共の資源をどう守り、どう使うか」という共通の問いにつながっています。
今回の全人代常務委から見える中国ガバナンスの焦点
今回の全人代常務委員会で審議された一連の報告を並べてみると、いくつかのキーワードが浮かび上がります。
- 国有資産・財政資金の管理強化と説明責任
- 黄河流域に象徴される生態環境の保護
- 防災・減災や緊急管理を通じたリスク対応力の向上
- 農地保護や立法手続きの整備による制度面の安定
- 不正行為や腐敗への対応を含む社会ガバナンスの強化
いずれも、経済成長だけでなく、持続可能性やリスク管理、法に基づく統治をどう進めていくかという、長期的な課題と密接に結びついています。
日本を含む海外から見ると、個々のニュースは断片的に見えがちですが、今回のような全人代常務委の議題をまとめて眺めることで、中国がどの分野の制度整備に力を入れているのか、その輪郭が少し見えやすくなります。今後の会議で、これらの報告がどのような法改正や政策につながっていくのかも、引き続き注目されます。
Reference(s):
Chinese lawmakers hear reports at NPC standing committee session
cgtn.com








