中国の研究者が挑む 高温に強い気候スマートトマト
地球温暖化が進む中、異常高温でもしっかり実る「気候スマート作物」をどう増やすかが、世界の食料安全保障にとって大きな課題になっています。そうした中、中国の研究者が高温ストレスに強いトマトを遺伝子編集で設計し、収量を大きく改善したとする研究を発表しました。
2度の気温上昇で作物損失は最大13パーセント増
今回の研究が注目される背景には、気候変動による収量低下への懸念があります。地球の平均気温が2度上昇すると、平均的な作物損失が3〜13パーセント増えると見積もられており、より高温に強い品種の開発は急務になっています。
中国科学院チームが示した新しい設計図
研究を行ったのは、中国科学院の遺伝学・発育生物学研究所の研究者たちです。研究チームは遺伝子編集の手法を用い、トマトの遺伝子LIN5にヒートショックエレメントと呼ばれる短い配列をつけ加えるという新しい戦略を試しました。
ヒートショックエレメントとは、高温ストレスがかかったときに働きやすくなるスイッチのような配列です。これをLIN5遺伝子の近くに組み込むことで、高温時にLIN5の働きを強め、果実の糖分不足を抑えようとしたのです。
LIN5はトマトの糖分の蓄積や収量に関わる遺伝子とされており、その働きが高温によって弱まると、果実の甘さや実の付き方にも悪影響が出ると考えられます。研究チームは、あえて高温時に強く働くスイッチを後付けすることで、この弱点を補おうとしました。
高温でも収量アップ 温室と圃場で検証
研究では、温室と露地の両方で、異なる季節や場所にわたって改変トマトの性能がテストされました。その結果、ヒートショックエレメントを導入したトマトは、通常の条件でも、高温ストレス下でも収量が大きく向上したと報告されています。
- 通常の栽培条件では、収量が14〜47パーセント増加
- 高温ストレス下では、収量が26〜33パーセント増加
- 高温による収量減少の56〜100パーセントを防止
つまり、高温の影響で本来なら失われてしまうはずの収量の半分以上、条件によってはほぼすべてを守れた計算になります。これらの結果は、学術誌Cellに最近掲載された研究論文として報告されています。
気候スマート作物としての可能性
今回の成果が示しているのは、単に高温に強いトマトの開発だけではありません。特定の遺伝子にヒートショックエレメントを組み込むという設計そのものが、他の作物にも応用可能な設計図になりうる点が重要です。
もし同様の戦略がコメや小麦など主要穀物にも適用できれば、将来の気温上昇による収量減少を抑え、食料供給の安定に貢献できる可能性があります。気候変動への適応策としての農業技術と、最先端の遺伝子編集研究が結びついた例といえるでしょう。
私たちにとっての意味
今回の中国発の研究は、国際ニュースとしてのインパクトだけでなく、これからの食と環境をどう守るかという私たち自身の問いにもつながっています。
- 気候変動に対応した作物づくりをどこまで進めるのか
- 遺伝子編集という技術を、社会はどう受け止めていくのか
- 科学技術を食料政策や地域の農業とどう結びつけていくのか
地球の平均気温がさらに上がる可能性が指摘される中で、作物を気候スマートにしていく研究は今後も重要性を増していきます。今回のトマトの成果は、その一つの具体的なステップとして、これからの議論と研究の土台になっていきそうです。
Reference(s):
Chinese scientists pioneer climate-smart crops to fight global warming
cgtn.com








