中国初の水利リモートセンシング衛星「水利1号」が初画像を公開
中国初の水利(治水・水資源管理)専用リモートセンシング衛星「水利1号」が、黄河流域の鮮明な衛星画像を送り返したと中国メディアが伝えました。洪水や水害への備えを強化するための宇宙インフラが、具体的な成果を見せ始めています。
黄河の凍結や堤防まで捉えた初画像
中国水利部の公式微信(WeChat)アカウントには、「水利1号」が撮影した最初の画像が掲載されました。画像は内モンゴル自治区ウラト前旗付近の黄河をとらえたもので、
- 凍結した河川の一部
- 河川沿いの堤防
- 排水路などの水利施設
といった地形やインフラが詳細に映し出されています。
冬季の黄河流域では、結氷や融解の状況が洪水や氾濫のリスクに直結します。凍結した水面の広がりや堤防の形状を衛星から継続的に監視できることは、現場の判断材料を増やし、水害リスクを早めに察知するうえで大きな意味を持ちます。
2024年12月に打ち上げ SAR衛星コンステレーションの一角に
水利1号は、2024年12月17日に中国北部・山西省の太原衛星発射センターから打ち上げられました。同時に打ち上げられた3基の合成開口レーダー(SAR=Synthetic Aperture Radar)衛星とともに運用されます。
これら4基のSAR衛星は、すでに打ち上げられていた4基と合わせてコンステレーション(衛星群)を形成し、
- 昼夜を問わず
- 天候に左右されず
- 高解像度のレーダー画像
を継続的に提供する体制の構築を目指しています。打ち上げ当時の説明では、この衛星群は翌年の洪水期が始まる前に正式運用に入る計画とされていました。
雲も雨も「透かして見る」 水利1号の役割
中国水利部情報センター衛星リモートセンシング応用センターのChen Deqing氏によると、水利1号は主に次のような目的で設計されています。
- 洪水や内水氾濫などの深刻な水害の監視
- 河川・湖沼・貯水池の安全監視
- ダムや堤防など水利プロジェクトの状態把握
Chen氏は、とくに重要な点として、「雲や雨を透過して観測できるため、暴風雨のような厳しい気象条件でも監視が可能である」ことを挙げています。
光学カメラの衛星画像は、厚い雲に覆われると地表がほとんど見えません。一方、合成開口レーダーはマイクロ波を使って地表を観測するため、
- 台風や線状降水帯による豪雨
- 広域にわたる洪水・浸水
といった状況でも、水の広がりや堤防の変形などを把握しやすいという特徴があります。
衛星が「その場で処理」 データ伝送も効率化
今回の衛星群には、インテリジェントなデータ処理機能も搭載されています。地上にすべての生データを送るのではなく、衛星側であらかじめ一定の解析を行い、その結果を送信する仕組みです。
これにより、
- 必要な情報だけを効率よく地上に送れる
- 通信負荷を抑えつつ、更新頻度を高めやすい
- 現場の意思決定までの時間を短縮しやすい
といった効果が期待されています。
Chen氏は、衛星群は複数の衛星や観測手段からのデータを統合し、処理を経て水利分野向けの「専門的なプロダクト」を連続的に生み出す構想だと説明しています。ここで言うプロダクトには、例えば、
- 洪水リスクマップ
- 貯水池やダムの監視レポート
- 河川の水位・流量に関する解析図
などが含まれると考えられます。こうした成果は、現場の水利部門が避難勧告の判断やダム操作を行う際の重要な根拠になり得ます。
東アジアの豪雨時代に何を示すか
近年、東アジアでは日本を含め、記録的な豪雨や水害が頻発しています。各国が、
- 予測精度の高い気象・水文モデル
- リアルタイムの観測網
- 住民への迅速な情報提供
をどう組み合わせるかが、大きな政策課題となっています。
水利1号のように、水利分野に特化した衛星とレーダー観測を組み合わせる試みは、
- 豪雨の「見える化」を進める
- インフラ監視を平時から行う
- 災害時の意思決定を急ぐ
という3つの観点で、東アジア全体にとっても参考になりうる動きです。
気候変動の影響で水害リスクが増すなか、宇宙からの監視データをどう公共政策に活かすのか。中国の水利専用衛星コンステレーションの動向は、日本や周辺地域にとっても、これからの防災・減災を考えるうえで注視しておきたいテーマだと言えます。
Reference(s):
cgtn.com








