中国が深海科学研究船「探索三号」を引き渡し 極地対応の自主開発船
中国の造船企業が、自主開発した深海科学研究船「探索三号(Tan Suo San Hao、Exploration No. 3)」を引き渡しました。極地を含む世界の海で運用される予定のこの船は、中国の深海研究と有人深海探査を新たな段階に押し上げる存在になりそうです。
中国初の「全球対応」深海科学研究船
今回引き渡された「探索三号」は、深海探査と科学研究のために設計された中国初の本格的な研究船で、極地を含む世界中の海域での活動を想定しています。船体は深海探査だけでなく、南極や北極周辺の氷海域にも対応できる設計です。
建造を担当したのは、中国国家造船会社グループ傘下の広州造船国際股份有限公司(Guangzhou Shipyard International Co., Ltd.)で、南部の経済・造船の拠点である広州市で木曜日に引き渡しが行われました。
主な仕様
- 全長:約104メートル
- 排水量:約1万トン
- 航続距離:1万5,000海里
- 乗員規模:約80人
- 船首と船尾の両方向で氷を砕きながら航行できる「双方向砕氷」能力
この船には有人深海潜水に対応した設備が搭載されており、中国の有人深海潜水能力を、地球規模のほぼすべての海域へと拡大することが期待されています。
極地から深海考古学まで、広がるミッション
中国はこれまでにも深海探査技術の開発を進めてきましたが、「探索三号」の就航により、活動範囲とミッションの幅が大きく広がるとみられます。
とくに注目されているのが、次のような分野です。
- 有人深海探査:深海に潜航する有人潜水艇を支え、長期間の観測・実験を可能にします。
- 深海考古学:沈没船や海底遺跡の調査など、海の底に眠る人類史の解明に貢献するとされています。
- 極域研究:氷を砕きながら進む能力を生かし、南極・北極周辺の海洋環境や生態系の調査に活用できます。
深海は、鉱物資源や新素材の源としてだけでなく、気候変動のメカニズムを理解するうえでも重要なフロンティアです。こうした領域でのデータが蓄積されることで、地球環境全体の理解が進む可能性があります。
海南発の国家プロジェクト:100超の機関が参加
「探索三号」の建造プロジェクトは、2022年12月に正式に承認されてから、本格的に動き出しました。短期間での建造を支えたのは、中国国内の多様な組織による連携です。
資金面では、次のような主体が共同で参加しました。
- 海南省政府
- 海南省三亜市に拠点を置く企業
- 中国科学院深海科学与工程研究所
また、開発と建造のプロセスには、100を超える機関が参加し、専門知識や技術を持ち寄りました。
乗り越えた技術的ハードル
プロジェクトでは、次のような分野で「技術的ボトルネック」と呼ばれる課題を克服したとされています。
- 氷海域向けの船体設計:極地の氷に耐えながら運航できる船体構造や材料設計。
- 知能化された船舶制御技術:航行や位置保持を高度に自動化し、過酷な海況でも安全で効率的な運用を可能にする制御システム。
このような技術蓄積は、「探索三号」だけでなく、今後の研究船や商業船の設計にも波及効果をもたらすと考えられます。
国際ニュースとしての意味:深海をめぐる静かな競争と協調
深海や極域をめぐる研究船の整備は、中国に限らず各国が力を入れている分野です。海洋データをどれだけ集められるかが、科学研究だけでなく、防災や資源管理にも直結するためです。
「探索三号」の引き渡しは、中国が自前の技術と資金で、世界中の海をカバーできる研究インフラを整えつつあることを示す動きといえます。同時に、深海や極域の研究は、一国だけで完結できるものではないという側面もあります。
今後、
- 国際共同観測やデータ共有
- 海洋環境保全に関する協力
- 深海考古学や文化遺産の保護をめぐるルールづくり
といった場面で、「探索三号」のような研究船がどのように位置づけられるかが注目されます。
日本の読者にとっての問いかけ
日本もまた、海に囲まれた国として、海洋研究や深海探査は重要なテーマです。近隣の大国が深海研究のインフラを強化していく流れは、競争という側面と同時に、新たな協力の可能性も含んでいます。
今回の「探索三号」就航をきっかけに、
- 私たちは深海や極地の研究をどれだけ身近なテーマとして捉えているか
- 海洋科学の進展を、環境保全や国際協調とどう結びつけていくべきか
といった問いを、あらためて考えてみるタイミングかもしれません。スマートフォンの画面越しに届く国際ニュースは、遠いどこかの話ではなく、海とともに生きる私たちの日常ともつながっています。
Reference(s):
China delivers self-developed deep-sea scientific research vessel
cgtn.com








