中国の生態保護最前線 2024:砂漠緑化と黄河、生物多様性
2024年の中国では、「緑の山と清らかな水はかけがえのない資産」という考え方のもと、砂漠化対策、黄河流域の保護、生物多様性の強化など、生態文明づくりが一段と進みました。本稿では、その中核となる事例を国際ニュースの視点から整理します。
砂漠からオアシスへ:寧夏モデルとは
中国北西部の寧夏回族自治区は、かつて砂漠が広がる乾燥地帯でしたが、数十年にわたる砂漠化防止の取り組みにより、今では緑が広がるオアシスへと姿を変えつつあります。
こうした取り組みは、「寧夏モデル」として2024年、サウジアラビアのリヤドで開かれた国連砂漠化対処条約第16回締約国会議の中国パビリオンでも紹介されました。
世界銀行環境局の責任者であるバレリー・ヒッキー氏は、このモデルについて「住みやすい環境を整え、土地を改善し、景観を回復することで、貧困を減らし、繁栄を生み出す道を示している」と評価しました。
寧夏モデルは、中国が進める環境保護、生態ガバナンス、生物多様性の保全、持続可能な開発といった広範な取り組みの縮図ともいえます。
黄河保護:母なる川の長期ビジョン
黄河の保護は、中国政府にとって長期的な優先課題です。黄河は9つの省・自治区を流れ、およそ17パーセントの耕地をうるおし、中国の穀物生産の13パーセントを支えています。その健全性は、食料安全保障や地域経済に直結します。
一方で、黄河流域は、もろい土壌、起伏の大きい地形、集中的な降雨、植生の少なさなどから、生態環境が脆弱になりやすい地域でもあります。1999年8月以降、黄河は統一的な水資源配分により、途切れることなく流れ続けていますが、その保全は今も重要な課題です。
中国共産党第18回党大会以降、習近平国家主席は黄河沿いの9つの省・自治区を相次いで視察し、黄河流域の生態保護と高品質な発展を推進してきました。
2023年4月には、長江保護法に続く特定流域向けの法律として、黄河保護法が施行されました。この法律は、水不足や生態の脆弱性、洪水対策など、黄河流域が抱える課題に対応する枠組みとなっています。
2024年9月、習近平主席は中国北西部の甘粛省蘭州市の中山橋付近で黄河の流れを視察し、流域の生態保護をさらに進めるよう呼びかけました。
習主席はそこで、「保護は発展の前提であり、清らかな水と緑の山はかけがえのない資産だ」と強調し、黄河の未来はより美しくなるとの自信を示しました。
三江源と生物多様性:水と命を守る仕組み
2024年6月、習近平主席は中国北西部の青海省を視察しました。青海省は青海チベット高原に位置し、長江、黄河、瀾滄江が源を発する三江源エリアを抱えています。この地域は「中国の水塔」とも呼ばれ、中国全体の水資源や生態系を支える重要なエリアです。
視察のなかで、習主席は三江源エリアの保全、生物多様性の保護、水源涵養能力の強化の重要性を繰り返し強調しました。
三江源国家公園が2024年10月に発表した資料によると、過去5年間で同エリアの湖沼や湿地などの水生生態系の面積は309平方キロメートル増加し、年間の水源涵養量も6パーセント以上増えたとされています。
同公園は、中国で最初に設立された国家公園のひとつであり、野生動物の生息数の増加や生物多様性の着実な改善が報告されています。例えば、チベットカモシカの個体数は、1980年代初頭には2万頭未満とされていましたが、現在は7万頭を超える水準となり、保全状況の評価も「絶滅危惧」から「準絶滅危惧」へと引き上げられました。
青海省はまた、2035年ごろを見据えた国土空間計画のなかで、29万6400平方キロメートルを「生態保護レッドライン」として指定しています。これは、開発を厳しく制限し、自然を優先的に守る区域を明確にしたものです。
中国は、国家公園やレッドライン政策に加え、自然保護区の拡充、山や川、森林、農地、湖沼、草原、砂漠を一体的に守り、修復する政策を進めています。
2021年に公表された「中国の生物多様性保全」という白書によれば、中国はおよそ1万カ所の自然保護区を設けており、国土面積の約18パーセントをカバーしています。また、森林資源の増加幅は世界最大だとされています。
読み解きポイント:持続可能な発展に向けた三つの視点
こうした中国の取り組みは、環境ニュースとしてだけでなく、持続可能な発展や国際協力を考えるうえでも参考になります。ポイントを三つに整理してみます。
- 環境と経済を両立させるアプローチ
寧夏モデルは、生態回復と貧困削減、地域の繁栄を同時にめざすモデルケースです。黄河流域の高品質な発展という方針も、環境保護を前提にした経済政策といえます。 - 流域単位のガバナンス
長江、黄河、三江源など、流域単位で法制度や保護区を整備する動きは、水資源管理や気候変動対策の観点からも注目されています。 - 生物多様性の回復と国際的な責任
チベットカモシカの個体数回復に象徴されるように、野生生物の保護は地球規模の生物多様性目標ともつながります。自然保護区や国家公園のネットワーク拡充は、国際社会からも関心を集めています。
これから注目したい点
2025年以降も、中国では黄河保護法の運用や、生態保護レッドラインの具体化、国家公園制度の拡充などが続くとみられます。
砂漠化対策から大河の保全、生物多様性の保護まで、「緑の山と清らかな水」を重視する動きは、環境政策と経済開発をどう両立させるかを考えるための重要な手がかりです。日本やアジアの読者にとっても、気候変動や自然災害が日常のリスクとなるなかで、こうした取り組みをウォッチする意義は大きいといえるでしょう。
国際ニュースとしての中国環境政策をフォローしながら、自分たちの地域で何ができるかを考えるきっかけにしてみませんか。
Reference(s):
cgtn.com








