中国本土で広がるAIスマホ体験:2024年のスナップショット
2024年、中国本土ではスマートフォンを中心にAIの実用化が一気に進みました。写真編集から仕事効率化まで、日常の当たり前になりつつあるAIの姿を、日本語の国際ニュースとして整理します。
アップルやグーグルの動きが注目されがちなモバイルAIですが、中国本土のエコシステムはそれとは別に、2024年を通じて独自の進化を遂げました。世界のテクノロジー地図を考えるうえで、見過ごせない変化です。
スマホでAI標準装備が当たり前に
モバイルAIを語るとき、多くの西側メディアはアップルやグーグルのサービスに焦点を当てます。しかし2024年の中国本土では、アップルの市場シェアが2割未満にとどまり、国産スマートフォンブランドが圧倒的な存在感を持っていました。
その国産スマホでは、AIは将来の目玉機能ではなく、すでに現在進行形の標準機能になっています。主なAI機能は次のようなものです。
- 写真の背景を自動で取り除いたり、欠けた部分を自然に補ったりする画像編集
- SNS投稿などの文章を、整った表現に仕上げてくれるAIライティングアシスタント
- 会議や取材の音声を録音し、そのまま編集可能なテキストに変換する自動文字起こし
こうした機能は一部の上級者向けではなく、一般的なユーザーが日常的に使う前提で搭載されている点が特徴です。
生成AIサービスは一年で三倍超え スマホに深く統合
2024年、インターネット管理を担うCyberspace Administration of Chinaは、生成AIサービスを210件登録しました。2023年の登録数62件から大きく増えたことになり、わずか一年でエコシステムが急拡大したことが分かります。
これらの生成AIの多くは、人気スマートフォンに直接統合されています。たとえば、次のようなバーチャルアシスタントの背後で、生成AIがユーザーとの対話や提案を支えています。
- Honorのバーチャルアシスタント YOYO
- Xiaomiの音声アシスタント 小愛同学(Xiaoai)
- OppoのAIモデル AndesGPT
ユーザーは特別なアプリを立ち上げなくても、スマホに話しかけたり、文字で指示したりするだけで、生成AIの能力を日常的に使える環境が整いつつあります。
ECから移動、仕事まで アプリに溶け込むAI
AIの広がりは、スマートフォン本体にとどまりません。多くの人気アプリが、それぞれの分野でAI機能を組み込んでいます。
- EC大手のTaobaoは、XingchenというAIモデルを活用し、AIを用いた新しいショッピング体験を提供しています。
- 配車サービスのDidi Chuxingは、ルートの最適化やユーザー体験の向上にAIを活用しています。
- ビジネス向けコラボレーションツールのDingTalkは、業務フローを整理し、作業を効率化するAIアシスタントを提供しています。
買い物、移動、仕事のコミュニケーションなど、生活のさまざまな場面でAIが裏方として働いている状態が、2024年の中国本土ではすでに見え始めていました。
教育から物流まで 産業特化型AIモデルが台頭
2024年には、特定の産業分野に特化したAIモデルの台頭も目立ちました。汎用的なAIではなく、特定業界のニーズに合わせて設計されたモデルが存在感を増しています。
報告されている主な分野は次の通りです。
- 教育
- 医療
- 物流
- 通信
- セキュリティ
それぞれの現場の具体的なニーズに応じたAI活用が意識されている点が特徴です。産業ごとの課題に寄り添ったモデルが増えることで、AIは日常生活だけでなく、社会インフラやビジネスの深い部分にも入り込んでいく可能性があります。
政府のAI+イニシアチブが後押し
こうした急速な進展の背景には、政府の明確な後押しもあります。2024年の政府活動報告では、AI+というイニシアチブが打ち出されました。これは、
- 多様な産業とAIを組み合わせること
- 経済成長のスピードを高めること
を重視する方針です。
このAI+は、12月の中央経済工作会議でも再び言及されました。単発のスローガンではなく、中長期的にAIと産業を結びつけていく軸として位置づけられていることがうかがえます。
政府の方針が明確であることで、企業や開発者にとっても投資判断がしやすくなり、教育、医療、物流、通信、セキュリティといった幅広い分野で、AI導入の実証やサービス展開が加速していると考えられます。
2024年のスナップショットから見えるもの
2024年の状況を振り返ると、中国本土のAIは次のような姿を見せていました。
- スマートフォンでは、画像編集や文字起こしなど実用的なAI機能が標準装備になりつつある
- 生成AIサービスの登録数が一年で三倍以上に増え、端末に深く統合されている
- EC、配車、ビジネスツールなど、主要アプリの多くがAIを組み込み、日常の体験を変えつつある
- 産業別に特化したAIモデルが登場し、教育や医療など社会の基盤部分にも広がり始めている
- AI+イニシアチブを通じて、政府がAIと産業の連携を戦略的に位置づけている
モバイルAIというと、どうしてもアップルやグーグルの動きに意識が向きがちです。しかし2024年のスナップショットからは、それとは別に、中国本土の巨大な市場と政策が連動しながら、独自のAIエコシステムを形作っていることが見えてきます。
日本のスマホやアプリの体験と比べたとき、何が似ていて、何が違うのか。AIが生活のどこまで入り込むことを私たちは望むのか。中国本土の事例は、そうした問いを考えるための一つの手がかりになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








