敦煌の遺産を描く新作舞台『The Summoning of Dunhuang』 video poster
古代シルクロードの要衝として知られる敦煌の世界観を、音楽・ダンス・演劇・マルチメディアで再構成した舞台公演『The Summoning of Dunhuang』が、北京の国家スピードスケート館で上演されています。
スポーツ用アリーナを巨大な物語空間に変えたこの公演は、中国文化とシルクロードの歴史を現代の観客に伝える新しいかたちとして、国際ニュースとしても注目される存在になりつつあります。
北京のアリーナが物語の舞台に
会場となっている北京の国家スピードスケート館は、本来はスピードスケート競技のための大規模な屋内施設です。この広大な空間が、公演『The Summoning of Dunhuang』では、物語を語るためのステージへと姿を変えています。
観客は客席からリンク全体を見渡しながら、敦煌をイメージした音楽やダンス、演劇、映像表現が次々と展開していく様子を、一つの大きなストーリーとして体験します。巨大なアリーナだからこそ可能なスケール感が、この作品の特徴といえます。
音楽・ダンス・演劇・マルチメディアの融合
『The Summoning of Dunhuang』は、ジャンルの垣根を越えた総合芸術として構成されています。音楽が雰囲気をつくり、ダンスが身体表現で物語を進め、演劇的な場面が登場人物の感情や葛藤を描き出します。そこに映像や照明などのマルチメディア表現が重なることで、観客は敦煌の世界の中に入り込むような感覚を得られます。
観客の没入感を高める演出
マルチメディア表現は単なる「背景」ではなく、物語を動かす重要な要素として扱われています。
- 音や光の変化によって、砂漠、オアシス、古い街並みなど、敦煌を連想させる情景が次々と立ち上がる
- ダンスと映像が連動し、現実と幻想が交差するような空間が生まれる
- 音楽のリズムとともに、観客の視線がステージ全体を行き来するよう設計されている
こうした演出によって、観客は「舞台を見ている」というより、「物語の中にいる」感覚に近づいていきます。
敦煌というシンボルが持つ意味
作品がテーマにしている敦煌は、古代シルクロードの都市として知られています。さまざまな地域の人びとや文化が行き交った場所であり、その歴史は、多様な価値観が出会い、新しい表現が生まれるプロセスを象徴しています。
『The Summoning of Dunhuang』は、その象徴性を現代の舞台上に呼び出すことで、「異なる文化が出会うとき、どのような物語が生まれるのか」という問いを観客に投げかけているようにも見えます。国際社会が複雑さを増すなかで、敦煌というモチーフは、多様性や対話のあり方を静かに考えさせてくれます。
デジタル時代の文化継承という視点
2025年を生きる私たちは、スマートフォンや動画配信を通じて、世界の物語に日々触れています。一方で、古い物語や歴史的な都市の記憶は、文字情報や写真だけではなかなか実感しにくい部分もあります。
音楽・ダンス・演劇・マルチメディアを組み合わせた『The Summoning of Dunhuang』のような公演は、古代シルクロードの都市の記憶を、体験として再構成し直す試みともいえます。観客は「知識」としてではなく、「体感」として敦煌のイメージに触れることになります。
こうした取り組みは、今後の文化継承のあり方を考えるうえでも、示唆に富んでいます。歴史や文化を次の世代へ伝える手段として、舞台芸術とデジタル表現をどう生かしていくのか。その一つのモデルケースとして、この公演は位置づけられるかもしれません。
エンターテインメントが開く対話の余白
『The Summoning of Dunhuang』は、壮大なスケールのステージでありながら、観客に一方的なメッセージを押しつけるのではなく、それぞれが自分なりの意味を見つけられる余白を残しているように見えます。
敦煌のような歴史的都市を題材にした作品が、北京という現代都市の大きなアリーナで上演されているという事実そのものが、「過去」と「現在」、「ローカル」と「グローバル」をつなぐ象徴的な出来事でもあります。
エンターテインメントとして楽しみながらも、自分たちの足元にある歴史や文化との向き合い方を、そっと問い直してくれる。『The Summoning of Dunhuang』は、そのような静かな余韻を残す舞台になっているのではないでしょうか。
Reference(s):
Theatrical production brings Dunhuang's rich heritage to the stage
cgtn.com







